花。~オレにだけ見える花を咲かせている女の子がいました~

いとはと

[2-1](脚本)

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〇黒

〇学校の校舎

〇教室
知史 (さとし)「・・・・・・」
平良 (たいら)「・・・・・・」
  香りの元を確認出来た平良が教室へと戻り、昼食の続きをしつつ知史に先ほどの件を全て話し終えたのは数分前のこと。
  喋ることがあまり得意ではない平良にしては珍しいことだった為か、知史は最初驚いたような顔をして聞いていた。
  途中、首を傾げたり眉を顰めることはあったものの、話を遮ることはなかった知史がしばしの間の後に口を開く。
知史 (さとし)「・・・平良」
知史 (さとし)「貴重な昼休みを消費してんだぞ~?」
平良 (たいら)「そうだな ありがとう」
知史 (さとし)「お前さぁ、」
知史 (さとし)「どーして素直に”その子が気になる”って言えねぇかなぁ!?」
  どうやら知史は平良の話を”ひとめ惚れ”の一種だと捉えたようだ。
平良 (たいら)「もちろん気になるに決まってる」
平良 (たいら)「花が香るし見えるんだ 当然だろ」
知史 (さとし)「いやお前、だからそれくらい好みのタイプだったってことで・・・」
平良 (たいら)「?」
平良 (たいら)「かわいい子だったけど、花のことはまた別の話じゃないか?」
知史 (さとし)「・・・は~・・・」
知史 (さとし)「よし分かった」
知史 (さとし)「なんだか全然まったくもって分からねぇけど、お前にはその子の周りに花が見えて、香りも感じるんだな」
平良 (たいら)「ああ」
平良 (たいら)「綺麗な青い花で ───」
知史 (さとし)「甘いけど爽やかな香り、なんだろ?」
平良 (たいら)「そう」
平良 (たいら)「─── あ」
知史 (さとし)「ん?」
平良 (たいら)「あの花・・・多分、桜だ」
平良 (たいら)「色が青だったからピンとこなかったけど、そうだ、あれ、桜か・・・」
知史 (さとし)「青い桜ねぇ」
知史 (さとし)「今ならプロジェクトマッピングとかでどこかがやってそうだよな」
知史 (さとし)「まぁ桜みたいな花は青でも綺麗だろうし」
平良 (たいら)「綺麗だぞ」
知史 (さとし)「・・・・・・」
知史 (さとし)「・・・オレ達、なんだかものすごくおかしな会話してないか?」
平良 (たいら)「そうか?」
平良 (たいら)「・・・ああ、そっか そうかも?」
知史 (さとし)「いやいやそうだって」
知史 (さとし)「・・・ま、いいけど」

〇教室
知史 (さとし)「・・・平良」
平良 (たいら)「ん?」
知史 (さとし)「お前が言ってる子さぁ」
知史 (さとし)「2組に転校して来た子かも」
平良 (たいら)「!」
平良 (たいら)「・・・知ってるのか?」
知史 (さとし)「オレが直接知るわけないだろ 違うクラスの転校生なんて」
平良 (たいら)「でも分かるのか?」
知史 (さとし)「もしかしたら、だけどな」
知史 (さとし)「お前さっき言ってただろ その子が「りん」って呼ばれてたって」
平良 (たいら)「そう聞こえた あの子の名前かは分からないけど」
知史 (さとし)「で、同学年だったと」
平良 (たいら)「それは間違いない リボンが深緑だった」
知史 (さとし)「だったら、とりあえず2組の里見(さとみ)さんをあたってみろよ」
知史 (さとし)「何日か前に転校して来た子で、名前が”りん”ていうんだよ、確か」
平良 (たいら)「・・・詳しいな?」
知史 (さとし)「べ、別にオレは女の子達の名前を全部把握してるわけじゃねーぞ!」
知史 (さとし)「たまたま青柳から聞いていただけで・・・」
平良 (たいら)「青柳?」
知史 (さとし)「青柳が2組なんだよ」
知史 (さとし)「オレと同じ部活の お前も会ったことあるだろ」
平良 (たいら)「ああ、あの背が高い・・・」
知史 (さとし)「そうそう、あいつが自分のクラスに来た転校生の話をしてたんだって」
知史 (さとし)「それが里見さん」
知史 (さとし)「・・・あいつ、彼女いるくせにそういうチェックがマメなヤツなんだよな」
知史 (さとし)「これが男の話だったら絶対名前なんてあやふやだったに決まってるぞ」
平良 (たいら)「それって、5日くらい前の話か?」
知史 (さとし)「それ? ああ、話を聞いた日か?」
知史 (さとし)「ん~多分、そのくらいだろうな」
知史 (さとし)「青柳が色々言ってたのが多分、転校初日だろうし・・・」
知史 (さとし)「って、なんだよ、お前知ってるじゃん」
平良 (たいら)「・・・アタリだよ、知史 その子だと思う」
知史 (さとし)「は?」
平良 (たいら)「だって、オレが香りを感じ始めたのがちょうど同じ時期 ───」
知史 (さとし)「分かった」
知史 (さとし)「話の前提がなんか絶対おかしいとは思うけど、お前が言いたいことは分かった」
平良 (たいら)「・・・なるほど、2組か」
  これまでの不安定な香りの感じ方に納得がいって、平良は思わずぽつりと呟いた。
  2組とは同学年だが校舎が違う為、今日までニアミスがなかったのだろう。
  学校から離れると1度も香らなかったことも、同じ学校の生徒であるなら当然だ。
知史 (さとし)「それで?」
平良 (たいら)「ん?」
知史 (さとし)「気になるその子とのこと、平良くんはどーしたいのかなぁ?」
平良 (たいら)「・・・・・・」
平良 (たいら)(どうしたい・・・?)
  軽い口調から知史がちょっと面白がっていることが伝わってくる。
  だが、平良は知史の問いかけに自分でも首を傾げてしまった。
  自分はこれからどうしたいのだろう?
  近ごろ気になっていた”どこから香ってくるのか?”は先ほど判明した。
  なら、それで終わり。
平良 (たいら)「・・・・・・」
  何故、彼女なのか。
  何故、彼女だけなのか。
  考えていくと、これで終わりには出来ない自分がいることが分かる。
  このままでは胸の奥が静かにざわつき続けて、とても落ち着きそうになかった。
平良 (たいら)(・・・どうする・・・)
平良 (たいら)(オレは、どうしたいんだろう・・・?)

〇黒

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