英雄親子は名誉を捨てる

筑豊ナンバー

22話「覚悟」(脚本)

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〇西洋風の部屋
ランの母親「あら!あなた!今日は早いのね!」
ランの父親「急用の仕事が入ってな・・・詳しくは言えないがランには気を付けるように言ってくれ」
ランの母親「あの子ももう大人ですよ!それくらいわかってますよこの前だってテロリスト相手に戦って表彰されたじゃないですか!」
ランの父親「だからだよ。 勢いに乗ってる今同じようなことがあった時にもしものことがあったら俺は──」
ランの母親「あなた?」
ランの父親「ランは天才だ。俺が二十歳で完成させた技を十歳でやってのけた。だが・・・だからこそ怖いんだ」
ランの父親「自分が強い事を知っていて誰よりも優しい性格をしていたらどんな道をたどるのか──」
ランの父親「──それを俺は間近で見てきた。 あの子にあんな修羅の道を歩かせたくはない」
ランの父親「悪い。話が長くなったな!行ってくる!」
ランの母親「・・・行ってらっしゃい!」
ラン「ふぁ~おはようお母さん!!~」
ランの母親「おはよう!ご飯できてるわよ!」
ラン「いただきます!」
ラン「アム!ムグムグムグムグ! そういえば父さんは?」
ランの母親「急な仕事が入ったからってたった今出たわよ!」
ランの母親「え!?これは?」
ラン「なにこれ!?」
ラン「ちょっと外見てくる!」
ランの母親「待ちなさい!ラン!!」

〇ヨーロッパの街並み
ラン「どうなってるの?これ?!」
  辺り一面の小石や物が中を浮いている。
  明らかな委譲事態だがどこを見渡しても東軍の兵士が見当たらない。
ラン(いったい何が起きてるの?)
ランの父親「ラン!!なぜ家から出た!!」
ラン「父さん!!これは何が起きてるの!!」
ランの父親「そんなことより──な!!」
  巨大な岩が眞下さまにこちらへ向かって落ちてきている。
  避けようにももうまにあわない。
  父はとっさに盾になるようにランを抱き締めたがどう考えてもこのまま行けば二人揃って下敷きになってしまう。
  身構えて瞳を閉じた。
  もうどうあがいても助からない。最後の最後に脳裏に浮かんだのは不思議なことに家族ではなく──
  ──親友の姿だった。
ラン「え?」
  そこには私達親子を下敷きにするはずだった岩が真っ二つになり転がっていて、その先には刀を握る親友の姿があった。
ラン「ミカ!!」

〇ヨーロッパの街並み
ランの父親「君は!」
ラン「ミカ!これはミカが?」
ラン「それにその格好は?」
ランの父親「ランから聞いていた友人の姿に覚えがあったがまさか君だったとはな・・・『魔王殺し』」
ラン「え?ミカがあの?!『魔王殺しの英雄』?!」
ミカ「・・・黙っててごめん・・・」
  ずっと隠してきた過去がついに親友にバレてしまった。もう今までの様にいられないだろう。
  だが自分の行動に後悔はない。
  何をするにも対価は必要だ。
  今回は普通の生活を対価に親友を守れた。
  それでいい。それで私は──満足なんだ。
  このままここにいても事態は収束しないだろう。根本を解決しなくてはまた皆んなを危険な目に合わせてしまう。
ミカ「今までありがとうラン。私は──」
ラン「え?ありがとうってなにが?」
ミカ「え?」
ラン「今までって?私はただ気の合う友達と一緒に過ごしてきただけだよ?」
ミカ「でも私は!」
ラン「人殺しだから?戦争に参加していた事を隠していたから?そんな理由で私が君から離れると思ってんの?」
ラン「みくびってもらっちゃ困るよ」
ラン「今更そんな事で切れるような縁ならとっくに絶好してるよ」
ミカ「ラン・・・」
ラン「今何が起きてるのかは知らないけど全部に蹴りがついたらミカの剣を私に教えて欲しい。 だから──」
ラン「また一緒に学校に行こう!ミカ!」
ミカ「──うん!」
ラン「気をつけてね!」
ミカ「行ってくる!」
ラン「行ってらっしゃい。ミカ!」

〇巨大な城門
魔王「・・・」
ミカ「なぜだ!?なぜあなたがここにいる?魔王!!」
魔王「・・・・・・」
ミカ「クッ!」
魔王「・・・」
ミカ「まだ殺し足りないのか?」
ミカ(あの時より早い!?まさか戦時中は手加減していたのか?)
ミカ(殺気こそ感じないがやっぱりあの時より速さも力も段違いだ。 でもなんで手加減なんてしたんだ?)
ミカ「ッ!」
ミカ「クッ!」
  左腕をやられた。幸いききてじゃないが魔王相手にこの傷を庇いながらじゃ勝ち目がない。
ミカ「これは?!」
「下がれ!!」
ミカ「はい!」
ミカ「アレックスさん!!」
アレックス・ワトソン「体制を立て直したい!隙が出来次第逃げるぞ!」
ミカ「はい!」
アレックス・ワトソン「チッ!無傷かよ!!」
魔王「・・・」
ミカ「これは!」
不知火 白夜「後は俺が稼ぐ。お前らは下がれ」
ミカ「そんな!無茶です!」
アレックス・ワトソン「わかった」
ミカ「アレックスさん!!」
アレックス・ワトソン「このままいけば全滅だ。 それとも他に打開策があるのか?」
ミカ「それは・・・・・」
アレックス・ワトソン「行くぞ。あと何分持つかわからない」
ミカ「・・・・・・はい」
不知火 白夜「悪いな魔王様。少し付き合ってもらうぞ」

次のエピソード:23話「父親失格の選択」

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