最果てのアイランド

YO-SUKE

第三話 「生贄」(脚本)

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〇木造の一人部屋
花笠海斗「はあ・・・」
花笠海斗(あれから秋良とは 連絡が取れなくなってしまった)
花笠海斗(家に行っても、もぬけの殻みたいで 人の気配がなかった)
花笠海斗(6月に子どもが生まれる・・・)
花笠海斗(たったそれだけのことで、 あんなに怯えるなんて、 やっぱりこの島は何かがおかしい)
花笠舞「お兄ちゃん。お父さんが呼んでる」
花笠海斗「ノックくらいしろよ」
花笠舞「出かけるって。私も一緒に」
花笠海斗「みんなで?」
花笠舞「この島の村長から呼び出しが あったんだって。家族全員」
花笠海斗「呼び出し? 家族全員?」
花笠舞「わざわざ日曜日に呼び出すなんてどうか してるよね。私、ゲームしたかったのに」
花笠海斗「あの村長が・・・」

〇広い和室
  豪華な食事が並べられている。
花笠亮平「どうも。遅くなりすみません」
胡桃沢千治「これはこれは花笠家のみなさん。 ようこそいらっしゃいました。 皆さーん、主役たちのお出ましですよ」
島民1「亮平さんは東京じゃ売れっ子の 作家なんですよね? すごいなぁ」
花笠亮平「う、売れっ子!?」
島民2「海斗くんは学校で人気者なんでしょ? すごいわねぇ」
花笠海斗「いや、そんなことはないかと・・・」
胡桃沢千治「舞さん待ってましたよ。 君は今や島で一番の有名人だ」
花笠舞「あの、なんで私たち呼ばれたんですか? 用件だけ言ってもらえます? さっさと帰ってゲームしたいんですけど」
花笠海斗「ま、舞! 棘のある言い方をするな」
胡桃沢千治「ははは。まあそれは追々お話しますよ。 さあさあ、皆さん席について。 今日はお祝いの日ですから」

〇広い和室
花笠舞「お兄ちゃん・・・ この島の人たちって距離感近すぎない? さすがにうっとうしいよね?」
花笠海斗「だからこないだから言ってるだろ? この島はおかしいんだって」
花笠舞「だいたいお祝いってなんなの? 私たちの歓迎会ってこと? 歓迎会でここまでやる?」
花笠亮平「こら! 海斗、舞! お前たちも楽しんでるか?」
花笠亮平「いや、楽しめ! がはは」
花笠舞「はぁ・・・お父さんはただのめんどくさい 酔っ払いになっちゃったし」
胡桃沢千治「はい、皆さん。 それでは改めまして、今回村の議会で 決定したことを発表したいと思います」
胡桃沢千治「本年度の栄えある生贄に 選ばれたのは・・・」
胡桃沢千治「花笠舞さんです。おめでとう!」
花笠海斗「! 生贄・・・?」
花笠舞「何それ、どういうこと?」
胡桃沢千治「今回も数多くの候補者がいましたが・・・ 最終的に舞さんに決定しました!」
島民1「おめでとう! いやぁ、今年こそは うちの娘をって思ってたんだけどな」
島民2「名前がマイ様と同じで、 こんなにかわいいんだもん」
島民2「島に来て日が浅くても、 誰も文句言えないわよね」
花笠海斗「ちょ、ちょっと待ってください! あの、生贄ってなんですか?」
花笠亮平「こら、海斗。お前もこっちに来て一杯飲め」
花笠海斗「お父さんは黙ってて!」
花笠舞「私、生贄に選ばれたらどうなるんですか?」
胡桃沢千治「この島の守り神・・・マイ様に最も 近しい存在になるということだね」
花笠海斗「そ、それって。つまり──」
胡桃沢千治「まあ固い話はいいでしょう。さあ皆さん、 今日は精一杯楽しみましょう!」
花笠舞「お兄ちゃん・・・これって・・・」
花笠海斗「くっ・・・」

〇海辺
花笠舞「もう! お父さん、酔っ払いすぎ!」
花笠亮平「す、すまん・・・」
花笠海斗「そんなことよりどうしよう・・・ 生贄のこと、結局聞き出せなかった」
花笠舞「お兄ちゃん。どう思う?」
花笠海斗「生贄って、神様に生き物を供えることだろ」
花笠海斗「人間が生贄になるなんて、 そんなことあるのか」
花笠亮平「ないことは・・・ない。 人身御供といって、かつては人間を 生贄として供える慣習もあった」
花笠海斗「! じゃあ舞は──」
花笠亮平「だがそんなのはあまりに古い慣習だ。 この現代にあるわけないだろ」
花笠海斗「でもさっき舞が生贄に選ばれたって」
花笠亮平「あれはこの島の隠語かなにかだろ。 調べればすぐにわかる」
花笠海斗「やっぱり・・・秋良だ。 秋良に聞こう。家がこの近くなんだ。 みんなで寄ってみようよ」
花笠亮平「秋良って・・・ お前がこないだ話していた友達か」

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