ホーリーナイト・ルサンチマン

西瓜頭

ホーリーナイト・ルサンチマン(脚本)

ホーリーナイト・ルサンチマン

西瓜頭

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〇実験ルーム
  悪の組織
  ブラックブライト
  研究所
Dr.イナバ「くたばれクリスマス!」
Dr.イナバ「今年こそ聖夜を地獄に!」
Dr.イナバ「今日の任務は──」
Dr.イナバ「中央広場の巨大ツリーを奪取せよ、だ!」
Dr.イナバ「頼んだぞ!怪人ルサンチマン!」
ルサンチマン「無理じゃね?」
ルサンチマン「警備も厳重だし間違いなく大物ヒーローが出てくるぞ」
Dr.イナバ「うるさーい!」
Dr.イナバ「それでもヴィランか!」
Dr.イナバ「黙ってツリーをとってこーい!」
ルサンチマン「そんなこと言ってもなぁ」
男の子「ドクター!ツリーが来るって!?」
女の子「おっきくて、キラキラしたのが施設に来るって・・・」
Dr.イナバ「あ!入っちゃダメ!」
ルサンチマン「ははーん」
ルサンチマン「それでもヴィランか!ねぇ」
Dr.イナバ「これは・・・」
ルサンチマン「よし!」
ルサンチマン「怪人らしくひと暴れするか!」
ルサンチマン「見とけ!広場のツリーぽっきり折って持って来るからな!」
Dr.イナバ「・・・!」
Dr.イナバ「さすがルサンチマン!バックアップは任せとけ!」

〇クリスマスツリーのある広場
  中央広場
リポーター「広場はカップルや家族連れで大賑わい! 警備は皆さんご存知この方!」
リポーター「エリアNo.1ヒーロー ジャスティスレッド!」
ジャスティスレッド「街の平和は俺が守る! 安心して楽しんでくれ!」
  人々の歓声
  それを切り裂く悲鳴が響く
???「ヴィランが出たぞ──!」
リポーター「あれは怪人ルサンチマンです!」
リポーター「選挙ポスターに落書き 高級車のエンブレムもぎ取り等 セコい悪事を重ねるヴィランですが いったい何故?」
ルサンチマン「よく聞けお前ら! そう、幸せそうにアホ面さらしてる」
ルサンチマン「お前ら! お前ら! お前らだ!」
ルサンチマン「俺はお前らが羨ましい!」
ルサンチマン「妬ましい!」
ルサンチマン「なので! クリスマスを台無しにしてやることにした!」
ルサンチマン「ツリーは今夜! 我らブラックブライトが貰い受ける!」

〇実験ルーム
女の子「かっこいい!」
男の子「でも大丈夫?相手は・・・」
Dr.イナバ「今夜の奴は一味違う!いけるなルサンチマン!」

〇クリスマスツリーのある広場
ルサンチマン「応よ!」
ジャスティスレッド(俺が相手するまでもない敵だが)
ジャスティスレッド(奴は俺のスポンサーから懸賞金をかけられている──やるか)
  ボウッ!
  レッドの拳に炎がともる
ジャスティスレッド「そんなマネは許さん! 正義の炎でぶっとばしてやる!」
ルサンチマン「来いよぉ!」
ジャスティスレッド「一撃で終わらせる!」
  スカッ!
ジャスティスレッド「!?」
ルサンチマン「後ろだ」
  バキィッ!
ルサンチマン「ハッハァ! 毎回毎回簡単にふっ飛ばされてたまるかよ!」
ジャスティスレッド「ぐっ 油断した!」

〇実験ルーム
男の子「すごい! どうしちゃったの!」
Dr.イナバ「奴は人の嫉妬心をパワーに変えることができる!」
Dr.イナバ「クリスマスはその力も超強くなるのだ!」
男の子「それでいいの?」
Dr.イナバ「ふはは! 悪の組織は勝てばよかろう!」
女の子「あっ! たいへん!」

〇クリスマスツリーのある広場
ルサンチマン「ぐはっ!」
ジャスティスレッド「ふん!パワーアップしているが」
ジャスティスレッド「この程度か! 投降するなら悪いようにはせんぞ!」
ルサンチマン「くーっ 基本性能がダンチだぜ」
ルサンチマン「正面から行ったのはミスったかな」
ルサンチマン「──こんなピンチはあの時以来か」

〇実験ルーム
  10年前
  組織の孤児院で育った彼は優秀な子供だった
  命令を的確にこなし
  技術を身につけた
  組織は彼を重用した
  しかし
  それを楽しいと思ったことは
  1度もなかった

〇クリスマスツリーのある広場
  ある日のこと
  任務の待機時間
  共に孤児院で育った少女と鉢合わせた
  その日はクリスマスで、広場にはツリーが立っていた
  私語は厳禁
  少女を横目で見ると、あることに気づいた
  ツリーの頂上に飾られた星
  それを見て──うつむいてを繰り返していた
ルサンチマン(幼少時)「・・・あれが欲しいの?」
  思わず出た言葉
  少女は驚き
  小さく、こくんと頷いた
  彼はその答えでツリーに飛んだ
  警備員をなぎ倒し
  駆けつけたヒーローにボコボコにされるまで暴れ続けた
  それが彼が生まれてはじめて自分の意思で行った「悪事」だった

〇クリスマスツリーのある広場
ルサンチマン「あいつのクリスマス嫌いもあれから・・・」
ジャスティスレッド「何をゴチャゴチャと!」
ジャスティスレッド「投降する気が無いなら戦闘不能にさせてもらう!」
ジャスティスレッド「ジャスティスファイヤー!」
  ゴウッ!
ジャスティスレッド「なっ!」
ジャスティスレッド「炎に正面から・・・!」
ルサンチマン「オラァ!」
  ズガン!
ジャスティスレッド「ガッ!」
ルサンチマン「ビビって炎がぬるいんじゃねぇか? レッドさんよぉ」
ジャスティスレッド「何故そこまで戦える? お前のその力は──?」
ルサンチマン「今夜はクリスマス! 幸せな奴らの光が強いほど」
ルサンチマン「何故自分はそうじゃない!? 夜が過ぎるのを待つ大人 プレゼントの無い子供」
ルサンチマン「そうしてつま弾かれた闇が 深く濃くなる夜だ!」
ジャスティスレッド「だとしても、彼らはこんなことを望んじゃいない!」
ルサンチマン「ああそうさ! だから俺はこの力を自分の意思で 「悪用」する!」
ルサンチマン「ヴィランだからな」
ルサンチマン「邪魔だヒーロー! そこをどけ!」
ジャスティスレッド「・・・」
ジャスティスレッド「それがお前の矜持か」
ジャスティスレッド「ならば、俺もヒーローとして 挫くのみ!」
ジャスティスレッド「全力で行くぞ! 死ぬなよ、ルサンチマン!」

〇実験ルーム
男の子「ああ・・・」
女の子「がんばって!」
Dr.イナバ「そうだ! がんばれ私のルサンチマン!」
Dr.イナバ「ヒーローなんかに負けないで!」

〇クリスマスツリーのある広場
ジャスティスレッド「おおおおおおっ!」
ルサンチマン「オラァアアア!」
  赤い炎と黒い風
  その二つが交錯し
  そして──

〇クリスマスツリーのある広場
リポーター「激しい戦いでした 勝利した彼に話を聞いてみます」
リポーター「ジャスティスレッドさん」
ジャスティスレッド「・・・」
ジャスティスレッド「紙一重の勝利でした」
リポーター「ルサンチマン、最後はいつもみたいにふっ飛んでいきましたね」
ジャスティスレッド「ああ、そう言えば 体を捻って軌道修正していたような・・・」
  夜空を見上げ
  そして気づく
ジャスティスレッド「あ・・・」
ジャスティスレッド「あははっ!」
ジャスティスレッド「──俺の、負けだ!」

〇実験ルーム
ルサンチマン「ぐっはぁ!死んだ!」
Dr.イナバ「ルサンチマン! すぐ回復ポッドに──」
ルサンチマン「もぉーホント大人気ないよあいつ!本気で殴るんだもん!これだからヒーローって嫌いサ!(吐血)」
Dr.イナバ「言ってる場合か!」
ルサンチマン「・・・すまんドクター」
Dr.イナバ「え?」
ルサンチマン「これで精一杯だった・・・(ガクッ)」
Dr.イナバ「──」
Dr.イナバ「・・・」

〇クリスマスツリーのある広場
  見上げたのは満天の星空
  だけど今日、クリスマスを象徴する
  最も地上に近い星は
  ひとりのヴィランに奪われた
  願わくば誰の心にもこの星が届きますように
  そうして
  ヒーローはひとり
  空に誓った
ジャスティスレッド「次は負けないぞ! ルサンチマン!」

コメント

  • ルサンチマンはDrイナバの笑顔も取り戻したのであった…。みたいなナレーションを付けたくなりました😊
    BGMやスチル入れなくても面白いのに、入れたらもっと迫力が増しそうな作品ですね。

  • ルサンチマン粋ですねぇ。レッドも。

    爽やかな読み味で気持ちがいいです!
     

  • これが名作として名高いルサンチンマン!
    クリスマスを憎む心はみな同じ、ヴィランへの共感が止みませぬ

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