パラドックスをぶった斬れ!

咲村まひる

5.'sでは広すぎる:前編(脚本)

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〇学校の部室
犬飼 レン子「・・・・・・」
乾 幹太「こ、こんにちは~」
乾 幹太(あれ? 今日は裁縫してる・・・?)
乾 幹太「・・・なにを縫っているんですか?」
犬飼 レン子「・・・・・・」
乾 幹太(なんかチラッとギャル子のほうを見た!?)
ギャル子「あ、これ、あたしのハンカチっス!」
乾 幹太「ハンカチ?」
乾 幹太(ハンカチって、自分で縫うものだっけ?)
乾 幹太(雑巾くらいしか見たことないぞ・・・)
乾 幹太(しかも、なんか変な位置縫ってるな)
乾 幹太(わざわざハンカチの中心を真四角にくり抜いて、そこに別の布を当ててる・・・?)
乾 幹太「ハンカチに穴でも開けちゃったんですか?」
ギャル子「そうっス」
犬飼 レン子「『そうっス』じゃないわよ」
犬飼 レン子「全然違うわ」
乾 幹太「違う?」
犬飼 レン子「開けちゃったんじゃない、開けたのよ」
乾 幹太「開けた・・・」
乾 幹太(ほとんど同じに思える言葉だけど、レン子先輩のことだからそこに意味があるんだろうな)
乾 幹太(開けちゃった――感覚で言うと、開ける気がないのにやってしまったように思える)
乾 幹太(開けた――言い切っているこっちは、明らかに自分の意思で開けている!)
乾 幹太「つまりレン子先輩は、ギャル子のハンカチに故意に穴を開けたうえ、自分で直している・・・ということですか?」
犬飼 レン子「そうね」
犬飼 レン子「直しているわけではないけれど、そんな感じよ」
乾 幹太「えっ?」
乾 幹太「直してるわけじゃない?って──」
乾 幹太(あ、レン子先輩がハンカチを広げて見せてくれた・・・けど・・・)
  いかにも女の子らしい花柄のハンカチのまんなかで、こともあろうに怪しい宇宙人のキャラクターが手を振っていた。
乾 幹太「――もっとマシな布はなかったんですか・・・」
犬飼 レン子「あら、これくらいわかりやすいほうがいいのよ」
乾 幹太「はぁ・・・」
犬飼 レン子「さて、幹太」
犬飼 レン子「ここで問題よ」
乾 幹太「へ?」
犬飼 レン子「このハンカチは、誰のものでしょう?」
乾 幹太「いやそれ、さっきギャル子のだって言ってましたよねっ?」
犬飼 レン子「そう、まだ大丈夫ね」
乾 幹太(言うだけ言って、また裁縫に戻ってしまった・・・)
乾 幹太(今度はハンカチの右上を真四角に切り取って、さっきと同じ宇宙人の布を縫いつけてる・・・)
犬飼 レン子「・・・・・・」
乾 幹太(なんなんだこの状況・・・石橋先輩はなにも言わないのか?)
乾 幹太(って、そういえば石橋先輩がいないな)
乾 幹太「と、ところで、今日は石橋先輩は来てないんですか?」
犬飼 レン子「飼い主?」
犬飼 レン子「そこに入っているわよ」
乾 幹太「え・・・?」
乾 幹太(あの・・・レン子先輩が視線を向けたの、ロッカーなんだけど!?)
乾 幹太「も、もしかして本気で言ってますか・・・?」
犬飼 レン子「私が本気でないことなんてあった?」
乾 幹太「ありません!」
  慌てて立ちあがると、手前のロッカーを勢いよく開けた。
乾 幹太(ほんとに石橋先輩が転がり出て──)
乾 幹太「――え?」
乾 幹太「・・・・・・」
乾 幹太「だ、誰ですか、これ・・・っ」
  手脚をロープで縛られ、口にガムテープを貼られたその人物は、
  涙目でこちらに助けを求めている、まったく知らない男性だった。
犬飼 レン子「飼い主──」
乾 幹太「いや違いますって!」
犬飼 レン子「――の服を着た知らない人」
乾 幹太「他人じゃないですかっ」
犬飼 レン子「ちなみに、飼い主の服を着ていない人物なら、隣のロッカーにいるわよ」
乾 幹太「早く言ってください!」
乾 幹太(隣のロッカーから、パンツ一丁の石橋先輩が申し訳なさそうに出てきた・・・!)
石橋 仁「・・・よぉ」
乾 幹太「あっ、こ、こんにちは!」
乾 幹太(あっ、さっきの知らない人が石橋先輩の服を脱ぎ捨てて出ていった・・・)
ギャル子「通報されないことを祈ってるっス・・・」
犬飼 レン子「できたわよ、ほら幹太」
乾 幹太「はいっ?」
乾 幹太(さっきは中央だけが宇宙人だったけど、今度は右上にもいる)
乾 幹太(もしかして、宇宙侵略の様子でも表現してる・・・?)
犬飼 レン子「このハンカチは、誰のものでしょう?」
乾 幹太「いや、だから・・・っ」
犬飼 レン子「ギャル子のもの?」
乾 幹太「何回訊いても同じですよ!」
犬飼 レン子「そう・・・じゃあ、一気に行こうか」
ギャル子「ラジャーっス!」
乾 幹太「一体なにを企んでいるのか、怖すぎる・・・」
石橋 仁「おい幹太、俺の服取ってくれ」
乾 幹太「あ、はいっ」
乾 幹太「あ、あの、どうしてこんなことに・・・?」
石橋 仁「なにも訊かないでくれ・・・」
乾 幹太(そんなに嫌なことが!?)
乾 幹太(なんという恐ろしいサークルだ・・・)
乾 幹太(今度はギャル子も裁縫に加わってるし、なにが始まるんだ?)
犬飼 レン子「よしと、これでいい」
犬飼 レン子「さあ幹太、最後の質問よ」
乾 幹太「は、はい」
犬飼 レン子「このハンカチは、誰のものでしょう?」
乾 幹太「・・・っ」
乾 幹太(ハンカチから花柄が消えて、宇宙人だけになってる!?)
乾 幹太(え? あれっ? もしかしてすり替えた?)
乾 幹太(・・・いや違う、ちゃんと縫い目がある!)
乾 幹太(真四角に切り抜いたパーツを、ひとつずつ入れ替えていった結果、全部入れ替わってしまったのか・・・)
乾 幹太「そ、そのハンカチ、もとはギャル子のなんですよね?」
犬飼 レン子「そうよ」
犬飼 レン子「今まであなたに見せてきたハンカチと、同じものよ」
乾 幹太「じゃあ、ギャル子のもの・・・?」
犬飼 レン子「なんで『?』がついてるのよ」
犬飼 レン子「あなたさっき、言い切ったじゃない」
犬飼 レン子「『何回訊いても同じだ』って」
乾 幹太「それはそうなんですが・・・っ」
乾 幹太(普通全部入れ替わるなんて思わないだろ!?)
ギャル子「じゃあこれは?」
ギャル子「誰のハンカチっスか?」
乾 幹太「あっ!?」
乾 幹太(縫い目はあるけど、花柄だけのハンカチだ!)
乾 幹太(もとのハンカチから取り出した布を、ギャル子が改めて縫いなおしたのか・・・)
乾 幹太「えーと・・・」
乾 幹太(パーツだけで見れば、ギャル子のハンカチは間違いなく花柄のほうだ)
乾 幹太(でも、そうするとついさっきまで『ギャル子のハンカチ』の称号を持っていた宇宙人はどうなる?)
犬飼 レン子「さあ、どちらがギャル子のハンカチだと思う?」

次のエピソード:6.'sでは広すぎる:後編

コメント

  • ここで"アレ"が出てきますかー!私自身も明快な答えを持ち合わせていないので、是非ともレン子さんのご見解を伺いたいです!
    そして、ロッカーに入れられていた石橋先輩ともう一方、こちらの真相も気になります(普通なら通報案件ですが…)

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