偶然は『SANTA』に落ちている(脚本)
〇渋谷のスクランブル交差点
街に輝くイルミネーションを横目に、
スマホをカバンから取り出す。
画面を確認すると、そこには
『SANTAスタッフがご指定の場所でお待ちしております。見た目は黒髪に茶色のコートです。貴女の思い出になりますように』
というメッセージが書かれてあった。それを見て、私は・・・・・・
聖夜には似つかわしくないため息を盛大に吐いた。
〇黒
ため息の理由については、
二週間前まで遡る。
あれは、昼休みの出来事であった。
〇学食
私は、ゼミで仲良くなった友人
美香と雪の3人で食堂に来ていた。
そこで、クリスマスの予定の話題になったのだ。
〇黒
-回想-
〇学食
美香「あーもう、クリスマス、 バイトしかない!!出会いが欲しい!!」
私「っ、ごほっ・・・・・・ごめん。 びっくりしちゃって」
雪「こら、ミカ。急に大声を出すから、 ナツが驚いちゃったじゃん」
美香「あー、ごめんごめん。ナツ、大丈夫? 話してもいい?」
私「私は、大丈夫。話、続けていいよ」
雪「いや、ナツ。もっと美香に言ってやってもいいからね」
美香「ちょっと、何よそれぇ~。 ユキはもっと私に優しくしてくれても いいのよ」
雪「はいはい」
美香「はいはいって・・・まぁ、良いや」
美香「そんなことより、何で私はクリスマスに カップルにケーキを売らないといけない わけ!?」
私「本当に寒い中お疲れ様だね。バイト先、 ケーキ屋さんだもんね」
美香「そーなの。自分で選んだって言われたら、それまでなんだけどさぁ。二人は、何か 予定あるの?」
雪「私は、デートでーす。彼氏とディナーに 行ってきまーす」
美香「だよねぇ~。ユキには彼氏がいるもんね。いーなぁー。ナツは?」
私「私は・・・・・・バイトも無いし、 特に予定はないかな。いつも通り過ごす つもり」
美香「えっ、じゃあ、ケーキもチキンも、自分用のプレゼントも買わないの!?」
私「んー、クリスマスを楽しみたい気持ちは あるんだけど、求める程、 特に欲は無いんだよねぇ・・・・・・」
雪「ナツ、私達まだ20代なんだよ。 もうちょっとはしゃいでも いいんじゃない?」
美香「そうだよ!! えー、何かナツがはしゃげそうなもの ないかなぁ・・・・・・」
美香「あっ!!」
雪「今度は何?」
美香「いや前に誕生日の時あまりにも寂しくて、使ったアプリがあってさぁ、 『SANTA』っていうヤツ」
私「何それ?」
美香「アプリで欲しい物を注文して、 渡してほしいシチュエーションを指定すると、その通りにプレゼントを渡してくれるの」
雪「それって、例えば彼氏からのプレゼント風にしてくださいって注文すれば、 叶えてくれるって事?」
美香「そう!!最初このアプリの話を聞いた時、 何か胡散臭いし、正直通販で良くない?って思ったんだけど、」
美香「初回無料だったし、面白半分で使ってみたの」
美香「因みに注文は『A公園前で待ち合わせ 彼女に渡すような感じでお願いします』って感じだったかなぁ」
私「それで、どうだったの?」
美香「おっ、興味がある感じ? それがさぁ、もう最高だった」
美香「超イケメンが待ち合わせ場所に居て、 理想的な感じでプレゼントしてくれたの~。 ホストに嵌る人の気持ちが分かった気がする」
雪「へぇ~、そんなに良かったんだ」
美香「だからさぁ、ナツもやってみたら? 長い時間一緒に居るわけじゃないから、 そこまで身構えなくてもいいし、」
美香「しかも初回無料だし。 クリスマスプレゼントとしてさぁ」
私「確かに、面白そうではあるけど・・・ 考えとく」
〇黒
‐回想終了-
〇黒
私は、会話の時点ではアプリを利用する
気は無かった。
しかしこの後雪が利用し、
美香と雪からもの凄い勢いで
おすすめされた私は、
結局、美香とほぼ同じ条件でアプリを
利用する事になったのだ。
〇イルミネーションのある通り
注文時点で乗り気ではなく、
サービスの利用に気恥ずかしさを
感じている事もあり、
私の気持ちは下降気味であった。
けれど、当日になってしまい、
スマホに通知も来ている。
そして、もうA公園は目の前で、
スタッフらしき影も見えている状態
となった今、
ため息ばかりついてもいられなかった。
〇イルミネーションのある通り
私は半ばやけくそになりながら、
メッセージ通りの後ろ姿の男に近づき、
名乗ろうとした。
私「あの・・・ 私は東 夏樹(あずま なつき)っ・・・ えっ!!」
〇黒
けれど、出来なかった。
何故なら、その男は、
少し見た目は変わっていたけれど、
〇クリスマスツリーのある広場
幼馴染で、7年前の同じ日に
思いを伝えられないまま離れ離れになった
私の初恋の人、
西田 秋一(にしだ しゅういち)
だったからに他ならなかった。
〇イルミネーションのある通り
ぽかんとする私を見て、何かを察したのか相手は、
?「お前・・・ナツキ・・・・・・なのか?」
と、驚いた顔で私に問いかけてきた。
確信を得た私は、静かに頷き、
私「そう・・・だよ。ねぇ、本当に秋一なの?」
と確認するように相手の名を呼んだ。
秋一は、私の言葉に
〇イルミネーションのある通り
秋一「久しぶり!!」
と満面の笑みを浮かべながら、返答した。
その笑顔を見て、私は、
〇黒
あぁ、好きだな。となった。
7年前に止まった初恋が、再び動き始める
そんな予感がした。
素敵な聖夜にふさわしいロマンティックなお話ですね。
初恋の人に再会だなんて、すごい偶然ですよ。
ここから二人は始まっていくのかな?とドキドキしました。
素敵なラストです!主人公さんにぴったりの終わり方だと思いました。途中の女の子3人の会話がみんなキャラが立っていて、ナツさんは一時的な恋愛にはあんまり興味がなさそうだな…というのがなんとなく伝わってきてそこに好感を抱いていたので、心からよかった〜!と思えるラストでした。忘れ物が届くクリスマスもいいですね〜。
初恋の相手に再開、クリスマスの奇跡ですね!
ヒロインの「好きだなぁ」の一言に、彼女の7年分の想いを感じました。
この後の二人、どうなるんですかね。気になります!