接触編パート1(脚本)
〇海辺の街
・・・荒井市。
人口約数万人の、近畿地方に存在する地方都市である。
最近この街では、人々が不可解な失踪を遂げるという事件が相次いで起きていた。
が、地方ゆえに注目される事もなかった。
そしてただ、日々が過ぎていた。
そんな時・・・・・・
〇マンション前の大通り
────荒井市・某所。
深夜11時32分。
橘宏美「ふざけやがってクソがぁ・・・・・・!!」
この、絞り出すように怒りを露わにするこの男は橘宏美(たちばな・ひろみ)。
某工場の底辺労働者である彼が、ようやく仕事を終えて帰る最中こんなに荒れているのには、理由がある。
妹の留学祝で家族全員で旅行行ってくるからお前留守番よろしくなー
あと旅費はお前がゲーム機買うために貯めてた貯金から下ろしとくからなー
父
橘宏美「死ねクソが!!!!!!人が反撃してこないからって好き勝手しやがって!!!!!!!!」
橘宏美「フーッ・・・・・フーッ・・・・・・!!」
橘宏美「・・・・・」
橘宏美「・・・・・・誰も見てないな、よし」
橘宏美「・・・ガードレールに八つ当たりしても、まあしゃあなし・・・・・・」
橘宏美「・・・・・帰ろ」
〇駅のホーム
橘宏美「あー待って待って!!乗ります!!乗りまーす!!」
〇電車の座席
橘宏美(ほとんど誰もいない・・・まあ平日の深夜の地下鉄からな、当然か・・・)
橘宏美「・・・・・・」
橘宏美(・・・・・・まあそうだよな)
橘宏美(こんなコミュ障の出来損ないよりも、明るくてリア充の妹の方が可愛いよな)
橘宏美(だから俺は、行きたかった美大も諦めて、妹の留学のためにお金を・・・・・・)
橘宏美(・・・・・・ああ)
橘宏美(疲れた・・・・・・な・・・)
橘宏美「・・・・・・・・・・・・」
橘宏美「・・・・・・え?」
〇黒
〇電車の座席
橘宏美「・・・・・・う・・・」
橘宏美「・・・なんだ・・・事故ったのか?」
橘宏美「でも地下鉄で事故なんて・・・」
橘宏美「というか、今何時・・・」
橘宏美「────じゅ、10時!?それも朝の!?」
橘宏美「どうしよう!?仕事もう間に合わない・・・!!」
橘宏美「あああああ!!まずいよ!!遅刻なんてバレたら父さんに殴られる!!殺される!!あああ!!ど、どうしよう・・・!!」
橘宏美「・・・ん?何だ?」
???「・・・・・・」
橘宏美「そこに誰か・・・・・・」
橘宏美「・・・・・・いや・・・」
橘宏美「・・・・・・”何か”、いるの、か?」
────人、であった。
死蝋化により変色した体表の腐臭をまき散らす”ヒト”が、獣のように人肉を貪っていたのだ。
橘宏美「・・・・・・へ?」
橘宏美「う・・・ウソだろ・・・!?」
橘宏美「わ、わあ・・・!!」
橘宏美「く・・・・・・るなぁああ!!!!」
〇電車の中
橘宏美「くそっ!!何なんだよありゃ!?どうみても特殊メイクじゃないよな・・・!?」
橘宏美「う、運転手さん!!今・・・」
橘宏美「・・・死んでる!?」
凄惨な光景であった。運転手は、腹を食い破られて死んでいた。
飛び散る臓物の欠片と血飛沫、恐怖に固まったデス・マスクは、その犯人が誰かを物語っている────。
橘宏美「うわ、ああ!!ど、どうしよう・・・!!」
橘宏美「このままじゃ、俺も運転手さんみたいに・・・!!」
橘宏美「・・・・・・」
────しばしの沈黙、ゆうに2秒。
火事場のなんとやらか、迫る捕食者を前にした極限状態は、宏美にとてつもない冒険をもたらした!
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