ラブレター

はの

読切(脚本)

ラブレター

はの

今すぐ読む

ラブレター
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇女の子の一人部屋
  生まれて初めて、レターセットなんてものを買った。
  時代はSNS全盛期だが、気持ちを伝えるのなら手書きがいいと、そう思ったからだ。
私「書き間違いは・・・ない。大丈夫」
  書いた手紙を何度も見直し、ハートのシールで封をする。
  明日の朝、早めに登校して、意中の相手の靴箱に入れて終わりだ。
  もう後戻りはできない。覚悟は決めた。

〇学校の校舎
  そして翌日。
  私はシンと静まり返った学校へ到着し、靴箱へと向かう。
  抜き足差し足忍び足。
  誰もいないと分かりつつ、ついつい気配を消してしまう。

〇学校の昇降口
  脈打つ心臓を感じながら、私は靴箱に到着した。
私「あ」
意中の相手「あ」
  そこには、靴箱にこっそりと手紙を入れている、私の意中の相手がいた。
  入れてる先の靴箱は、私の靴箱
  ・・・の隣だ。
  そこは確か、委員長の靴箱。
  それは・・・つまり・・・。
私「・・・」
意中の相手「・・・」
意中の相手「頼む! 誰にも言わないでくれ!」
  何を、なんて聞かなくてもわかった。
  だって、私がしようとしてたことをしてるんだもの。
私「あ、うん」
意中の相手「すまん! ありがとう!」
  意中の相手は私の返答に、ほっとした表情を浮かべる。
意中の相手「いや、もうバレたから言うんだけど・・・実は俺さ・・・」
  意中の相手は、まるで懺悔でもするように、私に恋心を吐き出してきた。
  なぜ私に、とは思ったが
  これからする告白の成功確率を少しでも上げるために、女子目線でのアドバイスが欲しいらしい。
  いやほんと、なぜ私に。
  なぜ、よりにもよってこのタイミングで。
意中の相手「・・・あ!」
意中の相手「ちょっと、しゃべりすぎたな・・・」
私「いや、ううん・・・」
意中の相手「そ、そういえば」
意中の相手「なんでこんなに早く登校したの? なにか用事?」
意中の相手「部活とかは、やってなかったよな?」
  意中の相手にとっては、照れ隠しで咄嗟に出した話題なのだろうが・・・
  今の私には致死毒だった。
私「私は・・・」
  毒に犯された私の脳は、完全に制御を奪われて、手に持っていた手紙を前に差し出した。
意中の相手「え? なにこれ? 手紙?」
意中の相手「あ、もしかしてお前も俺と同じことを・・・」
意中の相手「なんだよー。そういうことかー。 ずるいぞー。俺ばっか、しゃべっちゃったじゃん。はっずー」
意中の相手「ちなみに・・・相手は誰だよ? いいだろー。俺のも知ったんだからさー」
意中の相手「・・・」
  意中の相手は、手紙に書かれた宛名を読んで
意中の相手「・・・・・・」
  固まった。
  私は手紙を意中の相手の胸に押し付けて
  回れ右して学校から走り去った。

〇学校の校舎
  走って。

〇学校脇の道
  走って。

〇市街地の交差点
  走って。

〇川沿いの道
私「はあ・・・はあ・・・」
  普段は犬しか通らない、近所の河原にやってきた。
私「す゛み゛ま゛せ゛ん゛、風゛邪゛ひ゛い゛ち゛ゃった゛の゛で゛、今゛日゛学゛校゛お゛休゛み゛し゛ま゛す゛」
  スマホの電源をオフにする。
  そのまま私は、河原に寝っ転がって空を眺めた。

〇空
  どうか、今日一日、晴れますように。
  私はそのまま目を閉じた。

コメント

  • 古式ゆかしきラブレターでの告白は、現代においては逆に新鮮ですね。主人公の心情がとても細やかに描かれていて、ラブレターのノスタルジーも相まって心にきゅんきゅん響きました。

  • 今の時代にラブレター、いいですね、自分の気持ちを紙に残すってとてもきれいな事だと思います。結果はどうあれ、自分が満足出来たら一番ですよね。

  • こういう女子を応援したくなります(笑)この状況で手紙を意中の彼に渡したのは勇気がありますね!この話の続きを考えました。手紙を受け取った彼は、さっき靴箱に入れた手紙を取り出して、ポケットにねじ込んだのでした…

コメントをもっと見る(5件)

成分キーワード

ページTOPへ