体育(脚本)
〇教室
・・・
かの「あれ、次体育だよ。 なんでまだ着替えてないの?」
さや「ちょっと黙って。 今整えてるから」
かの「整えてる?」
さや「体育なんかやりたくないのに、 やらなければいけない現実と向き合うための心を整えてるから」
かの「そ、そうなんだ・・・」
かの「でももう時間ないよ 早しないとベル鳴っちゃうよ」
さや「時間というものはね、 観測者の立場によって早くも遅くもなるのです。 アインシュタイン博士がそう言ってました」
かの「えーっと・・・」
さや「あなたの立場からしてみたら、もうすぐ始業のベルは鳴るけれど、 私の立場からするとそうじゃないということ」
さや「つまりは気の持ちようということ」
かの「絶対に違うと思うけど・・・」
かの「じゃ、じゃあ私先に行ってるね」
さや「ちょっと待って!!」
かの「な、なに・・・?」
さや「世間に吹く木枯らし厳しいこの大都会で、 あなたはそんなに急いでどこへ行こうというのですか?」
さや「今一度立ち止まって自分を見つめ直し、 本当は何をしたかったのかを、 考える日がきたのではないですか?」
さや「目覚めなさい! 人の子よ!」
かの「こ、怖い・・・ 素直に怖いんですけど・・・」
かの「じゃあ本当に行くから・・・」
さや(・・・ちょっと・・・待って・・・!)
かの「・・・なにその発声方法」
さや(違うの・・・ リアルに整ってきた・・・ 整ってきたから・・・)
かの「えー、もう、 本当に時間ないから、 早く着替えてよ」
さや(ちょい待ち・・・ ちょい待ち・・・)
さや「あ・・・」
かの「え?」
さや「体操着忘れた・・・」
かの「おまえさあ・・・」