元刑事の女

きせき

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〇洋館のバルコニー
ウェンディ「良かった、まだこちらにいたんですね」
メアリー「あ、刑事・・・・・・のペインさんでしたっけ?」
ウェンディ「はい、ウェンディ・ペインです」
メアリー「何だか、今日は随分と印象が違いますね」
ウェンディ「えぇ、警察は辞めたので。でも、刑事を辞めたら、どんな服を着て良いか、悩みますね」
ウェンディ「小さな頃は真っ白なドレスとか花柄のワンピースとかが好きでしたけど」
メアリー「あの・・・・・・それで、何かご用でしょうか」
メアリー「もうすぐ列車が来る時間なのですが・・・・・・」
ウェンディ「あぁ、すみません。用件はこちらの男性を覚えているかと思いまして」
メアリー「この方は奥様の被害者の方では? 確か、パイロットさんだったとか?」
ウェンディ「えぇ、パイロットのダウディング氏です。彼が亡くなったのは15年前。まだ31歳でした」
ウェンディ「彼は長いフライトを終え、久し振りに自宅に帰宅したところ、」
ウェンディ「たまたま居合わせた強盗によって殺害。ただ、それは彼の妻による残酷な犯行でした」
メアリー「奥様・・・・・・なら考えられそうですね。アーカート氏やラッシュ氏、エアハート氏」
メアリー「ミラベルやリタ、イーヴィー・・・・・・あと、レジーナ」
メアリー「次々と名前と容姿を変えて、結婚後、殺害。彼女は莫大な財産や資産を手に入れた」
メアリー「私にはとても真似できません」
ウェンディ「そうですね。連続で富豪が亡くなるなんて目立ちますしね」
ウェンディ「だから、貴方は彼女を隠れ蓑にして、1人だけ金持ちの男性と結婚。殺害することにした」
ウェンディ「私の従兄弟。ウィリアム・ダウディングを」
メアリー「・・・・・・」
メアリー「仮に・・・・・・そうだとして、証拠はあるのですか?」
メアリー「いえ、それ以前に貴方はもう刑事さんでもない。私を捕まえることはできない」
ウェンディ「証拠はまず彼が亡くなった時に見つかった彼以外の謎の血液があります」
ウェンディ「それが貴方のだと分かれば、事件は動くでしょう」
ウェンディ「あとはレジーナ・エアハートが彼の件だけを拒否しました」
ウェンディ「そして、それは貴方の仕業だと供述を始めました」
ウェンディ「あと、リタ・ダウディングとして貴方が生活していた痕跡」
ウェンディ「メアリー・メリックとしてこの屋敷に来る前の経歴。その鞄の中身」
ウェンディ「時間をかければもっと確実たる証拠がいくらでも見つかるでしょう」
メアリー「そう・・・・・・」
メアリー「で? 貴方はどうするの?」
ウェンディ「私は彼の事件を解決する為に刑事になった。15年・・・・・・犯人が捕まえることだけ」
ウェンディ「それだけが私の生きる目的になってしまった。そして、それは終わろうとしている」
ウェンディ「私は多分、この先、生きていけない」
メアリー「うっ・・・・・・!!」
ウェンディ「やっぱり、白い服は来て来なくて良かった。血で汚れちゃうし」
ウェンディ「あと、刑事を辞めてきたのも正解だった。刑事のウェンディはそんなことしないから」
  完

コメント

  • メアリーさん、綺麗でお上品な女性なのかと思いきや、とんでもない犯罪者だったので驚きましたが、犯人だとほぼ確定している人に面と向かって詰めて行くウェンディーさんも、とても強くて驚きました。
    従兄弟を殺されてしまったのがとても辛かったんだろうなあ…

  • まさに「人を呪わば穴二つ」でした。たとえウェンディに正当な理由があっても相手を恨んだり呪ったりすると自分も破滅してしまうんだなあ。彼女にしてみれば、元刑事の立場で人殺しをすることこそが、皮肉なことに刑事としての最後の矜恃だったのかもしれません。切ないですね

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