聖夜の大殺戮

CotchTheScotch

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〇朝日
  ・・・ついに
  ついに完成した
  これで終わらせられる──

〇地球
  この世界では
  毎日殺戮が行われている
  その全てを阻止するのは無理だが
  聖夜の日くらいは阻止したい
  その願いを実現する為に
  必死に開発したモノがある

〇謎の施設の中枢
  それが
  擬人化のワクチンだ
  このワクチンで殺戮される鳥達を
  人の姿に変える
  人の姿をしていては
  殺せないはず・・・
  これでクリスマスの大殺戮を
  阻止できるはずだ

〇研究所の中
  そして
  実験は成功した
桐谷信行「ついにこの日を迎える事が出来た・・・」
  最初の1人目
桐谷信行「やあ」
桐谷信行「人間になった気分はどうだ?」
擬人化した鳥「・・・」
擬人化した鳥「何で私、人間になったの?」
桐谷信行「君・・・いや、」
桐谷信行「君たちを守る為さ」
擬人化した鳥「・・・」
桐谷信行「鳥の姿のままなら いずれ殺されてしまうが」
桐谷信行「この姿になったら生きていられる」
桐谷信行「クリスマスを生きて過ごすことができるんだ」
桐谷信行「聖夜という名に相応しい 素敵な夜を迎える事ができるぞ」
擬人化した鳥「・・・」
擬人化した鳥「どうしてこんな事するの?」
桐谷信行「・・・」
桐谷信行「そんな事が気になるのか?」
擬人化した鳥「・・・」
擬人化した鳥「・・・うん」
桐谷信行「そうか・・・」
桐谷信行「そうだな──」

〇平屋の一戸建て
  子供の頃
父親「おーい!信行ぃー!」
桐谷信行「なーにー?」
父親「お前ペット欲しいって言ってただろ?!」
桐谷信行「うん!」
父親「ほれ!ヒヨコ貰ってきたぞ!」
桐谷信行「えっ?」
ヒヨコ「ピー」
桐谷信行「かわいい」
父親「犬じゃねえけどよ、これはお前のペットだ!大事に育てな」
桐谷信行「うん!やったー!」
桐谷信行「名前は何にしよっかな~?」
桐谷信行「ん~」
桐谷信行「ピーちゃん!」
ピーちゃん「ピー!」
父親「お!いいじゃねぇか!」
  俺はそのヒヨコ、ピーちゃんを
  ペットとして大事に育てた

〇研究所の中
桐谷信行「大事に育てたヒヨコは」
桐谷信行「立派な鶏に成長したよ」
桐谷信行「でも・・・」

〇古い畳部屋
  クリスマスの朝
桐谷信行「あれ?おとうさんは?」
母親「クリスマスの準備に出掛けたわ」
桐谷信行「えっ?そうなの!?」
母親「今日はご馳走らしいわよ~」
桐谷信行「やったー!楽しみ!」
母親「お母さんも楽しみだわ」
  クリスマスにご馳走が食べれるなんて
  初めての事だった

〇和室
  クリスマスの前日
父親「はぁ」
父親「クリスマスくらいよぉ」
父親「信行に良い思いさせてやりてぇよなぁ」
父親「ん~」
  コケー!!

〇平屋の一戸建て
  コケー
父親「・・・」
  コケー
父親「・・・」
父親「・・・お前」
  コケ
父親「──いいのか?」
  コケ
父親「・・・」

〇和室
  そして、クリスマスの夜
父親「メリ~クリスマァ~ス!」
桐谷信行「メリークリスマス!」
母親「メリークリスマス!」
桐谷信行「わぁ~!すご~い!」
父親「どうだ?うまそうだろ!」
母親「この1品だけで クリスマスの雰囲気出るわよね~」
父親「そうだなぁ」
桐谷信行「でもこれなーに?」
父親「!!?」
父親「ロ・・・ローストチキンってやつだ!」
桐谷信行「ロートスキッチン・・・?」
母親「ふふっ」
父親「まぁ、食ってみろ」
桐谷信行「うん!」
桐谷信行「もぐもぐもぐ」
桐谷信行「んー!!」
桐谷信行「おいしいー!!」
父親「うまいだろー!」
桐谷信行「おとうさんありがとう!」
父親「お・・・おう」
母親「よかったわねぇ~」
  俺は初めてのご馳走に浮かれて
  ピーちゃんがいない事なんて
  すっかり忘れていたよ
  それに気付いたのは次の日だった

〇古い畳部屋
桐谷信行「おとうさん!?」
父親「ん?」
桐谷信行「ピーちゃんどこー?」
父親「あ・・・あぁ」
父親(ごまかすか・・でも・・・あぁ 言うしかねぇか・・・)
父親「ピーちゃんな・・・お前の腹ん中だ」
桐谷信行「??」
桐谷信行「何言ってるの?」
父親「昨日食べたローストチキンな・・・ あれピーちゃんなんだ」
桐谷信行「えっ・・・」
父親「お前を喜ばせたかったんだけどよ、 お金が無くてな──」
父親「・・・だからよ──」
父親「それにピーちゃんも食べ──」
  その時、父親が何を言っていたのか
  全く覚えていない
  聞こえてもいなかった
  そして──
  取り返しのつかない事をしたんだと気付いた
  途端、耐え切れない程の喪失感に襲われた

〇研究所の中
桐谷信行「俺の家は貧乏だったんだ」
桐谷信行「そんな貧乏な家のクリスマスで 初めての豪華な料理──」
桐谷信行「それが自分のペットだったなんてな」
桐谷信行「それ以来、 肉は一切食べられなくなったよ」
擬人化した鳥「・・・」
桐谷信行「これが、 この計画の動機だ」
桐谷信行「いずれこのワクチンで」
桐谷信行「鳥だけでなく牛や豚なんかも 助けようと思ってる」
桐谷信行「問題はこのワクチンをどうやって──」
擬人化した鳥「私達は死を恐れていない」
桐谷信行「ん?」
擬人化した鳥「私達は食べられる為に・・・ 生きてる」
擬人化した鳥「食べられる為に殺される」
桐谷信行「・・・それが怖くないのか・・・?」
擬人化した鳥「殺されても食べられれば」
擬人化した鳥「食べてくれた人の一部になれる」
擬人化した鳥「血や肉となり、 その人と共に生きていける」
擬人化した鳥「だから・・・怖く・・・ないよ」
  その声は微かに震えていた
桐谷信行「・・・」
  怖くないはずがない
  誰だって死ぬのは怖いに決まっている
  そうやって死を
  受け入れようとしているんだ──
擬人化した鳥「ピーちゃんを食べた事は 悪い事じゃない」
擬人化した鳥「あなたは悪くない」
桐谷信行「悪くない・・・か・・・」
桐谷信行「まさか助けようとした鳥に 諭されるとはな・・・」
擬人化した鳥「だからこんな事、意味がない」
擬人化した鳥「誰も望んでいない事・・・」
桐谷信行「そ・・・そうか・・・」
  俺がやってきた事は、誰にも望まれていない事だったんだな──
  何やってたんだ俺は・・・
桐谷信行「・・・」
桐谷信行「──わかった」
桐谷信行「やめるよ」
桐谷信行「この計画は今日で破棄しよう」
擬人化した鳥「うん・・・」
擬人化した鳥「──決めた」
桐谷信行「ん?」
擬人化した鳥「あなたに食べてもらう」
桐谷信行「えっ?」
擬人化した鳥「実験台にされたんだから」
擬人化した鳥「食べられる相手くらい決める権利はあると 思う」
桐谷信行(口が達者な鳥だな・・・)
桐谷信行「・・・わ・・・わかった・・・」
  そして俺は、クリスマスに鶏を食べる事になった

〇クリスマスツリーのある広場
  そしてクリスマス──

〇おしゃれなレストラン
桐谷信行「・・・いただきます」
  俺は十数年ぶりに肉を食べた
  もちろん
  最初はものすごく抵抗があった
  でも・・・うまい──
  肉って、
  こんなにおいしかったんだな
  ・・・
  俺の体の一部となって生きてくれ・・・

〇クリスマスツリーのある広場
  ごちそうさま──

〇おしゃれなリビング
  ちなみに
  彼女とは共に生きていく事にした
  体の一部ではなく
  家族として──
  擬人化した鳥を元に戻す事なんて
  考えてなかったから・・・
  戻す方法がない──
  だから仕方なく・・・
  ね──
  ──fin

コメント

  • 食と生命について考えされられる作品ですね。子供たちにも読んでほしい内容です。ラストも綺麗なまとまり方で、安心しほっこりしました。

  • たしかに人は肉を食べますが、命に感謝して食べてるんですよね。
    彼女はそれをわかっていたように思います。
    ラストはハッピーエンドでよかったです。
    家族になりましたね!

  • タイトルからとんでもない話かと思いきや……面白かったです!
    ピーちゃんは主人公の血となり肉となり、主人公の中で生き続けているんでしようね、きっと。
    ラストの主人公が可愛かったです(笑)

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