第5話 「言えない」(脚本)
〇病室のベッド
足音が病室の前で止まり、
咄嗟に身を隠した。
K「・・・あれ? 音がしたと思ったんだけど」
梅見清和「K! よかった、無事だったんだな!」
K「あ、やっぱりいた。 そっちこそ無事だったんだね。 葉月は?」
梅見清和「いないんだ。もしかしたら 連れ去られたんじゃないかと思ってる」
K「連れ去られた? 誰に?」
梅見清和「明らかに様子のおかしい警察官がいたんだ きっとあいつに・・・」
梅見清和「警官は地下がどうのと言ってた。 君と同じ目的なのかもしれない」
梅見清和「大きな荷物を持ってて・・・ それが葉月だったのかも」
梅見清和「そうだ、鍵はあったのか? 地下室の鍵を取りに行ったんだよな?」
K「ちゃんとここにあるよ」
K「葉月が地下に行ったなら逆に好都合。 私たちも行こう」
〇病院の廊下
梅見清和「それにしても病院に地下室なんて・・・ いったいなにをする部屋なんだ」
K「どうせ今から見に行くよ」
梅見清和「・・・君はすぐ、そうやって誤魔化すよな」
梅見清和「だから今、一緒に行動するのが 本当に正しいのかわからないんだ」
梅見清和「・・・葉月は大丈夫なのか。 助けられるのか?」
K「そのために私が来たんだってば。 弱気にならないで」
梅見清和「なってない。・・・なってないよ」
梅見清和「俺が不安になっても解決しないんだから」
梅見清和「・・・なんで葉月が 巻き込まれたんだろうな」
梅見清和「代わってやれたらよかったのに」
K「・・・そうだね」
梅見清和「あの子に怖い思いをさせた奴らを許さない」
K「・・・ごめんね」
梅見清和「なんで君が謝るんだ? 葉月を助けに来てくれたんだろ」
K「そういう雰囲気だったから、かな」
梅見清和「・・・・・・」
K「ほら、あともう少し──」
K「待って」
梅見清和「!」
前を歩いていたKが立ち止まり、
俺を牽制するように手を広げる。
梅見清和「どうした」
K「あそこ・・・いる」
看護師「うう、あああ・・・」
梅見清和「・・・化け物か」
K「うん。このまま階段を下りたら鉢合わせる」
梅見清和「だけど引き返して、反対側の階段へ 行ってる時間はないだろ」
梅見清和「駆け抜けていくのはだめなのか?」
K「もうちょっと頭使って。 追いかけてくるでしょ」
梅見清和「葉月には時間がないんだ! 考えてる 余裕があるならそうしてる・・・!」
K「・・・音で惹きつけるとか、かな」
K「なにか投げられるもの持ってる? 硬くて小さいのがいいかな」
梅見清和「ちょっと待ってくれ」
梅見清和(小銭・・・は小さすぎるか。 家の鍵を渡すわけにはいかないし・・・)
梅見清和「・・・ほかに使えそうなもの といったらこれか」
梅見清和「スマホのアラームを使うのは? これなら音で引きつけられるはずだ」
K「いいかも。 投げるときに音を立てないようにね」
K「それでこっちの居場所が バレちゃ意味ないから」
梅見清和「ああ」
K「『あいつ』はあの陰にいるよ。 息の音が聞こえる」
梅見清和「そんな音、よく聞こえるな」
K「あっち側に投げてね」
うなずいて、化け物を誘導したい位置へ
アラームを設定したスマホを滑らせる。
スッ・・・
梅見清和「よし。 あとはアラームが鳴るのを待って・・・」
ピピピッ! ピピピピピッ!
看護師「・・・ゥア」
ズズッ、ズッ
K「ナイス。今のうちに下へ行こう」
梅見清和「・・・ああ」
〇大きい施設の階段
K「・・・・・・」
梅見清和「・・・・・・」
梅見清和「息が詰まる」
息の音が聞こえるなんて言うから、
無意識に呼吸を止めて歩いていた。
梅見清和「心臓の音までうるさいな」
K「・・・ん、もう大丈夫そう」
梅見清和「・・・ふう」
K「でも気は抜かないでね。 そういうとこあるから」
梅見清和「わかってるよ」
梅見清和「この子は本当になんなんだろうな。 未来から来たとか、葉月を助けに来たとか」
梅見清和「そういえば・・・」
梅見清和「葉月が地下室に連れて行かれたかもしれないって話した時、好都合だって言ってたよな」
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