〇大学病院
　　・・・・荒井市ゾンビパニック。
　　発生より２週間。
　　ニ種類のワクチンの副反応も収まった頃、その日は快晴の青空。燦々と太陽が輝いている。
　　そして・・・ここから本当のサバイバル生活が始まろうとしていた。

〇病院の待合室
橘宏美（・・・とうとうこの日が来たか）
橘宏美（２回のワクチン接種は、対ゾンビの抗体をつけるため。そして安静期間が過ぎて、俺の身体には抗体が出来た）
橘宏美（・・・抗体つっても保険だけどな）
橘宏美（そして抗体が出来た者は、病院の外に出て食料なり何なりの物資を持ってくる事になる。病院の蓄積も有限だからな）
橘宏美（・・・つまり、俺もゾンビの蔓延る外に出てお仕事というワケだ。ぐうたら安静生活もこれでおしまいだ）
橘宏美（俺がゾンビにならずに済むかはお前にかかってるんだ・・・）
橘宏美（・・・頼むぜぇ、愛刀バールよ）
「これより、探索班の振り分けを発表します。名前を呼ばれた方は誘導に従い・・・」
橘宏美（いよいよか・・・・）
　　────探索班は、二人一組で行動する事になっている。これは多人数で行動する事で生存率を上げるためだという。
　　もっとも今病院にいる少ない人間の中で、満足に探索ができる人間を更にふるいにかけた結果たった二人組での行動になったが・・・
橘宏美（理由はどうだっていいさ・・・まあ、とりあえず）
アダド・アダムス「・・・・・・」
活動家「・・・・・・」
橘宏美（こいつらとだけは組みたくねぇ・・・ッ!!）
「第８班、橘宏美さん────」
橘宏美（き、来たっ・・・!!）
「────柳生花凛さん」
橘宏美「・・・えっ？」
柳生花凛「あははっ♪私達同じ班だって、奇遇だね」
柳生花凛「これからよろしくね、オニーサンっ♡」
橘宏美「あ・・・はい、ども」
柳生花凛「あははっ♪照れてるかーわいー♡」
橘宏美「あ、あのね!!大人をからかうのもいい加減に・・・!!」
柳生花凛「えー？ だってカワイイのは事実じゃなーい♪」
橘宏美「あのなぁ・・・」
柳生花凛「これから二人で探索がんばろーね オニーサン♪」
橘宏美「まあ・・・別メンバーに変えろとも言えんし、よろしく頼むね」
活動家「あいつ・・・子供相手にデレデレしやがって!!」
活動家「まだ14歳でしょう!? それを性的に見るなんて・・・!!」
アダド・アダムス「どこまでも腐った奴らだ・・・」
アダド・アダムス「放っておけばいいさ・・・あのような奴は、必ず神の裁きが下る!!」
柳生花凛「・・・・・・」
橘宏美「・・・あいつらがどうかした？」
柳生花凛「う、ううん!!なんでもないよっ♪」
橘宏美「・・・まあ、俺も寝首をかかれんよう気をつけはするよ」
柳生花凛「・・・そう、だね」
柳生摩耶「花凛ちゃん!!宏美くん!!」
橘宏美「あ・・・」
橘宏美「摩耶さん・・・」
柳生花凛「ママ!!お見送りに来てくれたんだ」
柳生摩耶「ごめんなさい・・・もう少し早くワクチンの副反応が収まっていれば、一緒に行けたのだけれど」
橘宏美「仕方ありませんよ、ワクチンの副反応には個人差がありますから」
柳生摩耶「でも、若い二人が危険な街に行くのに、大人の私が何もしないなんて・・・」
橘宏美「・・・・・・・・・」
柳生摩耶「・・・宏美くん」
橘宏美（い・・・いいにおい・・・）
橘宏美「は、はいっ・・・!!」
柳生摩耶「花凛ちゃんのこと、よろしくね・・・」
柳生摩耶「そしてあなたも・・・絶対に生きて帰ってきて」
柳生摩耶「・・・持ってきた食材で、美味しいご飯作るから」
橘宏美「・・・!!」
橘宏美「は、ハイ・・・!!」
橘宏美（・・・不思議な感覚だ、この人の前だと自然と”イキり”たくなる）
橘宏美（ちょっとでも、摩耶さんにいい所見せたい、かっこいい所見せたいって・・・!!）
橘宏美（・・・って何考えてんだ俺は!?相手は人妻だぞ!?）
橘宏美（それに・・・・・・）

〇モヤモヤ

〇病院の待合室
橘宏美「・・・・・・・・・」
橘宏美（イキんな、俺）
橘宏美（人妻云々以前に、お前に幸せになる資格なんて、ありはしねーんだよ・・・）
柳生摩耶「・・・・宏美くん？」
橘宏美「あ、ああ!!いえ、はい 絶対生きて帰ってきますよ」
橘宏美「・・・またカレーライス、作ってくださいね」
柳生摩耶「・・・え、ええ!!」
柳生花凛「・・・・・・」
柳生花凛「・・・何よ、デレデレしちゃって」
アンナベル羽佐間「おやまあ、お嬢ちゃんはママがあのボーヤといい感じになるのが気に食わないようだねえ・・・？」
柳生花凛「あっ、貴女はあのときのおばさん!!」
アンナベル羽佐間「おばさんて・・・せめておば様と呼びな」
アンナベル羽佐間「まあいいや、この度危険なサバイバルに繰り出すお嬢ちゃんに、アンナベルおば様からちょっとした餞別（せんべつ）さね」
柳生花凛「・・・何です？これ」
アンナベル羽佐間「ああ、これはだね・・・」
アンナベル羽佐間「ゴニョゴニョゴニョゴニョ・・・」
柳生花凛「!!!!」
柳生花凛「それは・・・刺激的ですねえ？おば様」