読切(脚本)
〇イルミネーションのある通り
──この季節はいつもあの日を思い出す
〇教室
友達「おーい!サンター!」
黒須 三太「おー!何だ?」
友達「もうすぐクリスマスだけどお前のトナカイ見つかったか?」
俺の名前は黒須 三太(くろす さんた)英語にすると、さんた くろす になる。
そう、サンタクロース。
小学生のガキにとってこれほどいじりがいのある名前はない。
だが・・・
黒須 三太「そんな簡単に見つかるわけねーだろっ(笑)」
俺はいい意味でばかだった・・・
友達「早く見つかるといいな!」
黒須 三太「おう!」
この時の俺は小学5年生。
普通ならもうサンタクロースなんて信じない歳かもしれない。
だが、名前のおかげで俺はサンタクロースもトナカイもいる!
そして、俺のトナカイもいる!
そう信じていたのだ・・・
〇学校の校舎
──キーンコーンカーンコーン
「じゃーなー!」
「先生さよーならー!」
黒須 三太「クリスマスまであと3日かぁ・・・」
黒須 三太「よしっ!今日も家帰ってからトナカイ探し始めよっと♪」
〇一戸建て
──ガチャッ
「ただいまー!!」
ドタドタドタドタッ
「いってきまーす!!」
〇クリスマスツリーのある広場
黒須 三太「クリスマスといえばやっぱこれだよなぁ♪」
家に帰ったらまず近くの公園に行く。
これが当時の俺のルーティーンだった。
「ひゃっ!!」
黒須 三太「え!?」
ツリーを見ていると声と共にドタンっと何か落ちたような音がした。
遠中 泉「いててー」
そこにはこの辺では見たことのない女の子が膝をついて転んでいた。
黒須 三太「大丈夫か?」
遠中 泉「へへっ 雪で滑っちゃった」
黒須 三太「ん???」
遠中 泉「え?」
黒須 三太「んんー?!」
黒須 三太「鼻が・・・赤い・・・」
黒須 三太「お前!もしかして!!」
遠中 泉「???」
黒須 三太「トナカイだろ!?」
黒須 三太「やっと会えた!ずーっと探してたんだぞ!」
遠中 泉「?」
遠中 泉「私・・・トナカイに見える?」
黒須 三太「・・・」
黒須 三太「今は人間だな」
遠中 泉「あははっ 良かった!」
遠中 泉「私の名前は遠中 泉だよ」
黒須 三太「とおなか いずみ」
黒須 三太「とおなかいずみ・・・とおなかい・・・」
黒須 三太「ははっ やっぱりトナカイだっ!」
黒須 三太「俺の名前は黒須 三太!」
黒須 三太「アイム サンタ クロス!」
遠中 泉「・・・サンタクロース!」
黒須 三太「いい名前だろ?」
彼女はとても不思議な子だった。
急に『トナカイ』なんて言われたら普通は怪訝な顔をしてもおかしくない。
だが彼女は会ったばかりの俺の話を笑顔で聞いてくれていた。
〇山中の坂道
──翌日
遠中 泉「あれー?」
黒須 三太「おっ?」
黒須 三太「トナカイ♪何してんだ?こんな所で?」
遠中 泉「三太くん!!」
遠中 泉「実は道に迷っちゃって・・・ えへへっ」
黒須 三太「この辺来たことないの?」
遠中 泉「いやぁ、最近引っ越してきたばっかりで全然道分からなくて」
黒須 三太「なーんだ!早く言ってくれればいいのに!」
黒須 三太「この辺のことなら俺に任せろ! 俺が案内してやるよ!」
遠中 泉「本当?」
遠中 泉「三太くんは頼りになるね!」
この時俺は冬休みに入ったばかりで、彼女は中学生だったけどこんなガキの俺でも頼りにしてくれた。
〇一戸建て
黒須 三太「かーちゃん!今日も出掛けてくるっ!」
あれから俺は彼女を色んな場所へ連れていった。
トナカイに会えた!という喜びもあり、とにかく彼女と一緒の時間を過ごした。
〇クリスマスツリーのある広場
遠中 泉「もうこんな時間になっちゃったね!」
黒須 三太「ほんとだ!」
遠中 泉「三太くんが色々教えてくれたからもう1人でも色んな所に行けそうな気がする!」
黒須 三太「そっか!良かった!」
黒須 三太「トナカイ!今日も遊んでくれてありがとうな!明日はいよいよクリスマスだな!」
黒須 三太「明日は何する?」
遠中 泉「三太くんごめんね? 明日は家族と用事があって・・・」
黒須 三太「そっか・・クリスマスだもんな・・・」
黒須 三太「イブに一緒にいられただけで俺は嬉しかったからいいか! なっ!トナカイ♪」
遠中 泉「・・・」
黒須 三太「どした?顔赤いぞ?」
遠中 泉「三太くんが照れること言うからだよ」
黒須 三太「俺・・・何言った?」
遠中 泉「ははっ 何でもないよ」
他愛もないやりとりをしたその日の夜。
それは起こった。
〇男の子の一人部屋
スースー
〇男の子の一人部屋
〇男の子の一人部屋
それは一瞬の出来事だった。
部屋がピカッと光り俺は目を覚ました。
黒須 三太「なんだ!?」
するとそこには・・・
トナカイが立っていた・・・
トナカイ「・・・・・・」
黒須 三太「・・・トナカイ・・・?」
トナカイは何も言わずただそこに立ってこちらを見ていた。
俺は少し考えたがすぐにハッとした。
黒須 三太「もしかしてお前・・・トナカイ!?俺と一緒に遊んでた・・・」
黒須 三太「ずっと人間のふりしてたのか!?」
俺が問いかけてもトナカイは黙って俺を見つめていた。
そして『またね』と言わんばかりの顔でこっちを見て消えてしまった・・・
黒須 三太「・・・トナカイ・・・」
黒須 三太「いなくなるなら・・・もっと早く言えよ・・・」
黒須 三太「また・・・来年だな・・・」
〇クリスマスツリーのある広場
クリスマス
黒須 三太(──・・)
「三太くーん!」
黒須 三太「ん?」
遠中 泉「やっほー!」
黒須 三太「え!?何で!?トナカイ昨日・・・」
遠中 泉「昨日?そう!家族との用事夜だったから三太くんいるかなって思って!」
黒須 三太「いや、そうじゃなくて昨日の夜っ!」
俺は慌てていたが彼女はきょとんとしていた。
俺はすぐに昨日の夜あったことを話した。
彼女は疑う事なく話を聞いてくれた。
彼女がトナカイじゃなくて残念な様なホッとしたような、そんな複雑な気持ちだったことを覚えている。
〇イルミネーションのある通り
あれから12年・・・
俺は彼女と結婚した。
入籍した日、彼女は黒須 泉になったからもうトナカイじゃなくなったよーっと笑っていた。
〇イルミネーションのある通り
黒須 三太「──雪か・・・」
黒須 三太「ケーキも買ったし俺も早く帰ろう」
〇シックな玄関
黒須 三太「ただいまー・・・」
黒須 三太「ん?」
黒須 三太(奥から笑い声が聞こえる?)
〇クリスマス仕様のリビング
!?!!!?
〇シックな玄関
黒須 三太「サンタ・・・!?」
俺に気づいた彼女は俺を見てにこっと笑った。
〇クリスマス仕様のリビング
遠中 泉「見つかっちゃった!」
サンタ「コンバンワー」
黒須 三太「サンタさんこんばんわ」
──・・・
あの日見たのは夢か現実か分からないけど
彼女はやっぱり俺の自慢のトナカイみたいだ
かわいいサンタさんだな、と思っていたら、トナカイさんと結ばれてしまうとは!
でも、本当にかわいい二人ですね。キュンキュンしました!
二人ともめちゃくちゃかわいいです!ずっと見ていたくなる二人でした。年下の男の子と背の高い女の子の組み合わせって夢があっていいですよね〜。サンタさんを信じ続けたおかげで奥さんと出会えたなんてロマンチックです。私も信じ続けたくなります♡
サンタくんの名前全然奇抜でなく本当にいそうなカワイイ少年だなと思いました!最後の本物のサンタさんが家にいる場面で見つかっちゃった!というのが意味深ですね。やっぱりトナカイだったのかな