職業「サンタ」で異世界転生!

タトネ

読切(脚本)

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〇クリスマスツリーのある広場
  仕事帰り、
  娘へのプレゼントを手にした帰り道──
  交通事故で
  オレはこの世を去った。

〇白
  おめでとうございます。
  あなたは異世界へ転生できます。
オレ「一体・・・ここは・・・?」
  転生時の職業を決めるので、
  目の前のカードを一枚引いてください。
  どこからともなく聞こえる声が
  カードを引けと言ってくる。
オレ「何がなんだかわからないが・・・」
  言われるがままにカードを引く。
  『職業:サンタ
  スキル:他人の望んでいることが見える』
オレ「はっ?サンタが職業・・・?」
  それでは、
  異世界での活躍を期待しています。
オレ「え、あ!おい、待て・・・」
  緩やかに意識が遠のいていく。

〇けもの道
オレ「うっ、ここは・・・?」

〇けもの道
  目が覚めると、オレは見知らぬ森に横たわっていた。
オレ「一体・・・俺は何を?」
  順番に過去の記憶を引き出していく。
オレ「プレゼントを買って・・・そして──」
  ──事故に遭った。
オレ「おぐっ・・・!」
  その瞬間を思い出して、胃の中身が逆流しそうになる。
オレ「・・・はぁ、はぁ」
  そして、
  気づけばよくわからない空間に居て──
  カードを引かされ、
  オレは"サンタ"になったのだ。
オレ「そうか・・・オレは異世界に来たのか」
  二度と──家族には会えないのか
オレ「ぐっ・・・んっ・・・!」
  唐突にやってきた喪失感、孤独感。
  人目が無いにも関わらず、
  オレは声を殺して静かに泣いた

〇けもの道
  ひとしきり泣いた後、
  オレは現状を確認することにした。
オレ「まず、ここは異世界。 どんな世界なんだろうな」
  周りは木しか見えず、近くに人里の気配すらない。
オレ「そして、俺の職業は・・・”サンタ”」
  袖で涙を拭くときに気づいたが、
  俺の服装は紛れもなく”サンタ”だ。
オレ「これが異世界の流行りの服装・・・なわけないか」
  なんの気無しに手を見つめると、
  ふわりと文字が浮かんできた
  ──家族に会いたい──
オレ「これが・・・スキルか?」
  その人の望むことが見える。
  それがサンタのスキルだったはずだ。
オレ「つまり、これはオレの望んでいることか」
  また、少し泣きそうになった。

〇けもの道
オレ「さて、どうすればいいんだろうか」
  明らかに戦闘には向いていないスキル。
オレ「ああ・・・! どうしろっていうんだ!」
  もう少し、じっくりカードを選べばよかった!
  後悔はすでに後の祭りだ。
オレ「とりあえず、移動するか」
  誰かに会えれば・・・
  なにかわかるかもしれない

〇森の中
  森をしばらく歩くと、
  ふとなにかの気配にとっさに身を隠す。
女の子「ねえ、流石に危ないって・・・」
男の子「大丈夫だって! 少し木の実を拾うだけさ!」
女の子「だからって、こんな森の奥まで・・・」
  どうやら、近隣の村の子供が木の実を拾いに来ていたらしい。
  人里に近づいているということだろうか。
女の子「森の奥は立入禁止って言われたじゃない」
男の子「少し入ったくらいですぐ魔物に会うわけじゃないって!」
  どうやらここは魔物の出る森の奥らしい。
  今まで魔物に合わなかったのは幸運というべきか。
男の子「きっとみんな心配性なだけだって!」
  どうする?
  相手は子供だ。姿を見せるべきか?
  そう思って自分の姿を見直す。
  あらためて二人の姿を見る。
オレ(明らかに・・・服装が浮いている!)
  この服装で今出て行ってもただの不審者だろう。
  このまま後をつけて、人里を目指すか。
女の子「きゃあ!」
  そう決めた瞬間、
  女の子の悲鳴が聞こえた。

〇森の中
オレ(なんだあれ!?)
男の子「ま・・・魔物・・・!」
女の子「だ・・・だから言った・・・のに!」
  異形の姿、
  オレにもすぐわかる。あれが魔物だ。
男の子「に、逃げるぞ!」
女の子「あ・・・、待って・・・!」
  腰が抜けてしまったのか、
  女の子はその場を動けない。
オレ(くっ、どうする・・・?)
  迷っている間に魔物は二人に近づく!
男の子「おい!こっちだ!」
  俺が迷った僅かな間に、
  少年は叫んだ。
  不格好に持ち物を魔物に投げつけながら、来た道と逆方向に走り始める。
  言葉は通じずとも、魔物の注意が男の子に向いたのがわかった。
オレ(くそっ、追うしかないか!)
  見捨てる気にはなれず、
  オレは男の子と魔物を追った。

〇霧の立ち込める森
男の子「はぁ・・・はぁ・・・!」
  随分走ったからか、男の子も完全に息が上がっている。
  魔物は獲物を狩る狩人のごとく、
  じわじわと距離を詰めている。
オレ(どうする・・・?助けるか?)
  だが、オレにも戦闘のスキルはない。
男の子「はぁ・・・はぁ・・・、 ここまでか・・・?」
  迷いながら、男の子を凝視していると
  ──みんなを守れる、騎士になりたい──
オレ(・・・!!!)
  魔物と男の子の間に立ちふさがるように、オレは身を乗り出した。
男の子「え・・・あ・・・? 誰・・・?」
オレ「通りすがりの、サンタさんだ!」

〇霧の立ち込める森
男の子「さんた・・・サン・・・?」
オレ「そうだ! 子供に夢を与え・・・夢を守る!」
オレ「それがサンタさんだ!」
  自らを鼓舞するため、
  安心を与えるために啖呵を切る。
オレ「君は逃げろ!」
男の子「えっ・・・でも・・・!」
オレ「いいから早くしろ!」
  オレの怒声に気圧されたのか、男の子は走り去っていった。
オレ「そう・・・これでいいんだ・・・」
  すでに一度死んだ命だ。
  これでいいんだろう。
  あの男の子の夢を守る。
  きっとそのためにオレは転生したんだ。
  為すすべもなく魔物に嬲られながら、
  それでもオレは満足していた。

〇綺麗な港町
  しばらくの後、
  大陸にはとある騎士の噂がが広まった。
  誰よりも目立つ、
  真紅の鎧を身に纏った、騎士の噂が──

コメント

  • 異世界転生して転生ジョブがサンタ、それだけで面白くなってきます。ドキドキのラストも痛快で、スッキリ気持ちよくなりました。

  • どこにいてもサンタさんは子ども達の味方ですよね!
    すごく大切なものをプレゼントして、子ども達の未来を守ったサンタさんはかっこいいと思います。

  • プレゼントすることだけがすべてではない、ちがった形で子どもたちを応援する、それもとても素敵ですね。いいストーリーだと思いました。

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