過去編第7話『異変』(脚本)
〇公園のベンチ
三好優弥「あー、詩乃が来るまで暇だぁ」
竜崎「あんたが三好か?」
三好優弥「そうだけど」
竜崎「ちょっと手合わせしてくんねえか?」
三好優弥「やだ」
竜崎「喧嘩無敗の『路上の悪魔』って言われてる あんたと勝負したかったんだ」
三好優弥「だから、やだって言ってんだろ」
三好優弥「痛いのは嫌いなんだ」
竜崎「嘘つけ あんたに喧嘩を売って 傷を付けることができたやつはいない」
三好優弥「いや、そいつらが下手なだけだ」
竜崎「言うじゃん」
竜崎「避けやがったか」
三好優弥「見え見えだろ」
竜崎「やるじゃねえか」
三好優弥「わかった、やってやる」
三好優弥「ただ俺が勝ったら その口の聞き方やめろ」
竜崎「いいぜ、もし俺が負けたら 今後誰に対しても敬語にしてやるよ」
三好優弥「約束だぞ」
竜崎「いい蹴りだな」
竜崎「普通なら避けれなくて 肋骨折れてるかもな」
三好優弥「確かにな」
三好優弥「まともに受け止めたのは あんたが初めてだ」
竜崎「あんたは変な古武術を 使うらしいな」
三好優弥「変な古武術じゃない」
三好優弥「有馬流活殺術だ」
竜崎「聞いたことないな」
三好優弥「マイナーだからな」
竜崎「俺は喧嘩空手を学んでる」
竜崎「それで強いやつと 戦いたくて仕方ないんだ」
三好優弥「良い感じに狂ってるな」
竜崎「どうも」
竜崎「また避けやがった」
竜崎「なぜやり返してこない」
三好優弥「あんたからはさ 他の奴らと違って 純粋な闘志しか感じないんだよな」
三好優弥「弱い者いじめはしないタイプだろ? そういう人間好きなんだよ」
竜崎「何言ってんだか 俺は嫌われもんだ」
三好優弥「奇遇だな 俺も嫌われものなんだ」
三好優弥「だから、敬意を示す」
三好優弥「次は俺がいくぞ」
三好優弥「はい、終わり」
竜崎「あーあ 負けちまったな」
竜崎「あんな簡単に投げ飛ばされて 最後に一発もらうなんてな」
三好優弥「これまで喧嘩してきた中で あんた1番強かったよ」
竜崎「冗談はやめろ」
竜崎「掠るぐらいしか出来なかったぞ」
竜崎「あ、そうだったな」
竜崎「冗談はやめてくれさいよ」
三好優弥「敬語下手くそすぎだろ」
竜崎「また強くなったら相手してくだせえよ」
三好優弥「気が向いたらな」
天宮詩乃「お待たせ! って!」
天宮詩乃「また喧嘩してる?」
三好優弥「戯れてただけだ」
天宮詩乃「その割にはこっちの人 顔面にあざが出来てるんだけど」
竜崎「三好は悪くないですぜ」
竜崎「俺から喧嘩売ったんですよ」
天宮詩乃「弱い者いじめしちゃダメだって 言ってるでしょ!」
竜崎「弱い者いじめか 確かに俺は弱い者になっちまったな」
天宮詩乃「これからも ゆーやと仲良くしてくださいね この人友達いないから」
竜崎「そんなこと言われたのは 初めてですな!」
三好優弥「こら、誰が友達いないだ」
天宮詩乃「実際いないだろ!」
竜崎「面白ぇわ、まあ似た者同士なのは 確かだからですね」
竜崎「じゃあ、俺はこれで帰ることにしますわ」
竜崎「楽しませてもらいましたな」
三好優弥「詩乃、あれほど喧嘩のときは 関わってくるなって言っただろ」
天宮詩乃「いや、普通に見過ごせないから」
天宮詩乃「あとちゃんと状況把握してるから 大丈夫だよ」
三好優弥「ならいいけどな」
天宮詩乃「はは」
三好優弥「詩乃!」
天宮詩乃「ギリセーフ ありがとう」
三好優弥「体調悪いのか?」
天宮詩乃「最近ちょっと体調悪いんだよね 風邪だと思うんだけど」
天宮詩乃「何だかんだ、間に入るのは 緊張するからね」
三好優弥「病院いくか?」
天宮詩乃「大丈夫!」
天宮詩乃「たまにあることだし」
〇ファンシーな部屋
天宮詩乃「そういえば、ゆーや」
三好優弥「ん?」
天宮詩乃「旅行どこ行く?」
三好優弥「旅行?」
天宮詩乃「そう、この前貰った旅行券使わないと」
天宮詩乃「すぐ使わないと!」
三好優弥「そんな慌ててどうしたんだよ」
天宮詩乃「もう夏休み終わっちゃうし 受験勉強もあるんだから!」
三好優弥「まあ、そうだな」
三好優弥「親父たちに許可を取らないとな」
〇明るいリビング
天宮詩乃「というわけなんだけど 旅行行っていいかな?」
三好優作「まあ、いいんじゃないか?」
三好葉月「そうね 本当なら家族みんなで行きたいけど 連休取れないしね」
三好優作「今の年齢のうちから 子供だけで旅行するのも 社会経験だしな」
天宮詩乃「ということはいいの?」
三好葉月「ええ、楽しんでらっしゃい」
三好優作「もちろん、羽目を外さないようにな」
天宮詩乃「うん! ありがとう!」
天宮詩乃「ゆーやにも伝えてくるね!」
三好葉月「大丈夫かしらね」
三好優作「何を心配してるんだ?」
三好葉月「あの2人も年齢が年齢だし」
三好葉月「間違いが起きないか心配だわ」
三好優作「詩乃はそういうことは ちゃんと理解してるはずだ」
三好優作「2人の意思を尊重しよう」
三好優作「それは何度も話し合ってきたはずだ」
三好葉月「確かに、その通りね」
〇シンプルな玄関
天宮詩乃「じゃあ、行ってくるね!」
三好優弥「1泊2日だからすぐだけどな」
三好葉月「楽しんでらっしゃい」
三好優作「気をつけていくんだぞ」
三好水葉「お兄ちゃんとお姉ちゃんだけずるい!」
三好双葉「楽しんできてね」
天宮詩乃「今度は家族みんなで行こうね」
三好水葉「約束だよ!」
天宮詩乃「はいはい」
〇電車の座席
天宮詩乃「移動も旅行の醍醐味だよね」
三好優弥「まあな」
三好優弥「なあ、いつもとお前 様子違くね?」
天宮詩乃「そ、そんなことないし!」
天宮詩乃「どうして、そう思うの?」
三好優弥「いつもと服が違うしな」
天宮詩乃「変なところは鋭い」
天宮詩乃「特別オシャレとかしたわけじゃないし!」
天宮詩乃「浮かれてるだけだし!」
〇温泉旅館
天宮詩乃「無料の割には本格的な旅館」
三好優弥「そうだな」
〇旅館の受付
女将「ようこそ、当旅館へ」
女将「三好様でございますね ご予約を承っております」
天宮詩乃「お世話になります!」
三好優弥「なります!」
(なんで、メイド服)
女将「それではお部屋はご案内いたします」
〇古民家の居間
女将「こちらがお部屋になります」
天宮詩乃「へえ、すごい!」
三好優弥「情緒あっていいな」
女将「評判いいんですよ」
女将「あちらが寝室になります」
〇ダブルベッドの部屋
女将「こちらが寝室です」
天宮詩乃「なぜ、急に洋室に」
女将「外国人のお客様もいらっしゃいますので こちらもご用意させていただいております」
天宮詩乃「しかも、ダブルベッド」
三好優弥「でかいな」
天宮詩乃「そうじゃないだろ! もっと違うこと考えろ」
女将「お若いお2人がお泊まりになると お聞きしたのでベッドが よろしいかと思いました」
三好優弥「ありがとうございます!」
天宮詩乃「少し違和感持たないのか」
女将「温泉もございますが 24時間入浴が可能ですので ぜひお楽しみください」
天宮詩乃「ありがとうございます!」
女将「以上で説明は終わりです お夕食はレストランにご用意しております」
女将「あと本日は花火大会がございますので もしよろしければ御夕飯後に 見に行ってはいかがでしょうか」
天宮詩乃「ありがとうございます!」
〇古民家の居間
天宮詩乃「ダブルベットは予想外だわ まあ、布団借りてここに敷けばいいんだけど」
三好優弥「あれか? 俺たち苗字違うから勘違いされたのか?」
天宮詩乃「何に?」
三好優弥「恋人同士に」
天宮詩乃「いやいや! 住所一緒だし!」
三好優弥「焦ってる詩乃なんて珍しいな」
天宮詩乃「もう!」
天宮詩乃「折角だから散歩行こう」
三好優弥「そうだな、まだ昼前だしな」
〇城
天宮詩乃「へえ、お城なんてあったんだ」
三好優弥「すげえ!」
天宮詩乃「ゆーや、お城とか好きだもんね」
天宮詩乃「歴史番組とかたまに見てるし」
三好優弥「歴史はロマン オカルトはファンタジーだからな」
天宮詩乃「オカルトはファンタジー分かってるじゃん」
三好優弥「何年一緒にいると思ってんだ」
天宮詩乃「人生の半分!」
〇露天風呂
天宮詩乃「本格的な温泉なんて初めて」
天宮詩乃「しかも、貸切状態」
天宮詩乃「旅行に来たものの 常に一緒だから作戦練る時間がない」
天宮詩乃「さて、ゆーやにいつ告るかな」
天宮詩乃「タイミング大事だよね」
天宮詩乃「ゆーや、どんな反応するかな」
天宮詩乃「これでフラれたらどうしよう」
天宮詩乃「そうなったら ただの妹みたいになっちゃうよね」
天宮詩乃「そうしたら、三好家の籍に 入れてもらおうかな」
天宮詩乃「んー、でも、ゆーやが知らない人と 結婚することなんてなったら 結婚式行けないや」
天宮詩乃「どうして! 嫌なことばかり考えちゃうの!」
天宮詩乃「絶対成功する!」
天宮詩乃「それにしても」
天宮詩乃「赤の他人のはずなのに 兄妹みたいに仲良く育ったのに 恋人同士になりたいなんてさ」
天宮詩乃「不思議だよね」
天宮詩乃「あ、」
天宮詩乃「ゴホゴホ!」
天宮詩乃「あれ? 変な咳出るな」
天宮詩乃「はあはあ」
天宮詩乃「最近、やけに胸が苦しい」
天宮詩乃「風邪引いちゃったかな」
〇温泉街
三好優弥「浴衣持ってきたんだな」
天宮詩乃「あ、うん! まあね! 温泉街だからね!」
三好優弥「温泉旅館に泊まるんだから 浴衣は貸してくれるだろ」
天宮詩乃「え、えっと!」
三好優弥「花火大会があったの知ってたな?」
三好優弥「だから、急いで旅館予約したんだろ?」
天宮詩乃「ぐぐぐ、さすが鋭い」
天宮詩乃「そ、そうよ! 悪い?」
三好優弥「いや、似合ってるぞ」
天宮詩乃「え?」
三好優弥「その浴衣、新しいやつだろ?」
天宮詩乃「うん!」
三好優弥「ていうか、人多いな」
三好優弥「手繋ぐか?」
天宮詩乃「えっ!?」
三好優弥「ほら」
天宮詩乃「うん!」
三好優弥「これで、はぐれないな」
天宮詩乃「そうだね」
〇花火大会の観覧席
天宮詩乃「旅行の特典でね 花火大会の席も用意してくれるの」
三好優弥「おお、凄いな!」
天宮詩乃「でしょ!」
天宮詩乃「座ろう」
三好優弥「ああ」
〇空
〇花火大会の観覧席
天宮詩乃「花火綺麗だね!」
三好優弥「そうだな」
三好優弥「来年も来たいな」
天宮詩乃「そうだね! 来年は高校生だけど絶対来ようね!」
三好優弥「ああ、毎年旅行したいな」
天宮詩乃「うん!」
〇温泉街
三好優弥「凄かったな! これだけでも来た価値はあったよな」
天宮詩乃「・・・・・・」
三好優弥「詩乃、どうした?」
天宮詩乃「ねえ、ゆーや、もう少しだけ散歩しない?」
三好優弥「ああ、いいけど」
〇神社の石段
三好優弥「神社か」
三好優弥「お参りでもするのか?」
天宮詩乃「違うの」
天宮詩乃「ねえ、ゆーやに聞いてほしいことあるの」
三好優弥「ん?」
天宮詩乃「え、えっと」
天宮詩乃(なんで、言えないの!?)
天宮詩乃(なんで! なんで!)
三好優弥「・・・・・・」
三好優弥「なあ」
天宮詩乃「はい!」
三好優弥「詩乃、俺と付き合ってくれ」
天宮詩乃「え?」
三好優弥「お前のことが好きだ」
三好優弥「俺と恋人同士になってくれ」
天宮詩乃「・・・・・・」
三好優弥「返事は?」
天宮詩乃「はい! もちろん!」
天宮詩乃「本当は私から告白しようとしてんだよ」
三好優弥「知ってた」
天宮詩乃「えっ!?」
三好優弥「何年一緒に暮らしてると思ってんだ」
天宮詩乃「ばれてたのか」
三好優弥「ずっと様子おかしかったし やけに色気立ってたし」
天宮詩乃「んー、なんか悔しい」
三好優弥「女に恥はかかせられないからな」
天宮詩乃「まったく、変なところ 男らしいんだから!」
〇ダブルベッドの部屋
天宮詩乃「じゃあ、寝ようかな」
三好優弥「俺は座敷で寝るわ」
天宮詩乃「いいじゃん! 一緒に寝よう!」
三好優弥「はあ?」
天宮詩乃「何? その反応?」
天宮詩乃「いいじゃん! 恋人同士なんだから!」
天宮詩乃「家だと一緒に寝れないからね」
三好優弥「まあ、仕方ねえな」
天宮詩乃「素直でよろしい」
三好優弥「一緒に寝るなんて 小学5年生の時以来か」
天宮詩乃「そうだね」
三好優弥「詩乃、心霊番組好きなくせに 夜なると怖くて1人で寝れなかったもんな」
天宮詩乃「そ、そんな前の話!」
天宮詩乃「水葉と双葉には恥ずかしいから ゆーやの布団に入ってたのは 内緒だからね!」
三好優弥「はいはい」
天宮詩乃「まあ、いい思い出だけどね」
三好優弥「そうだな」
天宮詩乃「安心したら眠くなってきちゃった」
三好優弥「俺も」
天宮詩乃「もっと話ししたいのに」
三好優弥「これから毎日話せるさ」
天宮詩乃「う、うん、そ、うだね」
天宮詩乃「もっと近寄っていい?」
三好優弥「ああ」
天宮詩乃「おやすみ」
三好優弥「おやすみ」