読切(脚本)
〇廃ビルのフロア
三田組組員「オラッ、死に晒せや!」
清一家組員「なんじゃとオラッ、そっちが死に晒せや!」
〇血しぶき
パン、パン
チンピラ「ヒイイイっ」
・・・
チンピラ「お、終わったのか?」
〇廃ビルのフロア
三田組組員「・・・」
清一家組員「・・・」
チンピラ「皆相打ちで死んだのか──ん?」
チンピラ「・・・ゴクリ」
・・・
〇住宅街の公園
ホームレス「ハァ、あれから何年経過したんじゃろう」
俺──否、今は年をとったワシは、若い頃はチンピラヤクザで、とある組織同士の取引に参加しとった
しかし上の者同士で交渉が決裂して撃ち合いになり、ワシは運よく生き残った
そして、本来ブツを手に入れる為の組織の金一億円を持って逃走した
ホームレス「しかしあれは失敗じゃったの・・・。結局一億円ネコババしたせいで両方の組織から追われてしもうた」
生き残る為に逃げて逃げて、それからまた逃げて散々金を使った
それから気が付けば、安全な場所を求めてワシはホームレスになっとる
ホームレス「あの時の一億もだいぶ減ったが、まだあと一千万も残っとる」
ホームレス「けどこの金で再起を図って社会に出ても組織の者にみつかるのぉ」
〇おんぼろの民宿(看板無し)
あれからワシの所属していた組織は一億を失ったせいで勢いを失い、他の組織に吸収されて無くなってしもうた
じゃけえワシの事を恨む連中がきっとどこかでまだ生きとる
〇住宅街の公園
ホームレス「正直この金はワシには荷が重すぎたわい。じゃけえいっその事手放した方がええか」
大金を手に入れてもワシは幸せになれず不幸になった。ましてや命を脅かされる。
ホームレス「・・・」
ホームレス「金を捨てるか」
ワシはダンボールの家にゴミと一緒に隠していた一千万を袋に詰めた
ホームレス「うーむ、流石にホームレスとはいえ、こんな格好で金の入った袋を肩に担いどったら目立つのぉ・・・おや?」
〇住宅街の公園
丁度、空が曇って雪が降って来た。そういえば今日は12月の何日かのう?
ホームレス「元さん、今日何日かのう?」
元さん「あっ? 今日は25日で世間はクリスマスとか言うしょうもねぇことで浮かれる日だよバカヤロー、ヒック」
ホームレス(元さん、また酔っぱらってるな。けどクリスマスか・・・)
ホームレス(おっ、そうだ!)
ホームレス「去年の冬、ゴミ箱から拾ったサンタの服じゃ、これなら目立たんじゃろう」
〇電器街
サンタホームレス「・・・」
警察官「サンタさんお仕事ですか?お疲れ様です」
サンタホームレス「ふぉっ、ふぉっ」
サンタホームレス(今日の特性で、サンタの恰好じゃと怪しまれんわい)
〇川に架かる橋
・・・
サンタホームレス「んんっ!?」
男が橋の手すりから身を乗り出しとる──まさか!?
サンタホームレス「早まるな!」
陰キャ男「うわっ、離してください」
陰キャ男「俺は人生に疲れたから死にたいんです!」
サンタホームレス「ほうか、ならワシが話を聞いてやるから、 それから死ね!」
陰キャ男「えっ!?(ドン引き)」
ワシは男の話を聞いてやった。
陰キャ男「実は俺、ブサイクでモテないのが分かってるのに、ある女性に恋をしたんです」
陰キャ男「それでその人がお金に困ってたから俺──」
サンタホームレス「──よし分かった。要は女に騙されて借金したんじゃろ、幾らじゃ?」
陰キャ男「百万円です」
サンタホームレス「ほれ受け取れ」
陰キャ男「えっ、え?」
サンタホームレス「それで借金を返して、残った金で生まれ変わるんじゃ」
陰キャ男「はい、ありがとうございますサンタさん!」
・・・
〇川沿いの公園
ミユキ「仕方無いよ、今の私達じゃこの子を幸せにできないから」
タケシ「ごめん、俺がもっと稼げれば」
ミユキ「ううん、タケシは頑張ってるよ。けど・・・」
ミユキ「生活が苦しくてもこの子は産んであげたかったな」
・・・
サンタホームレス「ほうか、最近は若い者に負担が行って家庭も持つ事ができんのか」
ミユキ「えっ、サンタさん!?」
サンタホームレス「ほれ、ワシから若い夫婦にプレゼントじゃ」
タケシ「こんなに沢山頂けるなんて」
ミユキ「タケシ、これなら生活も余裕でお腹の赤ちゃんも産めるよ」
サンタホームレス「メリークリスマスじゃ」
金を捨てるなら困った人に使った方が良い
それが元は汚いカネでも使い方によっては綺麗になる
ワシはこうして残りの金を街中の本当に困ってる人に配った
〇入り組んだ路地裏
サンタホームレス「さて、金も処分したことだし、もうこの格好はせんでもええじゃろう」
・・・
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組のお金に手をつけたら、ケジメをつけなくてはいけないですよね。
たぶんですが、彼も最後に撃たれて心の底では安心出来たのではないでしょうか。
サンタさんがいなくなってしまったのが悲しいです、でも最後に幸せをプレゼントできたからよかったのでしょうか。お金はあってもなくても困るものですよね、きっと。
ダークな設定で始まり、ある種のバッドエンドにもかかわらず、最後には救われた思いのする心地よい読後感でした☺️