取り憑かれた女

市丸あや

取り憑かれた女(脚本)

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取り憑かれた女
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〇ホテルの部屋
或る女「貴方との出会いが、私を・・・こんな女にしたの」
或る男「・・・・・・・・・っ!!! ・・・・・・・・・・・・・・・っ!!」
  ・・・或る日の夜。
  場所は、2人で散々愛を語らい身体を重ねた、高級マンションの寝室の・・・ベッドの上。
  口を塞がれ狼狽する男に跨り、女は口をまた開く。
或る女「私を狂わせたのは、貴方。 憎いくらい愛してるのに、なんで・・・」
  そうして振り上げたか細い手に握られていたのは、カーテンの隙間から溢れる月の光に照らされ不気味に煌めく・・・白刃。
或る男「・・・・・・・・・・・・・・・!!!!! ・・・・・・・・・・・・!!!!!!!!」
  ジタバタともがく男に構わず、女は白刃を振り下ろす。
或る男「──────────────!!!!! ────────────────!!!!!」
或る女「あなたのせい・・・ あなたの・・・」
  一心不乱に、何かに取り憑かれたように、男に白刃を振るう女。
  最初は激しく抵抗していた男だが、やがてその力は命と共に消えていき、夥しい血液に塗れた肉塊が、女の視界に広がる。
或る女「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
  ただただ無表情で、目の前の惨劇を見つめる女だが、不意に・・・血の海の中に埋もれていたある物を手に取る。
或る女「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
  血塗れの・・・自分ではない女のイニシャルが刻まれた結婚指輪を無言で見つめた後、女は何を思ったか、それを一息に飲み込み。
或る女「今日が私達の、結婚式・・・」
  言って、女は何を思ったか、眼下に広がる肉塊を鷲掴み、野獣のように貪り喰らう。
或る女「・・・・・・・・・・・・・・・」
  全て喰らい尽くすと、女はゆらりと立ち上がり、ベランダに出て手摺に手を掛け身を乗り出す。
或る女「・・・これで貴方は、私だけのもの。 もう、離さない。 楽しみだわ。 業火の・・・新婚旅行・・・」
  そうして、女は何の迷いもなくそこから飛び降りた。
  ずっと妻がいる事を隠し、自分を欺いてきた憎らしい・・・けど、堪らなく愛おしい男の何もかも、亡骸までも我が身に秘めて、
  満ち足りた顔で、彼の待つ地獄へと、堕ちて行った・・・

コメント

  • 恐ろしくも深い愛情ですね!!
    最近ホラーにハマっているので、タイトルから気になりました!!
    愛を深く描けるところが凄いですね。
    私は愛の勉強が足りませんので唸っております💦

  • 相手の裏切りはあくまでもきっかけで、自分自身の独占欲に取り憑かれて自滅する女の様が恐ろしかったです。自分が愛した男を殺害したことよりも、その体を食べて自分のものにしたという認識にこの女性の心の闇の深さを感じました。

  • 濃密な愛情と、それ故の狂気に満ち溢れたワンシーンですね。愛が深ければ深いほど、憎しみに転じたときにはそれも深い、痛感させられますね

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