読切(脚本)
〇学校の昇降口
────曇り空
────放課後の昇降口
俺は大木悟『おおきさとる』生まれたときから、他人の心の声が聞こえる。
基本的に読める範囲は半径約3メートル
これのせいで、学校も友人関係も恋愛も、何もかもうまくいかない
ホント、最悪な能力だよ
そんな俺を、マスコミみたいにつきまとうやつがいる。
吉野愛結「ね、ねぇ」
吉野愛結「(ヤバ、ドキドキする)」
吉野愛結『よしのあゆ』
大木悟「何だよ」
俺は足を止める
吉野愛結「あんた、今日の授業全部寝てたじゃない」
吉野愛結「(うぅ、目が合ってるよぉ)」
大木悟「それがどうしたんだよ」
吉野愛結「授業ぐらい、ちゃんと受けなさいよ」
大木悟「なんで俺が寝てたこと知ってんだよ」
吉野愛結「そりゃ、馬鹿みたいに授業中寝てるやつぐらい把握してるわよ。あんたもその馬鹿キモい一人だからね」
吉野愛結「(うぅ、後ろからずっと見てたなんて言えるわけないぃ)」
大木悟「そうかい。つーか、んな面倒なことに時間取らせんな」
???「おーい、悟くーん!!」
後ろの方から、甲高い声が聞こえる。
大木悟「澪?」
彼女は山内澪。俺が無理矢理入れられた生徒会で、ともに活動している。俺が唯一”まとも”に話せる女子である
吉野愛結「(誰よ、こいつ)」
山内澪「悟くんは、もう帰るの?」
吉野愛結「(名前呼びしてるし。このクソ女)」
大木悟「あぁ、澪は部活だったな」
山内澪「うん、今から体育館でね。 じゃ、次はちゃんと生徒会来てよね」
大木悟「あぁ、絶対行かねぇけどな。部活、頑張れよ」
山内澪「あんがとーー!!」
山内澪「(あーもう部活やりたくない。帰りたいよー)」
吉野愛結「(あの女、死ね!死ね!死ねぇ!!)」
やべぇ、こいつ
吉野愛結「あれ、誰??もしかして彼女?」
大木悟「同じ生徒会のやつだよ。彼女じゃない」
吉野愛結「そっ・・・・・・そう、まぁあんたなんかに彼女がいるとは思えないけどね。いちよう聞いただけよ。いちようね」
吉野愛結「(よっ、よかったぁ)」
吉野愛結「あんた、すぐ生徒会やめなさい」
大木悟「は?意味分からん」
吉野愛結「(あんな女と悟くんが一緒にいるのなんて嫌すぎ)」
吉野愛結「いいからやめなさい。それで、その時間をもっと他の有意義なことに使いなさい」
大木悟「まぁ正直、幽霊状態だからな。ちなみに、他の事ってなんだよ」
吉野愛結「たっ、例えば(私と放課後デートとか??ぐへへ)」
大木悟「却下」
吉野愛結「まだなんも言ってない!」
────ざぁざぁと雨が振り始める
吉野愛結「最悪。傘ないんだけど」
しっかりと天気予報を見ている俺は、傘を持っているのだ
吉野愛結「(最高!相合い傘チャンスじゃん!!)」
大木悟「却下」
吉野愛結「まだなんも言ってない!」
吉野愛結「傘、いれなさい!!」
吉野愛結「(ぐへぇ)」
俺が傘を開くと愛結は飛びついてきやがった
大木悟「他のやつに見られる。離れろよ」
吉野愛結「いやっ!」
大木悟「くそぉ」
諦めることにする
吉野愛結「はぁ、あんたなんかと相合い傘なんて最悪よ。まったくもー」
吉野愛結「(しゅきぃ。結婚したいよぉ。うへぇ)」
悟が唯一”まとも”に話せる相手の澪は、裏表がない稀有な人間ということなんだろうか。なのに悟は結局、自分に対して積極的な愛結に取り込まれちゃうのかな。三角関係になったらどうなるのか興味が湧きましたが、読切なんですね。
これほどに表向きツンデレで内心は彼に恋する女の子って、心の読める彼にとってはとてつもなく愛らしいと感じる存在になるのではと思いました!