ベストフレンドプレゼント

丘田

読切(脚本)

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〇学校の廊下
  もうすぐクリスマス・・・浮かれた女子の話し声がよく聞こえてくる。
  いつもはウザったらしいだけだが、今年は俺も例外ではない。今年こそは大切な人にプレゼントを渡す─そう決めたからだ。
友達「おーい純!この前の話なんだけど・・・」
平和「あぁ?!」
友達「うわっ!ごめん、平和だったか! えっと、じ、純に話たい事が・・・」
平和「後にしろよ。俺は急ぎで考えなきゃなんねぇ事があんだよ」
友達「そ、そうか?じゃあ純に変わった時に また来るから」
平和「フンッ、好きにしろよ。でも俺の事を純に言ったら・・・お前分かってんだろうな?」
友達「わっ分かってる!だから殴るのは勘弁してくれ。ホント純とは正反対だな・・・」
  ムカつく野郎ばかりだが、純の友達が多いのは良い事だ。俺は俺じゃないもう1人の人格、「純」を守らなきゃならない。
平和(もう1人の人格・・・まぁ間違ってないが・・・)
平和(そう言うのが手っ取り早いから言ってるだけで、今でも俺は"人格"という感覚ではない)

〇クリスマス仕様のリビング
  初めて純と出会ったのも、クリスマスの当日だった。
  両親は夜遅くまで帰って来れない。そんな純の寂しさを感じながら、初めて入れ替わった気がする。
  その時から思っていた。俺は人格じゃなく「体を持って産まれなかっただけの兄弟」なんじゃないかって。
  大切な存在を守りたい感覚。この日からずっと変わらない。だからこの日、純の代わりに両親に「寂しい」と泣き喚いたっけ。
  俺の存在には気付かなくていい・・・でも、俺達の記念日ぐらい、プレゼントぐらいあげてもいいよな。

〇教室
純「ん・・・あれ?」
友達「あ!純!?」
純「わっ、ごめん。めっちゃ寝てたかも。 そんな大きい声でどうかしたの?」
友達「・・・あ~良かった・・・いやいや、この前の話なんだけどさー」
  ──純と入れ替わると、脳内にモヤが
  かかったようでロクに考えられない。
  最近コイツとよく喋ってやがるな。
  クソ、聞き取れたらコイツの弱みでも
  握れるのに─
友達「あぁやっぱりね!良いと思うけどな~! あ、でも・・・」
  まぁいい、また1時間ぐらいで
  入れ替わってやる─
  クリスマスプレゼント、考えないとな─

〇学校の廊下
友達「おーい純!検索してみたら良い店あったぞー!」
平和「うぜ」
友達「おわっ!また平和か!変わるの早いな・・・放課後になっちゃったしまた明日来るよ!」
平和(悪かったな?俺で・・・)
平和(ってなんで俺が謝ってんだ! クソ、腹立ってきたな。さっさとプレゼントでも見に行くか)
  と言っても、俺は純の欲しいものすら分からない。感情は感じる事が出来ても思考までは分からないのがもどかしい。
  それに俺は買い物なんてしないから、きっとセンスもない。でもそうやって毎年渡せなかったんだ・・・だから今年こそ!

〇雑貨売り場
平和(雑貨・・・甘いもの・・・クリスマスの話してる奴なんて女ばっかりだから、こんなキャピキャピの場所に来ちまった)
平和(いやでも分かるぞ。純は甘いもの食ってる時テンション上がってる。それは間違いない)
平和(あれ・・・何か今のキモイか?)
平和「あ! 甘くて・・・クリスマスらしいもの?」
  決まりだ。これ買って机の上に置いときゃいい。純の友達に口裏を合わせさせて「純が自分で買った、忘れてるだけ」って事にする。
  前にインターネットで見た、地味ハロウィンならぬ地味クリスマスだな。
  まぁいい。純、これからもよろしく。
友達「・・・」

〇学生の一人部屋
  ・・・
  ──おかしい。
  今日はクリスマス当日だ。
  クッキーだって置いておいたはずだ。
  純なら家に置いてあるものは
  何でも食うはずだ。
  その・・・わーい!美味しい!みたいな・・・
  そういう感情を全く感じない。
  ───嬉しく無かった?
平和(・・・)
平和(心配で見に来るとかダッセェな、俺)
平和「・・・・・・・・・・・・あ?」
  もう1人の僕へ
  何から言えばいいかな。
  まずは初めまして?一体いつから
  居てくれてたの?僕は最近気付きました。
平和「あ・・・え?」
  もしかして、僕ってもう1人居ない?って
  ユズルに聞いたんだ。きっと
  もっと早く気付くべきだったよね。
  ユズルって分かるよね?僕の友達だよ。
  でも君は態度が冷たいって
  ユズルは悲しそうだった(笑)
  一匹狼で・・・
  僕が知らない人とぶつかって
  怒鳴られた時、喧嘩のいざこざ、
  そういう時に来ては守ってくれてるって。
平和「・・・」
  僕はボーッとしてるってよく言われるし
  記憶が無いのも忘れっぽい
  だけだと思ってた。違ったんだ。
  君の考えてる事も気持ちも分からない
  僕だけど、言わせてね。
  いつも守ってくれてありがとう。
  この気持ちは本当だよ。
  だからせめて、クリスマスプレゼントを
  渡したくて。ユズルが君を偶然見かけて
  クッキーを買ってたって教えてくれた。
  だから味違いの同じクッキー買った(笑)
  良かったら半分こしよう!
平和「・・・ははっ」
平和「ユズル、ぶっとばす・・・」
  あっ!だいぶ前にサイフから
  200円無くなってたの
  覚えてるんだけど、もしかして
  それも君かな?(笑)
平和「・・・ちげぇよ。バカ。 それはお前が・・・コケて サイフの中身ぶちまけて・・・」
  君の事は親友だと思ってる。
  これからもよろしくね。
平和「・・・」
  メリークリスマス! 純より

コメント

  • 別の人格があると殺伐としたお話が多いのですが、この作品は読んでて心が温かくなりました。
    同じ体にいるんですから、いい友達になれそうです。

  • 確かに二つの人格というより二人の人物が体を分け合っていると言えますね。とても新鮮な印象さえ受けました。周りの反応は気になるところですが、二重人格で本人が苦しむより合理的な受け止め方だなあと思います。

  • 2つの人格が1つの肉体にあって共存しながら、助け合ったり想い合ったりしていられるなんて、なんだかひとりじゃないっていつも感じられて心強いですね♪心温まるクリスマスのお話でした。

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