花。~オレにだけ見える花を咲かせている女の子がいました~

いとはと

[4-2](脚本)

花。~オレにだけ見える花を咲かせている女の子がいました~

いとはと

今すぐ読む

花。~オレにだけ見える花を咲かせている女の子がいました~
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇黒

〇学校の廊下
  ─── 花のことが分かり、凛に声をかけたのは先週の金曜日だ。

〇学校の昇降口
  改めて話したいと思っていると知史に言ったのは、今週の月曜日で

〇学校の校舎
  今日はもう ─── 木曜日になる。

〇保健室
平良 (たいら)「・・・・・・」

〇学校の屋上
  屋上で凛と別れてから、6日も過ぎてしまった。

〇学校の廊下
  月曜の朝、知史に言った気持ちに少しも嘘はない。
  あの時は、昼休みや遅くとも放課後には、動こうと思っていた。
  おそらく、あの直後に時間があったら、勢いに任せて行ってしまっただろう。
  だが、遅めに登校する平良にはそんな時間はなく ───

〇教室
  結果として、”授業時中に考える”ことになってしまったのだ。
  ”もう一度会って謝って、話したい”
  学校に来るまではただそれだけを考えていたのに、ここにきて急にブレーキがかかってしまった。
  そもそも、どうやってまた会う?
  勢いでまた突然押し掛ける形になりそうになっていたが、考えてみるとそれは非常に微妙な選択肢に思えた。
  クラスも名前も顔も分かっているのだから、クラスに赴くことも、あの時のように待って声をかけることも出来る。
  ・・・だが、それをしてしまってもいいのだろうか?
  怖がられたら?
  気持ち悪がられたら?

〇まっすぐの廊下
  違う校舎に教室があるが、偶然を装って会ったことにする?
  ・・・タイミングが合わなければ待ち伏せと何も変わらないのでは?

〇学校の屋上
  誰かを介して呼び出してもらう?
  ・・・でも、それで凛が来なかった時、
  ”最後の1回が終わった”と思うことが出来るだろうか。

〇黒
  ダメならダメで仕方ないのだと思う。
  けれど、
  だとしても、
  平良は”もう一度会って謝って話して”から玉砕したかった。

〇保健室
平良 (たいら)「・・・・・・」
平良 (たいら)(やっぱり、行くしかないのか)
  どこかへ行ってしまった保健医を待ちながら、ひとり平良はぐるぐると考え続ける。
  ”もう一度会って話す”が諦められないのなら、覚悟を決めるしかないことは、本当はもう分かっていた。
  話をする前の段階での凛の反応が不安で、怖いとさえ思う。
  だから、ずっと何か他に手はないかと考え続けたが ─── 結局、最初と同じ行動に出るしかないのだ。
  例え凛にどんな反応をされても、受け入れる覚悟で。
  そこで”最後の1回”が終わったとしても、会えないまま諦めるよりはずっといい。
平良 (たいら)(・・・ちゃんと謝ろう)
  からかったつもりは微塵もないし、凛が誤解してしまったのは平良の紛らわしい態度のせいだ。
  だから凛には全く落ち度はないのだと、誤解させて悪かったと、せめてそれだけでも伝えたい。
平良 (たいら)(・・・胸が苦しい)
  右手で鼻を押さえたまま、ほぼ無意識に平良の左手が胸元へと伸びた。
平良 (たいら)(本当にあるんだな、こういうの)
  もしかすると、これは恋の始まりなのかもしれない。
  平良がそう思うようになってから、凛のことを考えると、胸のあたりがこうして時折きゅっと苦しくなるようになった。
平良 (たいら)「・・・・・・」
  初恋かもしれないこれは、始まる前に ─── 始まると同時に、終わる運命なのかもしれない。

〇黒

〇保健室
平良 (たいら)「・・・?」

〇黒

〇保健室
平良 (たいら)(里見さんの花の香り・・・)
平良 (たいら)(だけど、なんだ・・・これ?)

〇黒

〇保健室
平良 (たいら)(─── いつもと、違う)
平良 (たいら)(なんだ、これ・・・)
  平良が悩んでいたこの数日の間にも、当然、凛の花の香りを感じることはあった。
  だが今、平良が感じる香りは、これまでのものとは似ているようで違う。

〇黒

〇保健室
平良 (たいら)(里見さん・・・?)
平良 (たいら)「!!」
  丸椅子から思わず立ち上がる。
  鼻血は既に止まっていたが、今の平良にはそんなことはどうでもよかった。
平良 (たいら)(黒い花・・・!?)
  平良は眉を顰め、ほとんど反射的に左手で目を擦る。
平良 (たいら)「・・・・・・」
  今確かに、黒い花 ─── ”黒くなった凛の花”を見た。
  頭が混乱する。
  凛の花が黒いことも問題だが、今ここに凛はいないのだ。
  離れていても香りを感じることはあったが、凛のいない場所で花が見えたことなど今まで一度もない。
平良 (たいら)「・・・っ」
  保健医が戻るのを待たず、平良は保健室を出ようと足早にドアへと向かった。
  香りがいつもと違い、見えないはずの花が見え、その色が黒い ─── 。
  凛の身に何か起こったのではないか。
  そう平良が疑うには十分過ぎる状況だ。
知史 (さとし)「わ!」
平良 (たいら)「!?」
  まさかのタイミングで保健室のドアが開き、平良と知史はお互い相当に驚いて身をすくませる。
知史 (さとし)「・・・っ、びっくりした・・・!」
平良 (たいら)「知史」
知史 (さとし)「平良、お前、なんだよ 大丈夫なのか?」
知史 (さとし)「もう昼休み ───」
平良 (たいら)「ああ ─── オレは大丈夫」
平良 (たいら)「行ってくる」
知史 (さとし)「は?」
知史 (さとし)「え、あ、おい、平良!」
知史 (さとし)「・・・・・・」
知史 (さとし)「行くってどこにだよ・・・」

〇黒

次のエピソード:[4-1]

成分キーワード

ページTOPへ