〇豪華なベッドルーム
山口（今年もDM来てるな）

〇SNSの画面
「みく、誕生日おめでとう 27歳だな」
「明日は学校前に11時集合で映画を観よう 18時に駅前のレストラン予約してるから いっしょに食べような」

〇豪華なベッドルーム
山口（毎年律儀なやつ）
　　元クラスメートの田中は、
　　クリスマスになると
　　俺のアカウントにDMを送ってくる
　　あいつがこれを
　　亡くなった山口さんのアカウントだと
　　思い込んだまま10年経った
山口「本当に予約してるのかな・・・」

〇駅前広場
山口（わざわざ見にきた訳じゃない 仕事でこの時間になっただけ・・・）
田中「・・・」
山口（駅から出てきたな 本当に映画行ってたのかも）

〇店の入口
田中「18時に予約している田中です」
山口（予約してるのも本当だったんだ・・・！）

〇クリスマスツリーのある広場
山口「田中は、俺のこと覚えてなかったな・・・」
　　レストラン付近で、田中に
　　「偶然だな、俺のこと覚えてる？」
　　と声をかけてみた
　　覚えていない反応だったので、
　　人違いでした、といって退散してきた
　　”二人の”邪魔もしたくなかったし
山口（好きだった人に完全に忘れられてるのは ・・・ちょっとキツいな）
山口「・・・あれ俺のアカウントだよ、って 言えばよかったかな」
沢田「あれ！山口くんじゃん 久しぶり！◯◯高校の沢田です」
山口「・・・久しぶり？」
沢田「覚えてない反応じゃんそれ！ ２年のときクラス一緒でしたぁ！」
沢田「『勝手に記憶から消して 私をころさないでくださいよ？』」
山口「それ担任がよく言ってたやつ・・・」
沢田「モノマネ似てた？　自信あったんだ～ またね！　同窓会おいでよ？」
山口「・・・沢田さんのこと覚えてなかったな」
山口（田中の中の俺は、 俺の中の沢田さんと同じだ）

〇豪華なベッドルーム
山口「雪か・・・寒いはずだ」
山口（takuからメッセージ？　誰だ？）
「こんにちは！ ◯✕大学の水野です。 いま、会いたい人がいまして」
山口（知らない人だな・・・ 昔のバイト先のグループから追加されたか？）
「友だち一覧から 誰かわからないアカウント全部に メッセージを送っています」
山口（俺もそういうの30人はいるな・・・ takuだけで３人いるし誰もわからん）
「もし!!ほんの少しお時間よろしければ、 あなたのお名前と、 僕とどこで知り合ったか 教えてくれませんか!!?」
「お礼はするんで!! よろしくお願いします」
山口「・・・図々しいやつ」

〇ジャズバー
山口（マジか・・・？ ホントにここが水野の店なのか??）
水野「いらっしゃいませ。山口さんですよね オーナーの水野です。 お待ちしておりました」
水野「先日はご協力ありがとうございました。 おかげさまで会えました。 今日は楽しんでいってください」
山口（いや、文面から想像してた水野じゃない！）
山口「美味しい・・・」
水野「ありがとうございます」

〇ジャズバー
「店長のお知り合いだったみたいですね？ 今日のお客さん」
水野「ああ。大学の新歓時期にID交換したんだよ」
「え!? そんなことまで覚えてるんですか！」
水野「どこで知り合った人かは、 絵文字で印つけてたから・・・ ま、向こうは覚えてなかったけどね」
水野「うちを気に入って、また来てほしいな」
水野（山口さん、元気にしてたな 会えてよかった）

〇豪華なベッドルーム
山口「・・・よし」
　　アカウントを削除しました
山口（もうDMを受け取ることはない 忘れていいんだ）
「『勝手に記憶から消して 私をころさないでくださいよ？』」
山口「・・・・・・」
山口「そんなつもりなくても、 知らないうちにころしてるんですよ」