マリアの蟲

安野木

第6話 「真実」(脚本)

マリアの蟲

安野木

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〇無機質な扉

〇手術室
  地下室に並んだ手術台。
  その上に横たえられていたのは――
  腹を裂かれた少女たちだ。
梅見清和「うっ・・・ぐっ・・・おえっ・・・」
K「・・・葉月!」
  手術台に横たわっている葉月に
  Kが駆け寄る。
梅見清和「しっかりしろ。 吐いてる場合じゃないだろ・・・っ」
梅見清和「っ・・・葉月! 大丈夫か?」
梅見葉月「スゥ・・・・スゥ・・・」
梅見清和「ほっ・・・息はしてるな・・・」
K「眠ってるだけ。・・・よかった」
梅見清和「あの警官はどうして葉月を ここへ連れて来たんだ」
K「葉月も、もうすぐ生むから」
梅見清和「生むって・・・。じゃあ、このままだと 葉月もほかの少女たちのように・・・」
梅見清和「・・・っ。 さっさとこんな場所から連れ出さないと」
  ガチャッ!
梅見清和「! あいつは!」
  急にドアが開いたかと思うと、そこには
  葉月を連れ去った警官が立っていた 。
警官「ァ・・・ア・・・!」
警官「ヒャ・・・ヒヒッ・・・ 人間・・・キキッ!」
梅見清和「くそっ! K、葉月を頼む! あいつは俺が食い止めるから――!」
警官「ギャッ!」
梅見清和「!?」
  警官の喉に管のようなものが
  突き刺さっている。
  看護師が人間に向かって
  突き立てていたものだ。
梅見清和「どうして・・・」
K「・・・・・・」
梅見清和「どうして、君の身体から 奴らと同じ管が伸びているんだ・・・!?」
  Kの左手の先が変形し、細い触手の
  ようなものがウネウネと蠢いている。
梅見清和「Kも化物の仲間だったのか!?」
警官「グッ・・・ギ・・・ウ、ギッ・・・」
  ビクッ・・・ビクッ・・・
K「・・・邪魔、しないで」
警官「ギャアッ!」
  どさっ!
  Kが管を振るうと、
  警官が勢いよく床に倒れる。
K「大丈夫。こいつはもう、動けない」
K「・・・私が殺したから」
梅見清和「っ・・・!」
梅見清和「そうか、君はそうやって さっきの看護師も・・・」
K「驚かせちゃってごめんね」
K「見せたくなかった。・・・見せないように 気をつけてもいたんだけど──」
梅見清和「・・・来ないでくれ」
K「・・・そうなるよね」
梅見清和「頼む。葉月には近付くな」
K「・・・うん」
梅見清和「信じたくない」
梅見清和「だって、今まで助けてくれたじゃないか」
梅見清和「葉月を助けるって 言ってたじゃないか・・・!」
K「こうなるから言いたくなかったんだよ」
梅見清和「・・・君は何者なんだ」
K「わからない」
梅見清和「そんなわけ──」
K「本当にわからないの。 私はただ、生まれただけ」
K「でもたぶん『あなたたち』の言い方をするなら『宇宙人』っていうのが近いと思う」
梅見清和「は・・・はは・・・宇宙人・・・?  そんなもの、オカルトかファンタジー だろ・・・」
梅見清和「いや、この数時間でどれだけ おかしなことが起きたと思う?」
梅見清和「今更宇宙人ぐらい、なんだって言うんだ」
梅見清和「これが、現実だってことだろ」
K「数年前にね──」

〇落下する隕石
K「南極に隕石が落ちたの」
K「その隕石を介して地球に降り立ったのが 最初の『蟲』」
梅見清和「『蟲』・・・」
K「本当はなんて呼ぶのか知らないよ」
K「でも、そう呼ばれてた」

〇総合病院
K「極秘裏に研究された蟲は 人を母体として繁殖する」
K「それを突き止めたのは 日本の研究者だったんだ」
K「この病院の関係者でね。・・・いろいろ試すのに、ここは都合がよかったんだと思う」

〇手術室
梅見清和「その蟲が君や、こいつなのか?」
  警官はKが言った通り、もう動かない。
梅見清和「まさか、葉月の腹の中にいるのも・・・」
K「ほとんどの蟲は環境に 適合できなくて死ぬの」
K「一部は中途半端に、ごく少数が完全に 人間の身体と適合する」
K「男の人はね、特にうまく 適合できないみたい」
梅見清和「適合できたのがKで、できなかったのが この警官や看護師なのか・・・」
K「失敗した女の人は、 お腹の内側から裂けて死んじゃう」
K「最近、そういう事件が流行ってたでしょ?」
梅見清和「君の目的はなんなんだ」
梅見清和「ずっと葉月を助けたいと言っていたな」
梅見清和「葉月になんの用があるんだ!」
  ギュッ
  葉月をしっかり抱きかかえ、
  Kから少しでも遠ざけようとする。
K「ごめん、説明が難しいね。 私は適合者じゃないんだよ」
K「適合者が・・・母体が生んだ、 11番目の『蟲』」
K「私は未来で新人類って呼ばれてる」
  カツン
  Kが俺たちに向かって一歩近づく。

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