過去偏第9話『てんし』(脚本)
〇病院の診察室
医師「ご帰宅を許可します」
医師「しかし無理しないようお願いします」
医師「少しでも家族の時間を 大事にしてください」
三好優作「つまり、そういうことなんですね?」
医師「はい」
三好優弥「・・・・・・」
三好優作「わかりました」
〇病室
三好水葉「家に帰って来れるんだね」
三好双葉「嬉しい!」
天宮詩乃「少しの間だけでも 家に帰れるのは嬉しい」
三好双葉「でも、また入院するんだよね」
天宮詩乃「どうかな?もしかしたら このまま退院出来るかもよ?」
三好水葉「それなら最高だよね」
〇病院の待合室
天宮詩乃「楽チン楽チン」
三好優弥「お前、こんなに軽かったっけ」
天宮詩乃「失礼だな!」
三好葉月「病院食じゃ痩せちゃうわよね いつもご飯3合食べてたんだから」
天宮詩乃「おうち帰ったらたくさん食べよう!」
三好葉月「お祝いしましょう」
三好優弥「詩乃の好きなものばかり 用意してるからな」
天宮詩乃「楽しみ!」
〇明るいリビング
天宮詩乃「・・・・・・」
三好優弥「どうしたんだ? もういいのか?」
天宮詩乃「うん! お腹いっぱいになっちゃった!」
三好双葉「おかずも少しだけだし ごはんも二口ぐらいしか食べてないよ?」
天宮詩乃「きっと病院食食べてたから 胃が小さくなったのかな」
天宮詩乃「きっと治ったら また食べられるようになるよね」
三好優弥「そうだな」
〇学校脇の道
天宮詩乃「散歩にも出れるなんて嬉しいな」
天宮詩乃「本当は自分の足で歩きたいけどね」
三好優弥「元気になれば歩けるさ」
天宮詩乃「恋翔学園だ」
三好優弥「一緒に学園祭来たよな」
天宮詩乃「うん! 楽しかった!」
天宮詩乃「来年は一緒に入学だからね」
三好優弥「そうだな」
学園祭係「あれー? 君たちは確か?」
三好優弥「?」
学園祭係「私だよ私」
天宮詩乃「あっ!」
天宮詩乃「係りのお姉さん!」
三好優弥「あのときはお世話になりました」
学園祭係「あれ? 車いす?」
天宮詩乃「はい!ちょっと入院しちゃってて」
学園祭係「・・・・・・」
学園祭係「ねえ、良かったら学校見てく?」
天宮詩乃「いいんですか?」
学園祭係「いいよ」
三好優弥「ありがとうございます」
〇ボロい校舎
学園祭係「ホントにここで良かったの?」
天宮詩乃「はい!」
天宮詩乃「私たちにとって ここが思い出の場所なんです!」
学園祭係「そっか 学園祭が楽しかったのかな」
天宮詩乃「はい! また肝試ししたいです!」
学園祭係「学園祭係としては嬉しい限りだよ」
学園祭係「じゃあ、私はこれで失礼するね 旧校舎の中には入れないけど 気が済むまで見ていいからね」
学園祭係「学園の人には言っておくから もし行きたいところがあるなら 行っていいよ」
天宮詩乃「ありがとうございます!」
学園祭係「ちなみに夕方の屋上はオススメだよ」
学園祭係「エレベーターが途中まであるから それ使ってね」
学園祭係「じゃあね!」
三好優弥「本当いい人だな」
天宮詩乃「うん!」
三好優弥「でも、肝試し楽しかったな」
天宮詩乃「うん! もしさ、入学できたら また絶対肝試ししようね!」
三好優弥「もちろん!」
天宮詩乃「一緒の部活入ってさ 合宿して、夜は肝試しするの!」
三好優弥「楽しそうだな!」
天宮詩乃「でしょ!」
天宮詩乃「それで、ゆーやは ここでいっぱい友達作るの」
三好優弥「またそれか」
天宮詩乃「心配してるんだよ! いつも1人でいるから!」
三好優弥「心配しすぎだ」
天宮詩乃「ねえ、ゆーや」
天宮詩乃「もしもね」
三好優弥「ん?」
天宮詩乃「私に何かあったときは、、、」
三好優弥「縁起でもないこと言うな」
天宮詩乃「お願い聞いて」
天宮詩乃「もしも、私に何かあったときは 学校を探してね」
三好優弥「学校を探す? 何をだ?」
天宮詩乃「それは秘密!」
三好優弥「ん?」
天宮詩乃「約束だからね!」
三好優弥「分かったよ」
〇空
〇高い屋上
天宮詩乃「おんぶ楽でいいわ!」
三好優弥「屋上はさすがに エレベーター繋がってなかったな」
天宮詩乃「校内にエレベーターあるだけ さすが恋翔学園だよ」
天宮詩乃「でも、お姉さんが言っていた通りさ」
天宮詩乃「夕陽が綺麗だね」
三好優弥「ホントだな 上がってきた価値あったな」
天宮詩乃「また来れるとは思わなかった」
三好優弥「また?」
天宮詩乃「いや、学園にね」
三好優弥「ああ、確かにな。お姉さんのお陰だな」
天宮詩乃「本当に空が近いね! 天国にも声が届くかな」
三好優弥「確かにな」
天宮詩乃「ねえねえ、もっとフェンス越しにいこう!」
三好優弥「ああ」
三好優弥「だけど詩乃軽くなったな」
天宮詩乃「そう? 元々スマートだよ」
三好優弥「明らかに痩せたぞ」
天宮詩乃「正直ね 食欲も湧かないし、毎日苦しいの」
天宮詩乃「多分、長くないんだと思う」
三好優弥「そんなことない!」
天宮詩乃「自分のことは自分が1番分かるんだよ」
天宮詩乃「でもね、ゆーやが言うんだから 最後まで頑張るよ!」
三好優弥「そうだ、詩乃はそうじゃないと」
天宮詩乃「ありがとう」
天宮詩乃「ゆーやがいなかったら私、、、」
〇明るいリビング
三好優弥「朝飯は、お茶だけでいいのか?」
天宮詩乃「うん」
天宮詩乃「ゴホコホ」
天宮詩乃「あんまり食欲湧かないんだ」
三好水葉「お姉ちゃん」
天宮詩乃「大丈夫! 散歩行って帰ってきたら お腹空いてるはず!」
三好双葉「じゃあ、ご飯用意しとくね」
天宮詩乃「頼んだよ!」
天宮詩乃「じゃあ、ゆーや散歩連れて行って」
三好優弥「あ、ああ 分かった」
〇公園のベンチ
天宮詩乃「ここもよく来たね」
三好優弥「そうだな」
天宮詩乃「はあはあ」
三好優弥「しんどいのか?」
天宮詩乃「少しね」
三好優弥「無理はすんな」
天宮詩乃「そうだね」
天宮詩乃「でも、もう少しだけ」
天宮詩乃「ねえ、ゆーや、これ覚えてる?」
三好優弥「学園祭の時のだな」
三好優弥「いつも持ち歩いてるのか?」
天宮詩乃「私の宝物だからね!」
天宮詩乃「うん、これのお陰で辛い治療も 乗り越えられたよ」
天宮詩乃「そして、宝物であり お守り代わりなんだ」
三好優弥「そうか」
天宮詩乃「これさ、もう一個買って 婚約指輪にしない?」
三好優弥「え?」
天宮詩乃「名案じゃない?」
三好優弥「そうだな!」
三好優弥「そうしよう!」
三好優弥「結婚しような」
天宮詩乃「嬉しいなー」
天宮詩乃「こんな幸せなことないよ」
天宮詩乃「似たやつ買おうね!」
三好優弥「せっかくだから ペアリング買おうぜ」
三好優弥「それはお守りとして持ってるんだ」
天宮詩乃「そうだね これ、”サイズ”変わっちゃったし」
天宮詩乃「一緒のお揃いにしよう」
三好優弥「頑張って病気治そうな」
天宮詩乃「うん!」
三好優弥「明日にでも買いに行こう」
天宮詩乃「うん! 絶対だよ!」
三好優弥「雨降りそうだしな 今日は帰るぞ」
天宮詩乃「はーい! 明日が楽しみ!」
〇ファンシーな部屋
天宮詩乃「ん?」
天宮詩乃「嘘でしょ?」
三好優弥「どうした?」
天宮詩乃「ゆーや」
天宮詩乃「ごめんね」
三好優弥「ん?」
天宮詩乃「指輪失くしちゃった」
三好優弥「え?」
天宮詩乃「散歩の時落としちゃったみたい」
三好優弥「また新しい買う約束したろ」
天宮詩乃「でも、あれは違うの」
天宮詩乃「私の宝物なの」
天宮詩乃「ごめん、ゆーや!」
三好優弥「わかった、探してくる」
天宮詩乃「え?」
天宮詩乃「こんな大雨なのに?」
三好優弥「大丈夫!雨の方が人が少ないから 拾われてないかもしれないだろ?」
天宮詩乃「でも!」
三好優弥「行ってくる!」
天宮詩乃「ゆーや」
天宮詩乃「うぅぅっ」
〇公園のベンチ
三好優弥「くそぉ、、どこだ」
三好優弥「あるとしたらここなんだよな」
竜崎「どうしたんすか?」
三好優弥「竜崎」
三好優弥「ちょっと探し物をしててな」
竜崎「手伝いますよ」
竜崎「ちょうど俺のダチもいるんでさ」
上杉遼羽「あんたが『路上の悪魔』? 普通じゃん」
上杉遼羽「まあ、手伝うぜ 竜崎の頼みだしな」
竜崎「ところで、探し物は?」
三好優弥「シルバーの指輪だ」
上杉遼羽「りょーかい 任せな」
竜崎「分かりやした」
三好優弥「すまない」
上杉遼羽「いいってことよ」
〇ファンシーな部屋
天宮詩乃「あれ、おかしいな」
天宮詩乃「胸が苦しい、、、」
天宮詩乃「はあはあ」
天宮詩乃「もしかして、、、」
天宮詩乃「ゆーやに会いたい」
天宮詩乃「ゆーやどこ?」
天宮詩乃「通じないや」
天宮詩乃「行かないと」
天宮詩乃「ゆーやに会わないと」
天宮詩乃「最後に、、」
〇通学路
天宮詩乃「ゆーや、どこ?」
三好双葉「お姉ちゃん! いないと思ったら!」
三好双葉「誰かぁぁ!」
〇公園のベンチ
上杉遼羽「あった! これだろ!?」
三好優弥「これだ! 間違いない!」
三好優弥「2人ともマジでありがとな!」
上杉遼羽「いいってことよ! 街の嫌われ者同士仲良くしようや」
竜崎「その通り」
竜崎「それを届けたいんでしょうが 早く行ってかまわんですよ」
三好優弥「恩にきる!」
上杉遼羽「路上の悪魔は噂とは全く違った 普通の男だったな」
竜崎「ああ、そうですな」
〇川に架かる橋
三好優弥「見つかったって 一応連絡しとくか」
三好優弥「ん?」
三好優弥「詩乃から着信」
三好優弥「水葉、双葉からもだ」
〇病室
三好優弥「おい、嘘だろ?」
天宮詩乃「さ、さいごに」
天宮詩乃「あ、え、てよかった」
三好優弥「ごめん、遅れてきて!」
天宮詩乃「わたしのじごーじとくだよ」
天宮詩乃「ず、ぶ、ぬれ、じゃん」
天宮詩乃「ご、べんね、わたしのせいで、、」
三好優弥「ほら、詩乃の指輪だぞ!」
天宮詩乃「ほ、んどだ嬉しい」
天宮詩乃「めいわく、かけて、ごめん」
三好優弥「こんなときまで他人を気にするな!」
天宮詩乃「ゆーやが、、」
天宮詩乃「そんな、に、どーよ、、して、るの」
天宮詩乃「はじ、め、 て、み、た」
天宮詩乃「わたし、て、ん、し、になるの」
天宮詩乃「ふたば、みずは、おとーさん、おかーさん」
天宮詩乃「ゆーやのこと」
天宮詩乃「ずっ、、と」
天宮詩乃「みまも」
天宮詩乃「ってるよ」
三好優弥「ダメだ! 守るのは俺の仕事だ!」
三好優弥「詩乃がいなくなったら 俺はどうすればいいんだよ!?」
天宮詩乃「ありがとね」
天宮詩乃「・・・・・・」
三好優弥「うたの?」
三好双葉「おねえちゃん!」
三好水葉「い、いやぁぁ」
三好優弥「うたの!」
三好優弥「ああああああああああ!」
〇ファンシーな部屋
三好優弥「・・・・・・」
三好葉月「部屋はこのままにしときましょう」
三好優作「優弥、大丈夫か?」
三好優弥「ああ」
三好葉月「優弥、ずっとご飯食べてないんじゃないの?」
三好優弥「そういえば、最後にいつ食べたっけな」
三好優作「下でご飯食べてきなさい」
三好優作「何かしら食べ物があるだろ」
三好優弥「ああ」
〇明るいリビング
三好双葉「あんたが」
三好優弥「ん?」
三好双葉「あんたがあの日、家にいれば お姉ちゃんはもう少し生きれたんだ!」
三好双葉「あんたのせいで お姉ちゃんは死んだんだ!」
三好優弥「いや、俺はすぐに帰ってくるつもりだったんだ」
三好双葉「そんな言い訳なんて聞きたくない!」
三好水葉「双葉!」
三好水葉「お兄ちゃんは何も悪くない!」
三好水葉「お兄ちゃんはお姉ちゃんのために 頑張ってたんだから」
三好双葉「そんなの関係ない!」
三好優弥「俺のせいだ」
三好水葉「お兄ちゃんどこ行くの!?」
〇通学路
三好優弥「詩乃、どこにいるんだ」
三好優弥「お前がいない世界で 俺はどうやって生きていけばいいんだ」
三好優弥「あのとき、俺が家にいれば、、」
三好優弥「あのとき、どうして電話に 気付かなかったんだ、、」
三好優弥「そしたら、詩乃はまだ、、、」
〇公園のベンチ
三好優弥「・・・・・・」
三好優弥「俺のせいだ」
三好優弥「なんであのとき、家を出たんだ」
三好水葉「お兄ちゃん、探したよ」
三好水葉「今、お父さんとお母さんも 街中お兄ちゃんを探してるよ」
三好優弥「放っておいてくれ」
三好水葉「双葉のことなら 気にしないでいいよ」
三好水葉「ちゃんと言っといたから」
三好水葉「双葉も感情のやり場に困ってるんだよ」
三好優弥「双葉の言うことは間違っちゃいない」
三好優弥「むしろ、あれぐらい言われないとな」
三好水葉「お願いだから自分を責めないで!」
三好水葉「私も双葉もお父さんもお母さんも」
三好水葉「みんなお姉ちゃんの異変に 気づかなかったんだから!」
三好水葉「同罪だよ!」
三好優弥「俺はあいつの恋人だったのに 一番の理解者だったのに」
三好水葉「2人がそう言う関係だって 何となく気付いてた」
三好水葉「正直嬉しかったよ 2人とも両想いで結ばれたんだからね」
三好水葉「お姉ちゃんはきっと幸せだったはずだよ」
三好水葉「お兄ちゃんみたいな優しくて 強くてカッコいい恋人がいてね」
三好優弥「何もしてやれてない」
三好水葉「そんなことないよ」
三好水葉「お兄ちゃんはお姉ちゃんを 守ってきたじゃない」
三好水葉「お兄ちゃんいなかったら お姉ちゃんは生きていけなかったはずだよ」
三好水葉「ねえ、お願い 帰ろう?」
三好水葉「お兄ちゃんも失いたくない」
三好優弥「ああ」
〇明るいリビング
三好水葉「ずぶ濡れじゃん」
三好優弥「あいつの苦しみに比べたら こんなの何でもないだろ」
三好水葉「またそんなこと言って」
三好双葉「どの面下げて戻って来たの?」
三好優弥「・・・・・・」
三好双葉「あんたのことなんか もう兄なんて思わない」
三好双葉「あんたが死ねば良かったんだ!」
三好水葉「双葉! さすがにそれは聞き逃せない!」
三好水葉「お兄ちゃんはね!」
三好水葉「いつも自分を犠牲にして お姉ちゃんを守って来たんだよ!」
三好水葉「あの日だってお姉ちゃんのために!」
三好双葉「でも、お姉ちゃん死んじゃったじゃない!」
三好優弥「もういいんだ」
三好優弥「お前たちまで喧嘩するな」
三好優弥「あいつはそんなこと望んでない」
三好優弥「俺がいなくなればいいだけだ」
三好水葉「お、おにいちゃん」
三好優弥「部屋に行くわ」
三好水葉「まずはシャワー浴びて」
三好優弥「あ、そう、か」
三好水葉「お、お兄ちゃん!」
〇病室
三好優弥「・・・・・・」
三好優弥「ここは?」
三好水葉「お兄ちゃん!」
三好優弥「おお、水葉」
三好水葉「良かった、目を覚ました」
三好優弥「何で病院にいるんだ?」
三好水葉「お兄ちゃん、家で倒れて 3日間眠ってたんだよ」
三好優弥「3日も!?」
三好優弥「なんで、そんなに寝てたんだ?」
三好水葉「覚えてないの?」
三好優弥「ああ」
三好水葉「お兄ちゃん、しばらくは お姉ちゃんのことは考えないようにね」
三好優弥「お姉ちゃん?」
三好優弥「誰だよそれ」
三好水葉「え? どうしたの?」
三好水葉「冗談?」
三好水葉「笑えないんだけど」
三好優弥「だから、そのお姉ちゃんって誰のことだよ」
三好優弥「俺たちは三兄妹だろ?」