可愛くて素直で、分かりやすい女

ラテ茶

可愛くて素直で、分かりやすい女(脚本)

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〇学校の部室
  雑誌部
  部員数2名
僕「先輩。いいんですか?」
先輩「受験のことなら聞き飽きたよ後輩クン」
先輩「家を継ぐ私にとって、大学なんてどこでもいい・・・というのも言い飽きた話だ」
僕「それは確かに聞き飽きましたけど」
僕「僕が聞いているのは、僕と一緒にいていいのか、って話で」
僕「許嫁さん、怒らないんですか?」
  先輩には許嫁がいる。
先輩「気にしないで良い」
先輩「ああ、勘違いしないでくれるかな ──私は本気だよ」
僕「それも聞き飽きましたよ」
先輩「今乙女の純情は引き裂かれたよ」
僕「じゃあ毎日くっついてるんですね」
先輩「どうしたらこの思いが、いや想いが伝わるのかな」
僕「多分思と想を入れ替えたんだと思いますけど、それ口頭だと全く伝わらないですよ」
先輩「君に伝われば十分だ」
僕「確かに」
先輩「それで? 後輩クンにこの想いが伝わる条件は?」
僕「伝わってます ただ僕が失恋しただけで」
先輩「「僕が許嫁からて先輩をさらってやる!」って言う気概は?」
僕「あったらこんな所で雑誌読んでないで世界救ってますよ」
先輩「夢がないなぁ」
僕「じゃあ」
  少し声のトーン落とす。
僕「卒業したら、逃げますか。 大学も行かず、その日暮らしの生活」
僕「二人とも働いて、次第になんでこんなつらい生活をって」
僕「疲労に苛まれ、そこにもう愛なんか無く」
先輩「ストップだ後輩クン。悲しくなってきた」
僕「現実ですよ、高卒の逃避行の」
先輩「もしや経験者?」
僕「経験者ならとっとと先輩に靡いてますよ」
先輩「靡いてくれていいのに」
僕「いえ。大学出て就職して、人一人分養える余裕ができたら迎えに行きます」
先輩「え?」
僕「だから、婚約解消お願いします」
先輩「今私、告白された?」
僕「告白に聞こえませんか なら改めて言葉にします」
僕「好きです。結婚してください。 ただ、今は無理なので、予約でお願いします」
先輩「よ、予約って・・・」
僕「ダメですか」
先輩「いいや、勿論いい ──わかった。私も準備をしておくよ」
僕「返事をください」
先輩「というと?」
僕「告白の返事です」
  背筋を伸ばし、僕をまっすぐに見る先輩。
先輩「好きだよ。一目惚れだったけど、こうして接して、本当の愛になった」
先輩「──ああ、勘違いしないでくれるかな」
  先輩は、花の開くような笑顔で、お決まりの文句を言う。
  先輩の、先輩らしい言葉。
先輩「私は本気だよ、後輩クン。 なんなら今キスしたって」
僕「じゃあ、しますか」
  驚く顔の先輩に口付けを落とす。
  ああ、本当に
僕「可愛くて素直で、分かりやすい人ですよね、先輩は」
先輩「そ、それは──褒めてないだろう、それ!」
僕「褒めてますよ 先輩を一言で表しました」
先輩「騙されないぞ!」
  他愛のない会話。
  この日が、僕と先輩の未来の決まった日。
  雑誌部の一幕とさえ言えない──
  ささやかな、恋物語。

コメント

  • 先輩には全くその気がないのかと思っていたら、後輩君の攻めに似た言葉から、あれよあれよと展開していくところが裏切られた感じでよかったです。

  • 不思議な雰囲気のある二人の関係。ツンデレだけどそれがかえって素直で可愛く見えるのってわかるなぁ。この二人の間でしか伝わらないであろう独特の間合いや言い回しの会話が、側から見ていて微笑ましかったです。

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