サンタの錬金術師

白川怜夜

エピソード1(脚本)

サンタの錬金術師

白川怜夜

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〇貴族の応接間
僕「ジングルベールジングルベール すっずがーなるー 今日は楽しい~クリスマス~」
ママ「まだ12月1日なのにね あの子は日付を勘違いしているのかしら」
パパ「クリスマスが楽しみすぎて 幻覚を見ているんだ わが子ながら愚かで可愛いね」
僕「そういう歌だからだよ! もう!」
  この二人は僕のパパとママ
  ちょっと世間とずれたところがあるけど、
  仕事で世界中を飛び回ってる優秀な人たちなんだ
僕「ねえ今年はサンタさん来るかなぁ」
ママ「ニュースを見ていないようだわ サンタクロースはプレゼントの制作中に行方不明になったのを知らないのね」
僕「そうなの!?」
パパ「だから今年からサンタクロースは来ないのに何を言っているのだろうねママ」
僕「そんなぁ! 今年はプレゼントがないの!?」
パパ「この世の全ては 等価交換が原則だというのに 無償で何かを貰おうとするとは なんて欲深い息子だろう」
僕「サンタはいるよぉ! サンタのないクリスマスはクリスマスじゃないよ!」
パパ「そうなのかい?  サンタクロースはクリスマスにとっての 十分条件であって必要条件ではないだろう」
僕「子供に対して必要条件とか小難しい言葉使わないでパパ! とにかくサンタはクリスマスに 必要なの! 絶対にいるの!」
  僕は駄々をこねまくった。
  パパとママはすっごく困った顔をした
パパ「本当にサンタクロースは必要なのだね」
僕「そうだよ」
ママ「わかったわ きっとサンタさんをこの世に呼び戻しましょう」
  パパとママはどこかに連絡して
  大きな荷物を持ってこさせた
  それは立体のとても大きなアドベントカレンダーだった
  一日ずつが引き出しになっている
  中にきっとプレゼントが入ってるのだろう
ママ「じゃあ私たちは仕事に出るわ」
僕「次はいつ帰ってくる?」
パパ「わからない だがいつものように何か月も家をあけることになると思う」
僕「そっか」
  パパとママは忙しい
  クリスマスに家族全員揃ったことなんて一度もない
  誰もいないクリスマスで、
  サンタから届くプレゼントだけが
  僕が誰かに忘れられていないと感じられる日だった
僕(けど、もう、サンタさんはいない)

〇華やかな裏庭
  パパとママが家を出た後、今日のアドベントカレンダーを開けてみた
  水35L
僕「へ?」
  それからも僕は毎日カレンダーを開けていった
  炭素20㎏、アンモニア4L、石灰1.5㎏、リン800g、塩分250g、硝石100g、
  硫黄80g、フッ素7.5g、鉄5g、ケイ素3g、その他少量の15の元素
僕「あ、これ●の錬金●師に出てきた人体の構成物質だ」
「パパは僕に、人体錬成させようとしてる・・・?」

〇華やかな裏庭
  とうとう最後の24日。
  引き出しを開けると手紙が入っていた
  添付している魔法陣を床に書き、今まで渡したプレゼントを中央に置きなさい
                 パパより
僕「やっぱり僕に人体錬成させようとしてる! サンタさんを錬成させようとしてる!」
僕(どうしよう、人体錬成って身体の一部が持っていかれて、最悪、命を落とすんじゃ)
  けど僕は覚悟を決めた
僕「僕の命がどうなってもいい 少しでも可能性があるのなら僕はサンタさんを錬成する!」
僕「この世にサンタを取り戻せば、僕だけじゃない 世界中の子供たちが救われるはずなんだ!」
  僕は床に魔法陣を書いた
  すると僕の視界は突如真っ白に覆われて・・・

〇白
サンタクロース「HAHAHA」
  真っ白な世界の中でサンタさんがいる
  長いひげに優しい笑顔をしたサンタさんが──
  やった、僕は──

〇華やかな裏庭
「メリークリスマス!」
僕「え?」
  僕はさっきと同じ場所に立っていた
  目の前ではパパとママとサンタさんが笑っている
僕「どういうこと!? 僕はサンタ錬成に成功したの!?」
僕「それにパパとママはなんでここに!?」
ママ「仕事が終わって帰ってきたという当然の発想が出てこないようだわパパ」
パパ「人体錬成ができると思うなんて物語の読みすぎじゃないだろうかママ」
サンタクロース「Äitisi ja isäsi kutsuivat minut tänne.」
僕「なんて!?」
ママ「サンタさんが欲しいって言うからフィンランドから来てもらったのよ」
僕「サンタさんはいなくなったんじゃ!?」
パパ「本当に信じていたみたいで面白いよ 君はいつだって僕たちの想像を上回ってくれる」
ママ「簡単な嘘だというのに。これだから人の子の可愛らしさたらありはしないわ」
僕「じゃ、じゃあサンタさんは元からいたの? 僕も禁忌に手を出してない・・・!?」
「そうだね/そうよ」
僕「う」
「う?」
僕「うわあああん よかったよおお! 死ななくて良かったああ!」
パパ「泣かせてしまったよ 僕たちは君を笑顔にしたかったのに サプライズというのは難しいね」
ママ「さあクリスマスパーティーを始めましょう ほら泣きやんで  フランス三ツ星シェフを呼んでいるわ」
ママ「あなたに喜んでほしくて帰ってきたのよ」
サンタクロース「Minulla on sinulle lahja. (プレゼントもあるよ!)」
  サンタさんが家にいる
  そしてなによりパパとママが僕のために帰って来てくれた!
僕「ジングルベールジングルベールすっずがーなるー 今日は楽しい~クリスマス~」
ママ「今日、は間違ってないわね」
パパ「ああ、楽しいクリスマスにしよう」
  今日は最高のクリスマスだ!

コメント

  • 両親が息子に対して、やや冷たいイメージを最初は受けましたが、それもクリスマスプレゼントのサプライズで少しホッコリしました。

  • なんだか、「このご両親は本当に生きてる?」って猜疑心がわくような深いお話に感じました。
    人の気持ちが交差して、読んでて楽しかったです!

  • アドベントカレンダーにそういうのいれるのもありなんだ!という新しい発見がありました。待ちに待っていたクリスマス、サンタさんもはるばる来てくれて、家族そろって迎えられてよかったね♪

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