幸福スコア

尾長イルカ

読切(脚本)

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尾長イルカ

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〇黒
  憲法が改正された
  『幸福』は
  権利から義務に変更
  国民の義務だから
  幸福でない人間は
  反社会的人員として
  処罰される

〇コンビニのレジ
店員「弁当3つですね」
幸凪(あきな)「家族がいると大変で!」
幸凪(あきな)(おひとり様と思われたら 幸福スコアが下がる!)
幸凪(あきな)(一人暮らしなのに 嘘の夫や子供の分まで 買わないといけないなんて!)
幸凪(あきな)(ハッ!! 今 笑った?)
幸凪(あきな)(そうか! コンビニ弁当だと 幸福に見えないか!!)

〇牛丼屋の店内
幸凪(あきな)(けど牛丼屋で 独りで食べたら 知らない奴に写真撮られて)
幸凪(あきな)(SNSにさらされる!!)

〇ファミリーレストランの店内
幸凪(あきな)(ファミレスですら 独りで食べてた友人が 捕まってゲットー(収容所)行き)
幸凪(あきな)(その友人は帰ってこなかった・・・)

〇渋谷のスクランブル交差点
幸凪(あきな)(毎日ニュースで 不幸な人は さらされる 不幸というだけで 犯罪者)
幸凪(あきな)(不幸は 国民の義務違反  反社として扱われる!!)

〇SNSの画面
幸凪(あきな)(不幸な人が半径400m以内に近づくと 警告を出すアプリがある)
幸凪(あきな)(それは強制的につけられる 『逆ヒトデ』に反応するんだ!!)

〇黒
幸凪(あきな)「逆ヒトデ=ヒトデなしと呼ばれる」
幸凪(あきな)「『ひとでなしバッジ』 不幸の印 政府は弱者救済のためと言うけど」
幸凪(あきな)「そんなの嘘 救済どころか 石を投げられる」

〇青(ライト)
幸凪(あきな)「(LINE) そもそも独身女が不幸って・・・ 決めつけがエグい 何で結婚が 女の幸せなの!!」
瑠璃(るり)「政府の爺どもは 家制度が基準だからね」
幸凪(あきな)「ハァ?  いまどき家制度?」
瑠璃(るり)「頭の中は江戸時代なのさ パンパース議員にはね」
幸凪(あきな)「パンパース?」
瑠璃(るり)「尿も出すけど 口も出す パンパースが支配してる国なんだよ」
瑠璃(るり)「少子化は結婚しない女のせいと思ってる」
幸凪(あきな)「サイアク」
瑠璃(るり)「あんた コウサに気をつけなよ」
幸凪(あきな)「コウサ??」
瑠璃(るり)「マルサならぬコウサ」
瑠璃(るり)「不幸査察部 略して幸査(コウサ) 不幸な人を査察して 検挙するの」

〇オーディション会場の入り口
幸凪(あきな)「コウサに目をつけられないよう 結婚相談所へ・・・」
幸凪(あきな)「ダメダメ 結婚相談所なんて 独身ってバラしてるようなもの」
  ためらっていると
  男が出てきた
幸凪(あきな)「結婚相談所から出てきたってことは あの人も独身よね!」
  ボーとして 男のあとをついていく

〇入り組んだ路地裏
  男は路地に入った
春音(はると)「君は誰? どうして あとをつけるの?」
  男は待ち伏せしていた
幸凪(あきな)「ち 違うんです わたし!!」
春音(はると)「強制連行するつもりか!?」
幸凪(あきな)「強制連行?」
春音(はると)「とぼけるな コウサなんだろう?」
幸凪(あきな)「コウサ!!」
春音(はると)「人をつけて・・・ 不幸かどうか調べるのか?」
春音(はると)「なにが おかしい?」
幸凪(あきな)「あなたも恐れてるの? コウサ 怖いですよね!」
春音(はると)「え??」
幸凪(あきな)「一緒ですね!」
  コウサの話で 意気投合

〇青(ライト)
瑠璃(るり)「(LINE) 婚約おめでとう!!」
幸凪(あきな)「ありがとう! でも・・・」
瑠璃(るり)「でも?」
幸凪(あきな)「女の人は・・・ 好きじゃないみたい」
瑠璃(るり)「ぜいたく言わない」
瑠璃(るり)「ゲイだって結婚はできる」
幸凪(あきな)「偽装結婚だけどね・・・」
幸凪(あきな)「『ひとでなしバッジ』は お互いつけたくないから」
瑠璃(るり)「コウサもゲットーも これで大丈夫!!」
瑠璃(るり)「幸福をつかんだのよ!!」
幸凪(あきな)「・・・・・・」
瑠璃(るり)「SNSは特定班が嘘を暴こうと探るから 気をつけて」
幸凪(あきな)「生き辛い世の中・・・」

〇綺麗な部屋
春音(はると)「夢から覚めても無我夢中  弾む心 輝く明日~🎵」
春音(はると)「明日 明日 明日 明日 幸せなあした~🎵」
幸凪(あきな)(彼は売れないミュージカル俳優だった とても陳腐な歌だが──)
幸凪(あきな)(彼が歌うと素敵!!)
  幸せだった
  コウサに狙われるまでは・・・

〇住宅地の坂道
  振り返ると
  絶対 狙われている!!
  日常でもSNSでもバレないよう
  気をつけていたのに!!

〇黒
  そして
  事件は起こった

〇綺麗な部屋
春音(はると)「明日 明日 明日 明日 幸せなあした~🎵」
春音(はると)「おかえり!」
幸凪(あきな)「コウサがコウサが・・・」
春音(はると)「黄砂にふきあげ~🎵」
幸凪(あきな)「歌じゃなくて 不幸査察部」
春音(はると)「つけられたのか?」
幸凪(あきな)「まだ外にいる」
春音(はると)「どうして? こんなに幸福なのに」
幸凪(あきな)「バレたかも 偽装・・・」
春音(はると)「畜生 文句言ってやる!!」
幸凪(あきな)「やめて 危ない」
  ドアを開けると
  マンションの廊下に男が

〇マンションの共用廊下
春音(はると)「家の前で何してる!」
影「・・・・・・」
  男は背中を向けた
春音(はると)「たく・・・」
  しかし男は立ち止まった
影「明日 明日 明日 明日 幸せなあした~🎵」
春音(はると)「笑うな」
  男はマンションの上階から落ちた

〇黒
  友人宅に 二人で隠れた
  しかし時間が経つにつれ・・・

〇綺麗なリビング
春音(はると)「明日 明日 明日 明日 幸せなあした~🎵」
幸凪(あきな)「やめて!! その歌のせいで こんなことに」
幸凪(あきな)「少しは反省して」
春音(はると)「優しくない・・・」
春音(はると)「うわーん うわーん!! 優しくなーい!!」
幸凪(あきな)(なに? こんな奴だったの!?)
幸凪(あきな)(そもそも ひとりで生きてきて 不幸なんて思ったことない!)
幸凪(あきな)(ひとりが不幸なんて 世間とか政府の勝手な決めつけ!!)
幸凪(あきな)「別れましょう」
春音(はると)「どうして? 僕たち生きていけないよ」
幸凪(あきな)「ひとりで生きていける 私もあなたも」
春音(はると)「でも・・・人を殺してしまった 君のせいで人殺しなんだぞ」
幸凪(あきな)「私のせい!? あなたが勝手に!!」
春音(はると)「君がコウサなんかに つけられるから 君のせいだっっっ!!!!」
春音(はると)「責任とれよ」
幸凪(あきな)(なんて人!!)
瑠璃(るり)「仲良くやってる?」
瑠璃(るり)「今日は いいもの持ってきたよ」
瑠璃(るり)「このタブレットにサインして」
瑠璃(るり)「ネットで出せる婚姻届  トラブルのせいで まだ出せてないんでしょ?」
春音(はると)「喜んでサインしよう!」
春音(はると)「どうした? 君も早く」
幸凪(あきな)「・・・・・・」
春音(はると)「何をためらう? 結婚する約束だったじゃないか」
瑠璃(るり)「人殺しの妻・・・それが嫌とか?」
瑠璃(るり)「安心して 死者はなかった マンション周辺も 一応調べたわ」
瑠璃(るり)「よく確認せず 慌てて飛び出したのね?」
春音(はると)「ラッキーラッキー 超ラッキー」
春音(はると)「これで幸せになれるね!!」
幸凪(あきな)「・・・うん」
  勧められて 婚姻届にサインをする
瑠璃(るり)「送信ボタンを押して」
幸凪(あきな)「・・・・・・」
  ボタンを押した
瑠璃(るり)「何のボタン? それは中止ボタンだよ」
幸凪(あきな)「結婚は やめる!!」
瑠璃(るり)「やめる?」
幸凪(あきな)「幸せは自分で決める 国や世間に強制されるもんじゃない!!」
  タブレットを調べる瑠璃
瑠璃(るり)「よかった! 破棄されてない」
瑠璃(るり)「保留扱いで データーは残ってる」
幸凪(あきな)「だから幸せは・・・」
瑠璃(るり)「自分で決める 皆そう思うの 初めはね・・・ でも つらぬける人はいない」
瑠璃(るり)「結局 世間の基準に従うのよ」
幸凪(あきな)「私は違う!!」
  その時 ひとりの男が入室した
春音(はると)「あ あんたは!!」
春音(はると)「ヤッホー やっぱり生きてたんだ」
不幸査察部職員「お陰で 杖がないと不自由な身だがね」
幸凪(あきな)「こ コウサ!!」
幸凪(あきな)「瑠璃 どういうこと?」
不幸査察部職員「これで 君は返上だな」
幸凪(あきな)「ひとでなしバッジ」
瑠璃(るり)「離婚してね 子供も育てられなくて 人に預けたの・・・」
瑠璃(るり)「そのせいで 「不幸」の永久戦犯の烙印を・・・」
瑠璃(るり)「でも コウサに協力すれば・・・ バッジを外せるって!!」
瑠璃(るり)「協力しないとゲットー行き・・・ 仕方なかった」
幸凪(あきな)「私を売った? だって・・・友達でしょ!?」
瑠璃(るり)「もちろん 親友だよ! ちゃんと 面会に行ってあげるから」
瑠璃(るり)「それとも 私にゲットーへ行けって? ヒドい人!!」
幸凪(あきな)「私はどうなるのよ」
瑠璃(るり)「さっき言ったじゃない 自分はつらぬける 私は違うって!!」
幸凪(あきな)「そんな・・・」
瑠璃(るり)「結局 世間の基準に従うの 誰もがね」
幸凪(あきな)「・・・・・・」
瑠璃(るり)「タブレットに偽装結婚の証拠があります!」
不幸査察部職員「よくやった ほうびに 幸福スコア3万ポイントだ」
瑠璃(るり)「ヤッタァァァァ」
不幸査察部職員「マイナンバーに紐づけした幸福口座に 3万ポイント振り込んでおこう」
不幸査察部職員「「幸福王」として特別優遇される 医療費は当面無料 旅行代金も優待割引がつく」
瑠璃(るり)「しあわせ~ しあわせ~ しあわせ~」
不幸査察部職員「君の場合 幸福スコアは マイナス1億ポイントだ!!」
幸凪(あきな)「マイナス1億ポイント・・・」
不幸査察部職員「幸福スコアの低い者は反社扱い 金も借りられない 仕事にもつけない」
不幸査察部職員「だが安心しろ 君にはコレがある」
不幸査察部職員「これで 金も仕事も必要のない所へ行ける」

〇入場ゲート
  二人とも 屈強な男達に連行される
幸凪(あきな)「まって まってよ 私は幸せ 不幸じゃない!  全然 不幸じゃないってば!!」
春音(はると)「チクショウ チクショウ!  女なんて嫌いだ むにゅむにゅして気持ち悪い!!」
春音(はると)「ボク がんばった がんばったのに!!」
春音(はると)「バカ バカ バカ女 友達すら見抜けないで 独りで地獄に行け!!」
春音(はると)「おひとり様なんだからさ」
幸凪(あきな)「・・・・・・」
幸凪(あきな)「夢から覚めても無我夢中  弾む心 輝く明日~🎵」
幸凪(あきな)「明日 明日 明日 明日 幸せな あ・・・し・・・た・・・」

〇黒

コメント

  • さすがですね。確かに数字化してそれを形式的に守らせるとネガティブになってこういう社会になりそうな気もします。コウサと政治家、企業などの関係ができると利権も発生しそうですしね。考えさせられる作品でした。私も新しい社会は波動を数値化するようにすればよくなるんじゃないかと考えたことがあるんですが、この作品のような視点はありませんでした。人がからむとノルマや利権、人間関係などで歪んでいく可能性はありますね

  • 読みました!
    幸福とは何なのか、じっくり考えてみようと思います!

  • 中国のアレがあるので、タイトルから内容を想像しやすく、内容もそれにそぐわないディストピアぶり。更にメリーバッドエンドな終わり方と、とても興味深かったです。
    個人的には反逆や革命が好きなので、この終わり方はもやもやっとしてしまいました(;´∀`)

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