花。~オレにだけ見える花を咲かせている女の子がいました~

いとはと

[5-1](脚本)

花。~オレにだけ見える花を咲かせている女の子がいました~

いとはと

今すぐ読む

花。~オレにだけ見える花を咲かせている女の子がいました~
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇黒

〇まっすぐの廊下
平良 (たいら)「───・・・」
  保健室を出て間もなく、平良の足は止まってしまった。
  この前、香りの元を捜そうと動いた時とは状況が違う。
平良 (たいら)(・・・どこだ?)
  香りが広範囲に広がっているようだった。
  強く香ってくる方向がよく分からない。
平良 (たいら)「・・・っ」
  一瞬迷った後、平良は2組の教室へと足を向けた。

〇黒

〇教室
  ─── 2組 ───
平良 (たいら)(・・・いない)

〇学校の廊下
  凛がいないことを確認すると、平良はすぐに2組の教室から離れる。
  凛を初めて見かけた時に一緒にいた友達の姿もなかった。
平良 (たいら)(どこかに食べに行ったのか)
平良 (たいら)(中庭、屋上、他のクラス・・・)
  どこを捜せばいいのかと考えかけて、ふと平良は思い至る。
  香りがするということは、凛は学校には来ているはずだ。
  そうだとして、昼休みの教室に姿がなく、友達とどこかに出ているのだとしたら。
平良 (たいら)(オレの勘違いか・・・?)
  凛は普通に、元気に、過ごしているのかもしれない。
平良 (たいら)「・・・・・・」
平良 (たいら)「!!」

〇黒

〇学校の廊下
平良 (たいら)(ああ、くそ・・・!)
  また見えた黒い花。
  変わらない”いつもとは違う香り”。
  平良はじっとしていられず、行き先も分からないままその場から動き出した。

〇階段の踊り場

〇渡り廊下

〇学校の昇降口

〇学校の廊下

〇まっすぐの廊下

〇まっすぐの廊下
平良 (たいら)「・・・・・・」
  頭がぐらぐらと揺れているような不快感。
  吐き気にも似た、イヤな感覚だった。
平良 (たいら)「────・・・」
  平良は深く静かに息を吸い込み、吐く。
平良 (たいら)(・・・手、震えてる)
  冷たくなった手を握りしめて、平良は微かに口端を歪めた。
平良 (たいら)「──・・・」
  どこか冷静に自分を観察してもいるが、こんなことは初めてで戸惑いは隠せない。
平良 (たいら)「・・・・・・」
平良 (たいら)(・・・心臓の音、うるさい)
  正直に動揺している体に平良がいら立ちを覚えたその時 ───
平良 (たいら)「─── !?」
  平良は驚きのあまり、息を飲んだ。
  ─── 花が見える。
  いまだ黒いままだが、凛の花だ。
  視界の左側から、まるで風に流されるかのように花が舞ってくる。
  先ほどまでの、目の前に現れては消える花とは明らかに違っていた。
  ある方向から、花が、流れてきている。
  少なくとも、平良にはそう見えた。
  それはつまり ─── その先に凛がいるということ ─── 。

〇黒

〇階段の踊り場
  凛の姿は踊り場にあった。
  やはり、平良も見覚えのあるあの時の女の子と一緒にいる。
  上の階から見下ろす平良からは凛の顔は見えず、その様子はよく分からなかった。
  平良は大股で駆け下りながら声をかける。
平良 (たいら)「里見さん!」
  思わず声が大きくなってしまったが、今は構っていられなかった。
  黒い花が舞っている。

〇黒
  香りもここまで近づくと、キツく強烈なものになっていた。

〇階段の踊り場
  凛の様子が知りたい。
  その一心で踊り場へと来ると、平良の声に顔を向けたのは凛ではなかった。
???「ねえ凛、今呼ばれなかった?」
平良 (たいら)「!」
  平良と女の子の目が合う。
???「・・・あの〜?」
平良 (たいら)「!!」
  凛は、女の子の後ろに立っていた。
  踊り場を振り返らず、平良に背中を向けたままで。
  下への階段にもう足を一歩踏み出しているだろうという辺りに立って。
  ──── その姿が突然、力なく崩れていくのを平良は目の当たりにした。
平良 (たいら)「・・・っ!!」
???「凛!?」
  女の子を避けて全力で前へと飛び出す。

〇階段の踊り場
  階段を落ちていこうとしている凛に、平良は限界まで手を伸ばした。
  ─── 届け!!!!
  心の中で叫ぶ。

〇階段の踊り場

〇白

〇黒

〇黒
平良 (たいら)(・・・情け、ない)
平良 (たいら)(一緒に落ちて、どうする)
平良 (たいら)(・・・・・・)
平良 (たいら)(でも、)
平良 (たいら)(だから、)
平良 (たいら)(かばえた・・・)
平良 (たいら)(・・・・・・)
平良 (たいら)(─── 良かっ、た)
「──────」
「────く──ん」
「──わ──くん────」
  うまく聞き取れない。
「──た──がわ──」
  けれど、誰かに呼ばれているということは分かった。
平良 (たいら)(・・・甘い、香り・・・)
  これは、凛の花の香りだ。
  まだ、いつもとは違う香りだけれど。でもこれは、間違いなく。
「き──た──がわ──くん」
平良 (たいら)(目を・・・開けろ)
  凛が呼んでいるのだ。
  ずっと、もう一度会いたいと思っていた凛が ─── 。
平良 (たいら)(─── 起きろ)

〇白

次のエピソード:[4-2]

成分キーワード

ページTOPへ