別に知りたくないけど…。(脚本)
〇幼稚園の教室
園児「せんせ~さよ~なら~」
園長先生「はい、さようなら」
加里奈先生「さようなら~」
園児の母「お世話になりました」
園児の母「娘は変わりありませんでしたか?」
園長先生「えぇ、元気いっぱい走り回ってましたよ」
加里奈先生「今日はクシャミも鼻水もありませんでしたし、もう風邪は大丈夫そうです」
園児の母「良かった、長引いていたから心配だったんです」
園児の母「早くパパにも教えてあげなくっちゃね」
園児「ね〜♪」
加里奈先生「・・・」
加里奈先生「パパ・・・ねぇ」
園児の母「え?」
園長先生「うおっほん!」
加里奈先生「い、いえ、何でもありません」
園長先生「もう大丈夫だと思いますが、しばらくは気を付けてあげて下さい」
園児の母「はい、ありがとうございました」
園長先生「・・・」
加里奈先生「・・・」
園長先生「加里奈先生、心の声は自嘲して下さい」
加里奈先生「申し訳ありません、つい・・・」
園長先生「つい、じゃありませんよ」
園長先生「もし園児が聞いていたらどうするつもりですか」
加里奈先生「流石に園児の前では言いませんよ」
加里奈先生「『パパって戸籍上か血縁上かどっちの人ですか?』なんて」
園長先生「・・・はぁ」
園長先生「アナタが人の心を読めるなんて半信半疑でしたけど、本当みたいですね・・・」
加里奈先生「私は人の心が読めるわけじゃありません、嘘がわかるだけです」
園長先生「同じようなものです」
加里奈先生「全然違いますよ、そうでなければ保育園で働こうなんて思いません」
園長先生「『他人の嘘』に疲れたから園児か動物相手にしか仕事が出来ない・・・でしたっけ?」
加里奈先生「園児や動物は良いです、どんな感情も全て真っ直ぐぶつけてくれますから」
園長先生「園児と動物を同列に語らないで下さい」
加里奈先生「それに引き換え大人の相手は疲れます」
加里奈先生「嘘とわかっても指摘できず、話を合わせるしかないんですから」
加里奈先生「相当なストレスですよ」
園長先生「ずいぶんと偏った世界で生きてきたのね」
加里奈先生「どこでも同じです、この世の大半は嘘と誤魔化しと洗脳でできていますからね」
園長先生「極論ね」
加里奈先生「でも、この職場はまだマシですよ」
加里奈先生「園長先生を始め、先生方は嘘と言ってもせいぜい愛想笑いするくらいですから」
加里奈先生「親御さんは最悪ですけど」
園長先生「・・・加里奈先生」
加里奈先生「なんせ園児の親は父母を問わず4割は浮気中で、その半分が托ら・・・」
園長先生「ストップ!そこまでです」
園長先生「いくら密室でも言って良い事と悪い事があります」
園長先生「幼少期の体験が子供の一生を左右する事もあるんです」
園長先生「園に居る間は言動を慎んでください」
加里奈先生「承知しました」
園長先生「では、私は定例会に向かいますので」
加里奈先生「はい、後のことはお任せ下さい」
園長先生「お願いします」
加里奈先生「・・・」
加里奈先生「・・・ホント、園長先生って嘘はつかないよね」
加里奈先生「園長先生が子供達の事を『かわいい』なんて言ってるの一回も聞いた事ないし」
加里奈先生「プロフェッショナルってことか・・・」
保育士「加里奈せんせ~ミューティング始めますよ~」
加里奈先生「は~い、今行きま~す」
加里奈先生「・・・嘘を付く人と本音を隠す人」
加里奈先生「世間的にはどっちが良いんだろう?」
加里奈先生「私にとってはどっちもどっちだなぁ」
この短編の中のリアリティの濃ゆさったらww
加里奈先生の言い分も理解できますねー。私自身も他者の嘘でストレスを溜めてしまうタイプなので(加里奈先生ほど敏感ではありませんが)
この短編の中にヒューマンドラマや社会風刺などが盛り込まれていて、内容の濃密さに感服です!
「嘘も方便」てことか〜。人間社会では常に「真実が善」とは限りませんもんね。加里奈先生のセリフ「この世の大半は嘘と誤魔化しと洗脳でできている」も真実だからこそいやーな気持ちになるわけで。生きていくには園長先生くらいのスタンスがちょうどいいかもですね。