親孝行な女

るんるー

親孝行な女(脚本)

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〇おしゃれなリビングダイニング
  私は水島咲。市役所に勤める公務員だ。
  自分で言うのもなんだが、
  子供の頃から成績も優秀で、大人の言うこともよく聞く、いわゆる優等生タイプ。
  人より少し厳しい家庭で育ったけど・・・
  そのおかげで、私はちゃんとした大人になれたと思う。
水島咲「お母さん、洗濯物取り込んでおいたよ」
母「ああ・・・そこに置いといて」
水島咲(お母さん、ずっと元気がない・・・ やっぱり妹が原因だよね)
  私には12歳年下の妹がいる。
  3年前、当時女子高生だった妹は、
  「高校を辞めて結婚する」と、男と一緒に駆け落ちをした。
  以来音信不通だったが──
  つい先日、突然我が家に現れたのだった。
  3歳になるのだという子供と一緒に。
水島咲(私は仕事中だったから会ってないけど・・・ 信じられない親不孝者だわ)
水島咲(私がお父さんとお母さんにめいっぱい親孝行して、安心させてあげなきゃ)
水島咲「じゃあ私、仕事に行ってくるから──」
水島みゆき「たっだいまー」
水島咲「は・・・?」
水島みゆき「あ、お姉じゃん。久しぶりー ほら、まーくん、おばさんだよー」
水島咲「あんた、よく平気な顔して──」
母「ああ!みゆき、まーくん! いらっしゃい、待ってたのよお!」
水島咲「お母さん!?」
母「咲、まだいたの? 早く仕事行ったら?」
母「まーくん!ばあばですよ〜」
水島咲「・・・行ってきます」
水島咲(・・・何あれ お母さん、なんで歓迎してたの?)
水島咲「・・・」
水島咲(やっぱり気になる・・・ 部屋を出たふりをして、少し様子を見てみよう)
水島みゆき「かーさん、なんかお姉にキツくね? なんかあったん?」
母「だってあの子、今年で34になるのよ?」
母「彼氏の一人も連れてこないで、ずっと実家にいて・・・恥ずかしいったらないわよ」
水島咲「・・・」
水島咲(は?)
母「みゆきがまーくんを連れて帰ってきてくれて、やっと気付いたのよね」
母「真面目だろうが、勉強できようが意味がないって。女の子の一番の親孝行は、可愛い孫の顔を見せてくれることだもの」
母「ああ、孫がこんなに可愛いなんて! みゆきは本当に親孝行だわ〜」
水島咲「・・・」
水島咲「・・・」
  足元から崩れ落ちそうな気分だった。
  子供の頃から親の言いつけに逆らわず、友達も作らずに勉強して、勉強して、勉強して──
  異性と関わるなんてふしだらだって、
  良い大学へ入って、安定した所へ就職するのが親孝行だって──
  そう言ってたのに。
水島咲(これが親孝行だと信じて、頑張ってきたのに・・・)
水島咲「・・・」
水島咲(・・・ううん、違う)
水島咲(最初から、自分の生き方を他人に委ねるべきじゃなかったんだ)
水島咲(私の人生は私のものなんだから・・・)
  私は、音を立てずに家から抜け出した。
  近い将来、この家から出ることになる──そんな未来が見えた気がした。

コメント

  • リアリティーあるお話だったと思います。良かれと思っていたのに、実は相手の心は反対だったという事は実際によくあります。それでも時間が経過するとまた心は反対に変わったりもするのですが。

  • 親の言うことを聞いて築いてきた人生を、その親に否定される。誰が悪いわけでもないけれど、こんな理不尽なことはないですよね。咲が「自分の人生は自分のものなんだ」ということに気づいて良かった。

  • なんだか自分の親子関係と重なるところがあって、とても共感できました。私達子供は知らないうちに親の敷いたレールに乗っかっている可能性が大きいですね。どれだけ早く気付けるかで人生も変わってくる気もします。

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