明けない夜、永遠に巡れベファーナ

高山殘照

クリスマスイヴの出来事(脚本)

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高山殘照

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〇テクスチャ3
  復讐か、慰めか、選びなさい
  あなたは理不尽な行いにより
  誰よりも深く傷ついた
  だからこそ
  贈り物を受け取る権利がある
  さあ、復讐か、慰めか
マリエ「決まってるじゃない 私は、復讐を・・・・・・」
  復讐は、すっきりする
  後悔を断ち切ってくれる
  誰もが、そう言うわ
  本当の怒りに
  身を焼いたこともないのに
  本物の怒りは、地獄の炎
  この世を焼き尽くそうと
  消えることなど、ない
マリエ「よく、分かるわ」
  だったら、理解できるでしょう
  復讐を果たしても
  怒りが静まることはない
  むしろ余計に燃え上がり
  あなたをも焼き尽くす
  あなたはまだ
  慰めを得て、
  幸せな人生を送ることができる
マリエ「いいの 私にはもう、望みなんてないから」
  じゃあ、受け取りなさい
  私からの、贈り物よ
  メリークリスマス
マリエ「ありがとう、サンタさん」
  サンタクロースじゃないわ
ベファーナ「私は魔女ベファーナ あなたの復讐、見届けてあげる」

〇市街地の交差点
ヒロシ「んっだよ、もう クリスマスイヴなのに 1人で飲んでるって、ありえないだろ」
ヒロシ「うぃー」
ヒロシ「あいつも、 女房と別れたら籍入れるって 言ってた癖によぉ」
ヒロシ「あー、畜生!」
ベファーナ「荒れてるわね」
ヒロシ「んー、誰だ? 外なのにマスクしてるなんて かんしん、かんしん!」
ベファーナ「あなた、ヒロシさんでしょ?」
ヒロシ「なんで、それを?」
ベファーナ「知り合いから頼まれてね 渡したいものがあるの」
ベファーナ「はい、メリークリスマス」
ヒロシ「キレイなキャンドルだな? ははは、こいつは、いい いつのまに火つけたんだ?」
ヒロシ「知り合いってキッコ?  くーちゃん? ああ、スミーか!」
ヒロシ「やっぱあいつ、 俺に気があるんだよな!」
ベファーナ「落とさないように気をつけてね 火事にでもなったら、たいへん」
ヒロシ「分かってるって いくら酔ってるからって そんな馬鹿みたいな」
ヒロシ「・・・・・・あれ?」
ベファーナ「どうしたの?」
ヒロシ「このキャンドル 全然、手から離れないんだけど」
ベファーナ「そうかしら もう1度、頑張ってみたら?」
ヒロシ「それに、火の勢いが、強く・・・・・・」
ヒロシ「あぢゃぢゃぢゃぢゃ!」
ヒロシ「手が、手が!」
ベファーナ「手が燃えても 落としちゃダメよ」
ベファーナ「さもないと」

〇炎
ベファーナ「ダメじゃない、落としちゃ おかげで、火の海よ」
ヒロシ「見てくれよ、俺の手が」
ヒロシ「炭になってるんだよ!」
ベファーナ「そりゃ、そうでしょ 燃えれば炭化するのは 自然の道理よ」
ヒロシ「どうしてくれるんだよ これじゃ 女の手も握れねえよお」
ベファーナ「火に囲まれて 一番に心配するのが、それ? 本当、救いようがないわね」
ベファーナ「そんなんだから、 足元も見えなくなるのよ」
ヒロシ「足元?」
ヒロシ「うわぁあああ! 燃えてる! 足が、足!」
ベファーナ「体を支えているのは、筋肉と、骨 それが燃えて炭になれば どうなるのかしらね?」
ヒロシ「へ?」
ベファーナ「当然、倒れることになる 良かったわね、仰向けで 今日は星がキレイよ」

〇宇宙空間
  た、助けてくれ
  苦しい、熱い
  マリエ!
  いいところに来た
  救急車呼んでくれ!
マリエ「去年の今頃、私も言ったよね 同じこと」
  え?
マリエ「エイタが気を失って 救急車呼んでって言っても あなたは呼ばなかった」
マリエ「病院に着いても あなたは、手術同意書にサインせず なぜか、治療さえ拒んだ!」
マリエ「なぜ!?」
  エイタが邪魔だったんだ
  俺は、おまえと別れたくて
マリエ「あなたの目論見通り エイタは死んでしまったわ」
マリエ「私たちの子供として、 生まれたばっかりに!」
  悪かった、反省してる、心から!
  だから、助けてくれよ!
  ひっ!
ベファーナ「プレゼントを開ける時間よ」
  よ、よくできたおもちゃだな
マリエ「私たちは「間に合わなかった」 そのせいで、呪われてしまったの」
マリエ「あなたが車を呼んでくれれば あなたがサインしてくれれば」
マリエ「私があなたを尊重しなければ」
  ま、待て! お願いだ!

〇血しぶき
マリエ「死ね! 死ね! 死ね! 死ね!」
ベファーナ「マリエ」
マリエ「思い知れ! 思い知れ! 思い知れ!」
ベファーナ「やめなさい! その男がどうなってるか、見えないの?」
マリエ「う、ううう・・・・・・」
マリエ「うわあああああ」

〇流れる血
ベファーナ「死体も血も、 キレイに消してあげるわ」
ベファーナ「だからあなたは、日常に戻りなさい」
マリエ「ベファーナさんは これから、どうするんですか?」
ベファーナ「永遠に、さまようだけよ そういう呪いを受けてるの 「間に合わなかった」せいで、ね」
マリエ「私と、同じ・・・・・・」
ベファーナ「だから、見てられないのよ」
マリエ「ベファーナさん 私も一緒に来ちゃ、ダメですか?」
ベファーナ「さまよい続ける そう、言ったはずよ」
マリエ「私も、言ったはずです この世に、望みなんてないって」
ベファーナ「そんなこと言ったの あなただけじゃないわ 見なさい」
ベファーナ「私と来れば 人ではなくなり 呪われた旅を続けることになる」
ベファーナ「それでも」
マリエ「いいんです ベファーナさんと、一緒なら」
ベファーナ「馬鹿な子ね」
ベファーナ「行きましょう」

〇市場
  イタリアでは
  クリスマスにプレゼントを持ってくるのは
  サンタではなく、
  魔女ベファーナとされている

〇草原の道
  伝承によると、
  彼女はイエス生誕のお祝いに誘われるも
  多忙を理由に断ってしまった
  すぐに後悔して後を追うも叶わず
  「間に合わなかった」ことで
  永遠にさまよう呪いを受けたのだという

〇荒地
  ベファーナたちは聖なる夜になると
  子供たちにプレゼントを配って回る
  良い子には、素晴らしい贈り物を
  悪い子には、真っ黒な炭を
  イエスの誕生以来
  さまよえる魔女たちを
  人々は今日も、待ち続けている

コメント

  • マリエさんの渦巻く感情、悲しみ、怒り、寂しさなどがひしひしと伝わってくる物語ですね。ラストでそういった感情がスッと流れていき、不思議な読後感を味わうことができました。

  • ひどい男ですね。
    彼女と別れただけなのかと思ったら、そんなひどいことが…。
    復習を選んだ彼女の気持ちがわかります。
    そして今も彷徨っているのでしょうか。

  • 全ての感情、喜怒哀楽は人生の経験値と思えたなら人生は楽しく過ごせるのかもしれませんね。中々そうはいかないですが。ストーリーがうまく展開されていて楽しかったです。

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