最果てのアイランド

YO-SUKE

第一話 「夢の島の住人たち」(脚本)

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〇怪しげな祭祀場
男1「我らが救世主。 その神力で持って災いを祓いたまえ」
男2「この島に永遠の安らぎと平穏を」
  中央の台座に少女と思しき女の子が、
  シルクの布を纏って眠っている。
僧侶「この穢れなき少女を、 生贄としてマイ様に捧げる・・・!」
  この島には異様な風習や
  しきたりがたくさんある
  だが、僕たち家族は何も知らないまま
  島への移住を決めた
  そこに悪魔たちが待ち構えているとも
  知らずに

〇島
  『最果てのアイランド』

〇豪華なクルーザー
花笠海斗「はぁ・・・引っ越しか」
花笠亮平「海斗。溜息をつくと幸せが逃げるぞ」
花笠海斗「お父さんはいいよね。田舎の島に行けば 好きなだけ籠って小説書けるし」
花笠亮平「まあな・・・って、 俺はどちらかというとお前のためを 思って移住を申し込んだんだけどな」
花笠海斗「分かってるよ。ありがとう」
  花笠亮平(はながさりょうへい)
  僕の父はそこそこ売れている作家だ
  パソコンさえあればどこでも仕事ができる
  という父の後押しもあり、
  僕たちは南舞島への移住を決めた

〇島
  南舞島(みなみまいじま)は本州から
  南方千㎞のところにある陸の孤島だ
  空港はなく、5日に1度出る
  大型船でしか渡航ができない
  島の移住には厳しい審査があり、移住待ちの人がたくさんいる夢の島だという
  僕たちは運よく抽選で選ばれたのだ

〇豪華なクルーザー
花笠亮平「まあ心配すんな。 島ならすぐにお前にも友達ができる」
花笠海斗「根拠はどこにあんだよ」
花笠亮平「島育ちの人間はみんな開放的で 友好的って相場が決まってる」
花笠海斗「そんなの根拠にならない──」
  口ではそう言いつつ、
  本心では父に感謝していた
  東京にいた頃、僕は一ケ月で
  不登校になってしまったから
  そして僕のもう一人の家族は──
花笠舞「お兄ちゃん! なに辛気臭い顔してんの?」
  花笠舞(はながさまい)
  中学生になったばかりの妹だ
  自由人で、破天荒で、喧嘩っぱやいのが
  傷だが、兄の僕から見ても相当かわいい
  部類だとは思う
花笠海斗「! な、なにこれ?」
花笠舞「まさか火事!?」
船長「お客様にお知らせします。ただいまから 5分間、お祈りの時間と致します。 南舞島の島民の方は──」
花笠海斗「お祈り・・・?」
  乗客の半数が、その場に膝をついて
  ブツブツと何かを唱えている。
花笠海斗「な、なんだよ・・・これ」
花笠亮平「ふむ。 イスラム教の祈りみたいなものかな」
花笠亮平「島には独自の文化が根付いていると 言うが・・・これは面白そうだ」
  父は作家の血が目覚めたらしく、
  目をキラキラさせてる
  だが、僕には不気味な何かが
  始まったようにしか見えなかった

〇教室
花笠海斗「花笠海斗(はながさかいと)です。 東京から来ました」
花笠海斗「よろしくお願いします!」
男子生徒「ようこそ南舞島へ! わかんないことはなんでも聞いてくれ!」
女子生徒「結構イケメンじゃん! 東京のことも色々教えてね!」
花笠海斗「え? あ、どうも・・・」
冴島恭介「俺、冴島恭介(さえじまきょうすけ)」
冴島恭介「良かったら俺を お前の友達第一号にしてくれ!」
花笠海斗「う、うん!」
花笠海斗(こんなにみんな 歓迎してくれるなんて・・・)
花笠海斗(お父さんの言う通りだったなぁ)
花笠海斗「!?」
堂島秋良「クラスメイトを信用するな」
花笠海斗「え?」
堂島秋良「いやクラスメイトだけじゃない。 この島の全ての人間だ」
花笠海斗「・・・?」

〇田園風景
老婆「花笠海斗くん。こんにちは」
花笠海斗「あ、え・・・こ、こんにちは」
花笠海斗「なあ、恭介くん。 なんであの人は僕の名前を知ってるんだ」
冴島恭介「恭介でいいよ。友達だろ」
花笠海斗「あ、そうか。ごめん」
冴島恭介「島に移住してくる人は多くないしな。 君たちのことは島民みんな知ってる。 それに──」
花笠海斗「え? どういうこと?」
老婆「マイ様ぁぁ!」
  老婆が仏を拝むように
  舞に頭を下げている。
老婆「嗚呼・・・! マイ様! ありがたや!」
花笠舞「ちょ、ちょっとなんなの」
花笠海斗「大丈夫か?」
花笠舞「うん。なんか変なおばあさんが 急に声かけてきて・・・」
花笠舞「お兄ちゃん学校帰り? 隣りにいるのはお友達?」
花笠海斗「ああ。恭介くん・・・ じゃない、恭介が島を案内してくれるって」
冴島恭介「良かったら舞ちゃんも一緒にどう?」
花笠舞「やったー!」
花笠舞「ってあれ、私、自己紹介したっけ?」
冴島恭介「あはは。舞ちゃんはこの島の神様と 同じ名前だからね」
花笠海斗「神様・・・?」
  恭介が道の端に立っている
  少女の銅像を指さす。
花笠舞「あ、これ島の色んなところで見た」
冴島恭介「これがマイ様さ。この島ではマイ様を 讃えるマイ信仰が根付いているんだ」
花笠舞「へー。マイ様か。なんか自分のこと 言われてるみたいで気分悪くないかも」
花笠海斗「バカ。調子に乗るな」
冴島恭介「祈り時間だ。5分間、私語禁止だ」
  恭介はそう言うと、
  その場に膝をついて祈りを唱え始める。
花笠舞「またぁ?」
花笠海斗「おい恭介。祈りっていうのは──」
冴島恭介「黙れ! 私語禁止だと言っただろ! マイ様に失礼だ!」
花笠海斗「ご、ごめん」
  人が変わったように熱心に祈りを捧げる
  恭介を見て、僕は妙な胸騒ぎを感じずには
  いられなかった

〇学校の校舎
教師「この愚か者が! 恥を知れ!」
堂島秋良「くっ・・・!」
花笠海斗「なっ・・・! あれは確か後ろの席の」
冴島恭介「堂島秋良(どうじまあきら)だ。 三年前にこの島に移住してきた」
花笠海斗「血が出るまで叩かれて・・・ あいつ何したんだ?」
冴島恭介「教師に・・・嘘をついた」
花笠海斗「は?」
冴島恭介「授業のプリントが見つからずに 家に忘れたと言ったらしいんだ」
冴島恭介「だが、プリントは鞄の奥から出て来た」
冴島恭介「つまり、結果的に 嘘をついたことになったんだ」
花笠海斗「それだけ? そんなの悪意はないだろ? ただの不注意じゃないか」
冴島恭介「マイ信仰において、 年上に嘘をつくのは赦されないんだ」
  涼しい顔でそう言う恭介を見て、僕は
  背筋に冷たいものが落ちたような気がした
  だがこれはまだ始まりに過ぎなかった。
  この日から、僕たち家族はこの島の恐怖を
  心底痛感させられるのだった

次のエピソード:第二話 「島のルール」

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