[4-1](脚本)
〇黒
〇学校の校舎
─── 月曜日 ───
〇学校の昇降口
〇学校の昇降口
知史 (さとし)「よう」
平良 (たいら)「おはよう」
知史 (さとし)「田中の英訳、やったか?」
平良 (たいら)「あー・・・やってない」
知史 (さとし)「お前、当たったらやばいじゃん 田中のヤツうるさいぞ」
平良 (たいら)「ん・・・そうだな」
知史 (さとし)「どーでもよさげだな、おい」
平良 (たいら)「どうでもよくはないけど、提出じゃないし・・・まぁなんとかする」
知史 (さとし)「なんとかって・・・ それが出来るヤツはいいよな」
平良 (たいら)「あ、そうだ」
知史 (さとし)「ん?」
平良 (たいら)「一昨日はお世話になりました」
知史 (さとし)「・・・お前ってこういうところだけは常識的で礼儀正しいよな」
平良 (たいら)「・・・・・・」
平良 (たいら)「”だけ”ってことは、そうじゃないところは全部非常識なのか、オレ?」
知史 (さとし)「全部まともだとは思ってないよな、まさか」
平良 (たいら)「・・・ん~・・・」
平良 (たいら)「─── そうだな」
知史 (さとし)「おいおい」
知史 (さとし)「認めるところがお前だよなぁ」
〇階段の踊り場
〇学校の廊下
〇学校の廊下
知史 (さとし)「─── で?」
平良 (たいら)「・・・・・・」
平良 (たいら)「まずは謝って、」
平良 (たいら)「それからもう一度、話を聞いてもらおうと思ってる」
知史 (さとし)「やっぱそうするのか」
平良 (たいら)「ああ」
知史 (さとし)「・・・逃げられるに10円」
平良 (たいら)「なら ─── 追いかける」
知史 (さとし)「ガチで逃げられたら申し訳なくなってそれも出来ないに10円」
平良 (たいら)「・・・・・・」
知史 (さとし)「・・・次で最後にしとけ」
平良 (たいら)「そうだな」
平良 (たいら)「分かってる」
平良 (たいら)「・・・・・・」
知史 (さとし)「平良?」
平良 (たいら)「・・・周りにどう思われるかはともかく、」
知史 (さとし)「そこは”ともかく”にはするな?」
平良 (たいら)「・・・彼女に”気持ち悪い”と思われるのは・・・キツイな」
知史 (さとし)「まぁ悪い方向に転がれば、そっちか”怖い”だろうな」
平良 (たいら)「・・・・・・」
平良 (たいら)「どうしたらそう思われないように近づけるんだろう・・・?」
平良 (たいら)「難しい・・・」
平良 (たいら)「変なコトするつもりなんてこれっぽっちもないんだけど」
知史 (さとし)「お前の場合、話しかけたい動機自体がある意味”変なコト”だけどな」
平良 (たいら)「・・・・・・」
知史 (さとし)「そんな目で見るなって オレは言いたいことは言うぞ」
平良 (たいら)「・・・そうだな」
知史 (さとし)「でも言いたかったし、言いたいんだろ?」
平良 (たいら)「ああ」
知史 (さとし)「ならもうそこはしょうがねーじゃん」
知史 (さとし)「やりたいようにやって、散れ」
平良 (たいら)「散るのか」
知史 (さとし)「散ると思ってた方がいいと思うぞ、オレは」
平良 (たいら)「・・・はぁ」
平良 (たいら)「勉強なんかより全然難しいな ・・・困る」
〇教室
〇教室
知史 (さとし)「─── で?」
平良 (たいら)「ん?」
知史 (さとし)「・・・オレに何かして欲しいことあるか?」
平良 (たいら)「────・・・」
平良 (たいら)「・・・いや」
平良 (たいら)「こうして聞いてくれるだけで、いい」
平良 (たいら)「ありがとう」
知史 (さとし)「そっか」
知史 (さとし)「分かった」
〇黒
〇学校の校舎
─── 木曜日 ───
〇学校の体育館
〇学校の体育館
「・・・っ、おい!喜多川!」
〇黒
〇保健室
〇保健室
保健医「ほら、ちゃんと押さえて」
平良 (たいら)「・・・ふぁい」
血を流す鼻を押さえながら答えた声は、どこか間抜けな音になった。
保健医「あ、あんまり上向き過ぎないようにね 血が逆流しちゃうから」
今度は声には出さず小さく頷いてから、平良はふっと短いため息を吐く。
保健医「体育の授業中、バレーボールが顔面に命中・・・っと」
保健医「で、いいんだよね、喜多川くん?」
平良 (たいら)「・・・ほうでふ」
咄嗟に返した言葉はやはり間抜けな音になり、平良はここに知史がいたら笑うだろうなとぼんやりと思った。
保健医「それにしても、すぐにタオル借りられて良かったわねえ」
保健医「体操着、血で汚れたら大変だったわよぉ?」
そうですね、と言いそうになるのを止めて今度は瞼の開閉で応答する。
保健医「しばらくそのまま、おとなしくしててね」
平良 (たいら)「・・・・・・」
〇黒