カツ丼よりいい女

東京アンジ

キミがい『い』(脚本)

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〇山の展望台(鍵無し)
昇太「いい天気! いい景色! 最高!」
昇太「リコ、早くおいでよ」
昇太「ヤッホー!」
昇太「めっちゃ気持ちー! リコも叫んでみな」
リコ「・・・」
昇太「はぁ・・・」
昇太「リコはどうすれば楽しいの? どこ連れてっても退屈そうでさぁ」
リコ「・・・キミはせっかちだ」
リコ「とりあえず落ち着いてしりとりでもしよう」
昇太「いやだよ。それこそ退屈だ」
リコ「退屈の先にある景色を知りたいとは思わないかね?」
昇太「何を言っているのか分かりません」
リコ「はいキミの負け。いきなり『ん』で終わるとは」
昇太「いつ始まったんだよ」
リコ「退屈の向こう側に出発しようじゃない『か』」
昇太「覚悟はいいんです『か』」
リコ「片道切符ください」
昇太「いい度胸だ」
リコ「大好き」
昇太「き、急だな」
リコ「何もかもいい」
昇太「いやいや何も出てこないし」
リコ「しっぽとか」
昇太「・・・しっぽ?」
リコ「『か』だよ、『か』」
昇太「スゥー・・・」
昇太「カツ丼が好きだー!」
リコ「抱っこしたらニャーオ」
昇太「俺は! カツ丼が大好きだー!」
リコ「だったら奢ってあげようか?」
昇太「感謝」
リコ「車中泊になるけど」
昇太「どうして?」
リコ「テントがいい?」
昇太「いつ着くの?」
リコ「ノーベンバー」
昇太「バッと数えて後13ヶ月」
リコ「それを言うなら『ザッと数えて』じゃない?」
昇太「じゃあ」
昇太「バババッと数えて後13ヶ月」
リコ「なにそれ」
昇太「いいから『つ』」
リコ「月を何回見るだろうね」
昇太「眠れない夜もあるだろうな」
リコ「・・・仲良くしていようね」
昇太「ネコも連れて行けば?」
リコ「バスの運転手だから必須」
昇太「凄いネコがいるもんだね」
リコ「ネコ型バス」
昇太「ステキ」
リコ「・・・スゥ」
リコ「キミとなら!」
リコ「片道切符を握りしめて、ネコ型バスに乗って・・・」
リコ「キミが大好きなカツ丼を奢るために13ヶ月も旅ができるよ私ー!!」
リコ「・・・ふぅ」
昇太「知りたかった景色はそろそろ見えた?」
リコ「え?」
昇太「退屈の先にある景色がどうとか言ってたのは」
リコ「・・・」
昇太「俺は何も見えないけ『ど』」
リコ「鈍感」
昇太「あ! 『ん』ついた!」
昇太「リコの負けー」
リコ「ど、ん、か、ん!」
昇太「だから『ん』が」
リコ「・・・」
昇太「しりとりに負けたぐらいで不貞腐れんなよ」
昇太「もう俺が負けでいいよ『バババッと数えて』なんて言い方は無いと思います」
昇太「そういうことでいいよ」
リコ「・・・」
昇太「なにが不満なんだよ。俺といるのそんなにつまんない?」
リコ「キミはせっかちで、鈍感だ」
昇太「え?」
リコ「つまり、つまりだな」
リコ「スゥー・・・」
リコ「キミが好きだー!!」
リコ「私は、キミが思っている以上にキミのことが大好きだー!」
リコ「なのにキミはいつも鈍感で!」
リコ「鈍感で・・・」
昇太「ごめん」
昇太「カツ丼よりもずーっとリコが好きだよ」
リコ「カツ丼と彼女をくらべるキミのセンス」
昇太「ん? センスいい? 俺」
リコ「・・・悪くない」

コメント

  • 作品のセンスが高い!
    しりとりの内容が何気にファンタジーテイストに溢れていて、ホッコリしますね。
    カノジョの喋り方も文学ヲタク女子みたいで好感度が高いです。

  • くううう〜!!

  • 「い」い感じ
    「時」間を忘れて読んでしまいました

    しりとりで会話するだけならまだしも、
    そこに不自然さがないとは…!
    素敵でした!👏

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