燻製(脚本)
〇オフィスのフロア
・・・
カチャカチャカチャ
カチャカチャカチャ
カチャカチャカチャ
ありさ「ことねってさあ、」
ことね「はい」
ありさ「結局なにもかもスモークすれば美味しくなるんじゃね? って思ったことある?」
ことね「・・・はい?」
ことね「もしかして先輩、 納期ヤバすぎてイカれました?」
ありさ「そうじゃなくてさ・・・」
ありさ「昨日コンビニでいぶりがっこ買ったらさ、 それはもうとんでもなく美味しかったわけよ」
ありさ「で、思ったの。 もしかして燻製が最強なんじゃね・・・?」
ことね「あー、なるほど。 確かに燻製は美味いっすよね。 私もチーズとか大好きです」
ありさ「そうそう。 いいよねえ。 で、それとなに飲むの? ビール? ワイン?」
ことね「ハイボールっすかねえ」
ありさ「いいねえ。ハイボール。 ウイスキーの種類はどうする?」
ことね「ええ・・・? ウイスキーの種類っすか?」
ことね「詳しくないからなあー。 ウイスキーも燻製風味のやつとかあるんでしたっけ?」
ありさ「そうなんだよなー! それもまたスモーキーでさあ!」
ことね「へえ・・・いいですね・・・」
ありさ「煙くっさいんだけどさ、 それがまた美味しいんだよ」
ありさ「ラフロイグなんて、最初は正露丸かと思ってたんだけど、 いつの間にか病みつきになっちゃってさあ」
ありさ「ハイボールも香りが立つからいいけど、 ストレートでゆっくり飲むのも味わい深いからなあ」
ことね「へえ・・・いいですね・・・」
ありさ「・・・」
ありさ「・・・」
ありさ「・・・ま、お酒はね、人生の嗜みだからね、 君も若いうちにたくさん勉強しておいた方がいいよ」
ことね「・・・はい?」
ありさ「でも、ま、 次の日に残らない程度にね!」
ありさ「くわぁっはっはっはっは!」
ことね「・・・」
ありさ「・・・」
ことね「・・・」
ことね「・・・なんで途中から、大原部長のマネし始めたんすか?」
ありさ「・・・」
ことね「もしかして・・・」
ことね「私にウイスキーについて語ってる最中に、 自分がめちゃくちゃおっさん臭いこと言ってることに気がついて・・・、」
ことね「大原部長をモノマネすることで、 おっさん発言を冗談めかして、 なんとか逃げようとしましたね!!」
ありさ「いやあ! 言わないで!」
ありさ「・・・」
ありさ「そんなつもりはなかったの・・・ ただ、ただ美味しいものを求めていたら・・・」
ありさ「いつの間にか、大原部長みたいなおっさん臭いことを言ってしまっていたのよ・・・!!」
ありさ「もうカシオレや、カルピスサワーじゃ満足できない身体になってしまったの・・・!!」
ことね「・・・」
ことね「先輩、 あなたの罪は二つあります」
ことね「一つは自分のおっさん臭い発言を誤魔化そうとしたこと・・・」
ことね「そしてもう一つは、 この場にいない大原部長を、おっさんおっさんと連呼して、巻き込んだことです・・・!!」
ありさ「・・・私、そんなつもりじゃ・・・!」
ことね「詳しくは署で聞かせてもらおう・・・」
ありさ「・・・・・・はい」
ことね「21時37分、 おっさんすぎる罪で、 白石ありさ逮捕!!!」