カラフル・スクランブル

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#8 深く染まる群青(脚本)

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〇学校の昇降口
水瀬真一「・・・はぁ」

〇教室
村上「だから・・・」
村上「水瀬くんは帰っていいよ」

〇学校の昇降口
水瀬真一(もう、どうしようもないよ・・・)

〇教室
村上「・・・ふぅ」
村上「・・・早く、進めないと」
  ──ガラッ
村上「!」
村上「水瀬く──」
教師「なんだ、村上1人か。 水瀬はどうした?」
村上「・・・用事があって帰りました」
教師「ったく、しょうがない奴だな・・・」
教師「村上も、今日はもう遅いから帰りなさい」
村上「・・・・・・」
村上「・・・う」
村上「っうぅ・・・」
  ──ガラッ
村上「す、すみません」
村上「すぐに帰る準備を──」
水瀬真一「・・・村上さん」
村上「水瀬、くん」
村上「・・・帰ったんじゃないの」
水瀬真一「忘れ物、 しちゃって・・・」
村上「なにを?」
水瀬真一「その・・・ 色々と・・・」
村上「・・・なんでもいいけど、 早く持って行ったら」

〇ラジオの収録ブース
iroha「──君は自分の気持ちをちゃんと伝えた?」

〇教室
水瀬真一「実は、村上さんに伝えたいことがあって」
村上「・・・なに?」
水瀬真一「本当は、僕も」
水瀬真一「irohaが──」
水瀬真一「・・・irohaのこと」
水瀬真一「おかしいなんて思ってない」
村上「じゃあ、どうして──」
水瀬真一「ああ言わないと、 浮いちゃう気がしたんだ・・・」
水瀬真一「そんな理由で人の悪口言うなんて、 自分でも最低だと思ってる」
水瀬真一「本当にごめん」
水瀬真一「村上さんが怒るのも無理ない──」
村上「違うの!」
村上「謝らなきゃいけないのは、 私も同じで・・・!」
水瀬真一「なんで村上さんが・・・」
村上「怒ったのは、 半分八つ当たりだから」
水瀬真一「どういうこと・・・?」
村上「私、本当は・・・」
村上「水色じゃなくて・・・」
村上「ずっと ピンクが好きだったの」
水瀬真一「え?」
村上「好きな色を聞かれる度に、嘘ついてたの」
村上「だって──」
村上「そんな可愛い色、 似合わないって思われるでしょ」
水瀬真一「・・・・・・!」
村上「本当はスカートだって短くしたいし」
村上「あの時の・・・ ピンクのリップだって使ってみたかった」
村上「でもっ・・・」
村上「みんなに変だって言われたくなくて・・・」
水瀬真一「別に、好きなようにすればいいじゃん」
水瀬真一「村上さんは──」
  ──『僕』とは違うんだから。
  ・・・その言葉を飲み込んだ。
水瀬真一「・・・変だなんて、そんな・・・」
村上「いつもなら我慢できたけど・・・」
村上「irohaのことまで言われて」
村上「・・・ぐすっ」
村上「私の好きなもの、全部 否定されたみたいで嫌だったの・・・!」
村上「怒ってごめんなさい・・・」
水瀬真一「いや、僕が 怒らせるようなこと言ったから・・・」
  僕はそっとハンカチを差し出した。
村上「・・・ありがとう」
村上「私、」
村上「家族以外の人に こんな話するの初めてなんだ」
村上「自分の本当の気持ち・・・」
村上「ちゃんと水瀬くんに話せてよかった」
水瀬真一「・・・・・・」
  本当の気持ち──
  僕は何も話せていない。
  「本当はirohaが好き」
  そんなことすら言えなかった。
  だってもし、好きな理由を聞かれても
  僕は答えられないから。

〇黒
  「あたしも、あんな女性になりたい」
  そんなこと・・・
  村上さんには、絶対に言えない。

〇渋谷の雑踏

〇渋谷のスクランブル交差点
  “本当の自分が無くなっていって 空っぽになっていく気がしたの”♪
水瀬(『カラフル』、やっぱり1番好きだな)
水瀬(・・・周りの誰にも話せなくたって)
水瀬(あたしにはirohaがいる・・・)
水瀬(明日のライブも楽しみ──)
水瀬「・・・え?」
水瀬「うそ、でしょ・・・」
水瀬「そんな──」

〇渋谷のスクランブル交差点
  ──歌手のirohaが活動休止を発表。
  渋谷でのライブを最後に、無期限の活動休止に入ることを表明した。
  また、渋谷各地でライブの一部を配信することが決定しており──

〇渋谷のスクランブル交差点
水瀬(嘘だ)
水瀬(嘘だ・・・!)
水瀬(きっと何かの間違いで──)
水瀬(電話、村上さんから・・・)

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コメント

  • 自分らしく在りたいと思う反面、他人と同じじゃないと不安になってしまう。
    わが道を行く人は、ある意味他人に興味がない人。
    他人を攻撃したがるのは、不安が大きい人。
    カラフルでも境界線はグラデーションなのに。

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