BX(脚本)
〇車内
篠崎「・・・」
中の人「・・・」
篠崎「・・・」
中の人「あの・・・」
中の人「ラジオつけていいですかね」
篠崎「お好きに」
続いてはボーイズB&シャツで『ブラッククリスマス』
BX!ブラッククリスマス!BX!ブラッククリスマス!
想い突き上げる衝動!今宵月を蹴る東京!
SEY・YO!聖夜!ファックユー!ジャックユー!
パパにパンチ!ママにキック!オマエに腕ヒシギ逆十字!
逆十字!逆十字!ファック十字!ファック十字!
篠崎「切ってくれ」
中の人「はい・・・」
〇マンションの共用廊下
『ピンポーン』
ニャンギマリ「メリークリスマース!ニコニコケーキでーす!」
リア充Ⅳ「メリくっりゃああ!」
リア充Ⅴ「こんばんわああ!」
リア充Ⅰ「はーい!猫ちゃんも飲んで―!」
ニャンギマリ「い、いや、私はただケーキをお届けに」
リア充Ⅱ「はい!ケーキどーん!」
ニャンギマリ「ああっ、ケーキがグシャグシャに」
リア充Ⅲ「つか脱げよ猫!」
リア充Ⅳ「ぬーげ!ぬーげ!」
篠崎「ちょ、やめてくださああい!」
〇空
くそ・・・なんで俺がこんな目に
〇職人の作業場
5時間前
篠崎「たった2人ですか。話になりませんね」
篠崎「私は人員を半分に減らすよう言ったはずですが」
室田「この2人にだって家族がいるんです。それでも工場の為に進んで」
篠崎「あと5人。でなければ工場ごと潰さざるを得ない。それが本社の意向です」
室田「みんな家族同然にやって来たんです。これ以上はもう」
篠崎「ではその大家族ごと仲良く転職なさってはいかがですか?」
室田「あんまりだ・・・」
篠崎「せっかくのイブです。もうひと晩考える時間を差し上げましょう」
篠崎「メリークリスマス」
〇マンションのエントランス
篠崎「では室田ネジ工場は閉鎖の方向で。はい。では失礼します」
篠崎「うん?」
篠崎「何だアレは?」
ターキーくん「た、助けて下さい・・・」
篠崎「怪人?」
ターキーくん「ニコニコケーキの宅配です・・・メリークリスマス・・・」
篠崎「普通サンタだろ。何で食われる側なんだ?」
ターキーくん「社長のアイデアだそうです」
篠崎「大丈夫か?救急車とか呼ぼうか?」
ターキーくん「いえ、配達を手伝ってくれるだけでいいんです」
ターキーくん「・・・ヒック」
篠崎「ヒック?」
ターキーくん「・・・」
篠崎「じゃあな」
ターキーくん「助けて下さい!昼間飲み過ぎて具合悪くなったって店に知られたら」
篠崎「知るか人生の落伍者が!」
ご近所さん「ヒソヒソ・・・」
ご近所さん「&ヒソヒソ・・・」
篠崎「クソっ・・・」
〇車内
篠崎「あと三件か。それくらいなら別に」
篠崎「ちゃちゃっと配るだけだろ。ふん、下らん仕事だな」
中の人「コスプレはお願いしますね。一応、仮装込みの配達サービスなんで」
篠崎「普通のサンタはないのか?鳥の衣装は酒とアンタの体臭で着れたもんじゃない」
中の人「トナカイがあります」
篠崎「ほう?どんな衣装だ?」
篠崎「他にないのか?」
篠崎「子供、泣くぞ」
篠崎「それでいい」
ニャンギマリ「これノーマルなマスコットですけど?いいんですか?」
篠崎「アブノーマルなマスコットよりいいだろ」
ニャンギマリ「でも猫とクリスマスって何の関係もないですよね」
ニャンギマリ「可愛けりゃいいってもんでもないでしょ」
ニャンギマリ「そういうの、安易っていうかテーマを感じないんですよね」
篠崎「早く脱げ!臭いがうつる!」
中の人「すいません・・・ヒック」
〇一戸建ての庭先
『ピンポーン』
ニャンギマリ「ニコニコケーキでーす!メリークリスマース!」
主婦「・・・」
ニャンギマリ「ニコ二・・・」
主婦「知ってるわよ」
主婦「もう息子寝ちゃったんだけど」
主婦「夕方来てって言ったわよね!」
ニャンギマリ「す、すみません」
〇車内
篠崎「こういうの一番最初に配れよ!」
篠崎「てか少しはルートとか考えろよ!」
篠崎「お前の人生のルートも含めてな!」
篠崎「あとそれ怖いから脱げ!」
中の人「ルートかあ」
中の人「そういうの、苦手」
篠崎「だろうな!」
篠崎「大体、たかが配達くらい余裕でこなせないでどうする?」
篠崎「出来る男ならどんな仕事であろうと、すぐに芯を食ってコツを掴み最短でモノにするものだ」
篠崎「それが出来ない奴はリストラされて当然の無能者だ」
篠崎「ユーザーにとって今夜は特別な夜だろう?ならコスプレ配達に必要なのはスペシャル感だ。だからこちらもハッピーな気持ちで・・・」
〇マンションの共用廊下
リア充Ⅳ「やだー!乳首黒ーい!」
リア充Ⅲ「相当遊んでんなオッサ~ン!」
篠崎「す、すみません。もう帰して下さい・・・」
〇車内
篠崎「やれやれ。あと一件か・・・」
中の人「お疲れですか?」
篠崎「この程度で疲れるか」
篠崎「俺は無能者をあぶりだす側の人間だ」
篠崎「憎まれて嫌われて、それで仕事をしたってことになる男だ」
篠崎「お前達とは潜ってきた修羅場が違うんだよ」
篠崎「ま、世の中にはそういう天職もあるのさ」
中の人「じゃあ今はハッピーですね」
篠崎「え?」
篠崎「お前、喧嘩売ってんのか?」
中の人「だってスペシャルな夜って言ったから~」
中の人「ああそうか・・・だから今夜は酒が旨かったんだねえ・・・ヒック」
篠崎「明日が来なければいいな。ハッピー君」
〇古いアパート
ニャンギマリ「ニコニコケーキでーす。メリークリスマス」
少女「こんばんは」
ニャンギマリ「あ、えっと・・・」
少女「ケーキですね。うけとります」
ニャンギマリ「・・・おうちの人は?」
少女「しごとです」
ニャンギマリ「こんな遅くまで?」
少女「はい」
ニャンギマリ「あ・・・じゃあ」
少女「しょうしょうおまちください」
ニャンギマリ「・・・」
少女「プレゼントです」
少女「おつかれさまでした」
ニャンギマリ「・・・」
ニャンギマリ「あ、戸締りしっかりね」
ニャンギマリ「・・・?」
〇車内
篠崎「はい、その室田ネジ工場の件ですが」
篠崎「何とかリストラ無しで再建プロジェクトを立ち上げてみたいと思いまして」
〇渋滞した高速道路
「はい、勿論最後のチャンスです。甘やかすつもりはありません。はい。分かってます」
「あれ?何ですかあこの手紙?」
「『ネコさんありがとう。メリークリスマス』」
「おい勝手なことするな!」
「あ、いえ、社長に言ったわけじゃなくて!」
「ラジオつけていいですかあ?」
「やめろ!」
「いえですから社長に言ったわけじゃ・・・」
BX!ブラッククリスマス!BXブラッククリスマス!
逆十字!逆十字!ファック十字!ファック十字!
「BX!」
「お前が歌うんかい!」
表紙の人が昔のエロゲーっぽいってエルフかな?と思いました。
クリスマスを手伝って、温かみが戻ってくる彼がかっこよかったです。
人の心に触れるとそうなりますよね。
中の人クリスマスだからって仕事中にアルコール飲んで殆ど潰れちゃうなんて。でもお陰で何か心境の変化があったんですね。一人で過ごしていた小さな子供が変えてくれたのでしょうか。
篠崎さん、シャープでかっこいいですね。根はいい人…というタイプではないかもしれませんが、聖夜に善行ができてよかったです。中の人が、室田さんにとってもすごいファインプレーなのに、本人は呑んで仕事代わってもらってカーステにシャウトしただけなの面白いです笑