心に電話を

星谷光洋改め、『天巫泰之』

エピソード1(脚本)

心に電話を

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〇雑踏

〇雑踏
  空を見上げると 
  空に浮かんでいた雲を少しづつちぎったような雪が降ってくるのがみえました
  そっと手をのばし 
  その雪にふれるとすっと雪がとけていきました
  だけど 音もなく雪がとけたのではありません 
  そのとき 
  風鈴のような風の音が心の奥で鳴り響いていたのです

〇雑踏
  僕の言葉が彼女を傷つけたのです 
  ふたりで歩くはずだったクリスマスの夜の街を 
  僕はひとりで歩いていました
  どこか陰気だった街も 
  今は買い物客でにぎわい 
  世界中の誰もが幸せそうにみえます
  おなじ街なのに 
  今はみしらぬ街のようです 
  おなじ街なのに 
  僕は映画のスクリーンをよこぎるたんなる観客みたいです

〇雨の歓楽街
  おなじ街なのに 
  模型でつくられた街みたいです 
  僕は紙で折られた人形のように 
  ふらふらと風に飛ばされそうでした
  とりとめもない手紙です 
  誰かにだすあてもない手紙です 
  空想しているポストにこの手紙をいれるつもりです
  ひょっとしたら 夢の世界での配達人が 
  僕の心を察して 
  彼女の心に僕の想いを配達してくれるかもしれません

〇雨の歓楽街
  ぼくはうえを見上げました
  そのとき携帯電話が鳴り 
  すぐに電話をとって話しかけました 
  彼女からでした

〇クリスマス仕様のリビング
恵美「何度も電話したのにでないんだもの・・・・・・」

〇雨の歓楽街
裕二「ええ・・・・・・いつのことだい。携帯は持ち歩いていたけど、恵美は電話してこなかったじゃないか」

〇クリスマス仕様のリビング
恵美「裕二の″心に″電話をかけていたのよ」

〇雨の歓楽街

〇幻想
  彼女が僕の心にかけていた 
  心の呼び鈴だったのでしょう
  街の明かりが 
  たがいに 愛の言葉をささやきあいながら ときおりウィンクしているみたいです

〇ゆめかわ
  天使の羽は誰の肩にも降りてくる
  いつ降りてくるのかはわからないけれど
  太陽のように 
  どんな人にも降りて幸せをもたらしてくれる
  だけど降りてきても
  あまりに軽くて気づけない
  だからため息ひとつで飛んでしまう

〇幻想2
  天使の羽が飛んでいかぬよう
  いつも空をみあげていよう
  どんなに辛くてもうつむかぬように
  人に降りた羽を羨まぬように
  きっと天使の羽は降りてくる
  あなたの微笑みに誘われて降りてくる

〇幻想
  ぼくはぼくの世界で
  ぼく自身や空や海をみつめている
  
  だから
  君のことのぜんぶはわからない
  君の目の高さから
  世の中をみることができたら
  
  君の心のフィルターを通して
  世界をみることができたら
  二人は今よりずっとわかりあえることができるのに
  君の悲しみや寂しさ苦しみを
  誰にも言えずに傷ついている
  その悲しげな翼を
  ぼくはなにも言わないけど
  気づいているよ
  なにも言わないのは
  言ってしまうと
  君がもっと傷ついてしまうと思うから
  鳥は鳥の世界から
  魚は魚の世界から
  この空や海をみている感じてる
  感じ方はちがうけれど
  独りじゃないから
  だって
  みんな
  傷ついた翼をふるわせて
  天に帰れないものたちなんだもの

〇幻想空間

〇幻想

コメント

  • フォークソングの歌詞のようで素敵です。こちらの文章にしかない人と人の間の距離感や、その温もりのようなものを感じます。一人で歩いていたから心の電話の音にも気づけたのでしょうか。喧嘩はできればしたくないけれど、一人でゆっくり誰かのことを考えるのもいいものですね。

  • 素晴らしい!言葉の表現がいいですね。まさしく詩人が言葉でなく手紙で伝える技術に感動しました。この様な感動的な表現ができればいいな。

  • まず、手紙っていいなぁと感じ、手紙を書きたくなりました。やはり、今は既読かどうかもすぐわかってしまう時代になったけれど、手紙って届いたのか、相手が読んでくれたのか、書いてはみたけど勇気が出ずに送らずに手元にずっと置いてしまったり、それを後に見つけたり、アナログだからこそロマンティックに感じます。また彼の手紙に込められた想いにとてもリアリティを感じました。

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