先生、死んでる場合じゃありません!

大河内 りさ

おまけ・恥ずかしいです!(脚本)

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〇後宮の一室
女官「こちらのお部屋をお使いください」
クロエ「ありがとうねぇ」
女官「では、失礼いたします」
クロエ「小さいのにしっかりしてること。 うちの孫たちにも見習ってもらいたいわ」
クロエ「いけない。 またお婆ちゃんモードになってしまったわ」
クロエ「これが寝間着ね」
クロエ「あら、これは・・・」
クロエ「異世界で浴衣が着られるとは思わなかった」
クロエ「なんだか落ち着くわねぇ」
クロエ「・・・・・・・・・」
クロエ「・・・私、前世を 引きずりすぎているかしら」
クロエ「でも、レイさんはマンガの続きを 読みたくて私を転生させたのよね」
クロエ「つまり、滝松黒江── もとい、黒滝まつ江に用がある」
クロエ「それなら、無理して 若者ぶる必要もないのかしら」
クロエ「でも、この身体は15歳なのよねぇ」
クロエ「からっぽの器に私の魂を入れたというから、元の身体の持ち主なんていうのはいないそうだけど・・・」
クロエ「それでも、中身がいきなりお婆ちゃんなのは、なんだか申し訳ないわねぇ」
クロエ「はぁ・・・」
クロエ「少し夜風にあたってきましょう」

〇後宮の廊下
クロエ「・・・・・・・・・」
クロエ「どうして私はこう すぐに迷子になってしまうのかしら」
クロエ「頭はしっかりしているつもりだったけれど、ダメねぇ」
レイヴィダス「──先生!」
レイヴィダス「こちらにおいででしたか」
クロエ「レイさん」
レイヴィダス「お部屋に伺ったらお姿が見えず、 思わず探しにきてしまいました」
クロエ「ああ、よかった」
レイヴィダス「どうかされましたか?」
クロエ「いえね、お恥ずかしながら 迷子になってしまっていたんですよ」
クロエ「探していただけて助かりました」
レイヴィダス「この屋敷の構造は複雑ですからね。 迷子になっても仕方ありません」
レイヴィダス「お部屋に戻られますか?」
クロエ「そうですね。 おとなしく寝ることにします」
レイヴィダス「では、どうぞ」
クロエ「・・・・・・」
レイヴィダス「先生?」
クロエ「・・・レイさんはいつも 手を差し伸べてくださるのね」
レイヴィダス「もしかして、お嫌でしたか?」
クロエ「どうかしら」
クロエ「年寄り扱いされているなら ちょっと嫌かも・・・?」
クロエ「なんちゃって──」
レイヴィダス「決してそのようなことは!」
レイヴィダス「先生の前世のお姿も 品がおありで素敵でした」
レイヴィダス「それに、エスコートは 淑女に対する礼儀で──」
レイヴィダス「下心もありませんからね!?」
レイヴィダス「とっ、とにかく!」
レイヴィダス「どんなお姿であれ、先生は まつ江さんでありクロエさんなのです」
レイヴィダス「誓って、年寄り扱いも 子供扱いもしておりません!!」
クロエ「ふっ・・・ふふっ・・・」
クロエ「あははははっ」
レイヴィダス「先生・・・?」
クロエ「やあねぇ。そんな必死に ならなくても大丈夫ですよ」
クロエ「ふふっ、おかしいったら・・・」
レイヴィダス「そのように笑ってくださったのは 初めてですね」
クロエ「そう──かもしれませんね」
クロエ「実を言うと、少し混乱していたの」
クロエ「私はいったい誰なのかしら、って・・・」
レイヴィダス「先生・・・」
レイヴィダス「私のせいで困惑させてしまい、 大変申し訳ございません」
レイヴィダス「マンガの続きを描いて欲しいというのは 私のわがままです」
レイヴィダス「もし先生が、普通のホムンクルスとして真っ新な状態で暮らしたいと仰るなら──」
クロエ「いいえ」
クロエ「レイさんが仰ったんじゃありませんか」
クロエ「私はまつ江でありクロエなのだと」
クロエ「私もね、こう見えて 結構わがままなんですよ」
クロエ「描けるならもっと描きたい」
クロエ「それには、まつ江の意識とクロエの身体、 両方がなければできません」
クロエ「せっかく転生したんですもの、 全部大事にして過ごしてみせます」
レイヴィダス「先生・・・」
クロエ「だから、クロエと呼んでくださいと ずっと言っているでしょう」
レイヴィダス「うぅ・・・」
レイヴィダス「クロエ、さん・・・」
クロエ「はいっ」
レイヴィダス「せせせ先生っ!?」
クロエ「・・・・・・」
レイヴィダス「クロエさんっ!!」
クロエ「はいはい、何ですか?」
レイヴィダス「袖っ──袖がクイッて・・・!!」
クロエ「先に手を差し出してくださったのは レイさんじゃないですか」
クロエ「エスコートしていただけるのは 有難いのだけど・・・」
クロエ「手に触れるのがなんだか恥ずかしくて 慣れないんです」
クロエ「でも、これなら──」
クロエ「お行儀が悪いけれど、袖に掴まれば はぐれないから安心ですよね?」
レイヴィダス「・・・っ」
レイヴィダス(先生、袖クイの方が恥ずかしいです!!)

次のエピソード:P9・魔法お願いします!

コメント

  • 顎クイならぬ袖クイ。キュンですね。
    ああ、そうか。レイは魔族だからまつ江が何歳でも恋愛が成立するんですね。人より何倍も生きるからまつ江は魔族換算だとむしろ若いのか…?

  • 2人共イイ感じ❤️
    (でもあんなヒューマナイズされた魔界人も珍しいですよね、魔力も失くしてるし‥)

  • あらら、とっても可愛らしいショートストーリー!
    クロエさんの言葉遣いの年齢重ねた感が、今回特に強く出てますね。そこに複雑な感情が乗っかって、何とも不思議な魅力が……
    なんちゃって――、んー懐かしい、、、いや、不思議な言い回しデスネー

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