花。~オレにだけ見える花を咲かせている女の子がいました~

いとはと

[2-2](脚本)

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〇黒

〇学校の校舎

〇まっすぐの廊下

〇学校の廊下
平良 (たいら)「─── あの、」
平良 (たいら)「里見、凛(りん)さん」
凛 (りん)「え・・・」
凛 (りん)「あ、はい?」
平良 (たいら)(やっぱり・・・この子だ)
  知史が青柳から入手した情報により、その転校生の名前が「里見 凛」であること、
  まだ部活動をしていない為、放課後にはすぐに帰ってしまうことなどを知り、平良は思い切った行動に出た。
  ひとり廊下を歩いていた、帰り際の彼女に声をかける。
凛 (りん)「・・・えっと・・・なんでしょう?」
  いい子だ、と平良は思った。
  突然、クラスも違う見知らぬ男に名前を呼ばれたというのに、凛の態度は柔らかい。
  怯えるでも怪しむでもなく、真面目に向き合おうとしてくれているようだ。
  花の持ち主が”こういう子”であることに、平良は少し嬉しくなる。
平良 (たいら)「いきなりすみません」
平良 (たいら)「オレ、7組の喜多川平良です」
平良 (たいら)「里見さんにすごく大事な話があるんだけど ─── いいですか?」
凛 (りん)「え・・・」
凛 (りん)「・・・・・・」

〇黒

〇教室
知史 (さとし)「お前、多分話を聞いてもらうところまでは問題なくいけると思うぞ」
平良 (たいら)「・・・そうか? だといいけど」
知史 (さとし)「間違いない オレが保証してやる」
知史 (さとし)「お前、見目は悪くないからな」
知史 (さとし)「・・・話を聞いたらどーなるかはさすがに分からんけど」
知史 (さとし)「・・・・・・」
知史 (さとし)「普通に”好きです”って言えば?」
平良 (たいら)「ん~・・・」
平良 (たいら)「でも別に好きというわけじゃ・・・」
知史 (さとし)「ならせめて、”友達になって下さい”とかで止めておけって」
平良 (たいら)「けど・・・」
知史 (さとし)「・・・はぁ」
知史 (さとし)「ま、それがお前だもんなぁ」
知史 (さとし)「でも彼女に対して、あんまりおかしなことはするなよ」
知史 (さとし)「見目のことなんて吹っ飛んでダメ出し食らう案件だからな、アレ」
知史 (さとし)「まずいと思ったら冗談にして逃げて来い」
知史 (さとし)「それでも十分アレっちゃアレだが、押し通すよりはマシだろうからな」
平良 (たいら)「・・・分かった 気をつける」

〇黒

〇学校の廊下
平良 (たいら)(知史の言う通り好印象なのか、オレ)
  それ自体は今、良い方向に働いている。
凛 (りん)「え、あの、その・・・」
  だが、凛の様子を見るに、明らかに誤解されているようだった。
  おそらく、”恋愛感情の告白をする為の声かけ”だと思われている。
  顔には出ない質で助かっているが、内心で平良は困り始めていた。
  凛のことは素直にかわいいと思うし、自分への対応にも好感しか覚えない。
  けれど、自分はそういう告白をするつもりではなく ───
平良 (たいら)(・・・あれ?)
  ふと急に、視界に舞い続ける花へと平良の意識が向いた。
平良 (たいら)(色が・・・?)
  なんとなく、昼間見た時とは色合いが違うように見える。
平良 (たいら)(?)
  とはいえ、昼間にじっくりと観察したわけでもない為、気のせいかもしれなかった。
  香りの方は、ここまでに知ったものとの違いは特にないように思えるし、やはり気のせいか、
  もしくは、1日の間にも元々何か変化が起こるものなのかもしれない。
凛 (りん)「あの・・・?」
  奇妙な間のせいか、凛の顔にもさすがに戸惑いの表情が浮かんだ。
平良 (たいら)「すみません」
  内心少し焦りつつ、平良は咄嗟に謝る。
平良 (たいら)「こっちから声をかけたのに」
凛 (りん)「いえ・・・それで、あの?」
  凛と話せるチャンスが得られる現状に、平良は腹を括った。
  誤解をさせているかもしれないが、話したいことがある。
平良 (たいら)「時間、ありますか?」
凛 (りん)「は、はい」

〇学校の校舎

〇学校の屋上

〇学校の屋上
平良 (たいら)「・・・ごめん、驚いた?」
凛 (りん)「え、あ・・・う、うん ちょっと・・・」
平良 (たいら)(・・・緊張してる)
  凛は先ほどからずっと、そわそわと落ち着かない様子だ。
  気楽にしていて欲しいと言っても無理なのだろうと思う。
  凛のその様子が気の毒で、平良は自分がそうさせていることに小さく胸が痛んだ。
平良 (たいら)「─── ありがとう ここまで来てくれて」
凛 (りん)「え・・・」
  本当にありがたくて、嬉しくて、平良はその気持ちをそのまま口にする。
凛 (りん)「そ、それで・・・あの、」
凛 (りん)「大事な話って ───」
  確かに香る、甘く爽やかな香り。
  確かに見える、青い綺麗な桜。
平良 (たいら)(・・・どう話そうか)
  どうしたら、伝わるのだろう。
  愛の告白ではないけれど、とても不思議なこの気持ちを、どう言えばいいのか。
  ─── 平良は小さく息を吸って、ゆっくりと吐いた。
平良 (たいら)「あの ────」

〇黒

次のエピソード:[2-1]

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