自分と戦う女(脚本)
〇ファンシーな部屋
目が覚めると
私がもう一人いた
優子A「・・・あんた偽物でしょ?」
優子B「そっちこそ!」
優子A「名乗ってみなさいよ!!」
優子B「夕神優子(ゆうがみゆうこ)よ! 好きな食べ物はすきやき!!」
優子A「嘘つけ! 私が本物の優子よ! 嫌いな食べ物はパセリ!!」
優子B「何で知ってんのよ気持ち悪い! 昨日食べたものはチーズ牛丼!!」
優子A「そっちこそなんで知ってんのよ・・・」
優子A「一昨日の夕食はレトルトカレー! その前はハンバーガー!!」
優子B「・・・まったく同じ??」
優子B「言える立場じゃないけど、少しは自炊して野菜とか食べなさいよ! 体壊すわよ!!」
優子A「心配ありがとう! でも自炊能力なんてないわ!!」
優子B「私だってないわよ!」
にらみ合ったまましばし呼吸を整える
優子A(こいつ、口喧嘩では例え自分が悪くても絶対に謝らないタイプね・・・)
優子B(こいつ、自分の非を認めない質の悪い輩ね・・・そういう顔してるもの)
優子A「あ、そうだ! 本物の優子の証拠を見せ合うって言うのはどう?」
優子B「いい提案ね! じゃあ、最初は蒙古斑の位置でどう?」
優子A「わかったわ」
優子B「せーの!」
私たちは服の裾をめくって、左わき腹にある蒙古斑を見せ合った
優子A「嘘・・・でしょ?」
優子B「馬鹿な・・・」
優子A(同じ位置にまったく同じ蒙古斑・・・こいつ本物の私だとでもいうの!?)
優子B(ふざけてるわ、まったく同じ位置じゃない。私が本物じゃないの?)
言葉を失った私たちはほぼ同時に──
優子A「ピンクの同型スマホ」
優子B「スマホケースまで同じなんて・・・」
スマホのアラームが鳴った。
バイトの時間が迫っていた
優子A(くっ、このタイミングでバイトなんて・・・いや待てよ?)
優子B(うう、もう一人の私が目の前にいる訳の分からない状況なのにバイト・・・ん? 私がもう一人?)
優子A「しかたないわね・・・あんたに本物を譲ってあげるわ。 だから、バイト行ってきて?」
優子B(こいつ先に・・・)
優子B「いいえ、私が譲ってあげるのよ。 だから、遠慮せずにバイト行ってきて」
・・・・・・
優子A「いやいやいや」
優子B「まあまあまあ」
・・・・・・・・・
私たちはお互いに一歩下がった
優子A「どうやら」
優子B「同じ顔同士、考えることは一緒ね」
優子A「負けた方が本物よ?」
優子B「ええ、負けた方がバイト」
優子A「うおおおおおっ!!」
優子B「はああああああっ!!」
私たちの戦いは始まったばかりだ。
同じ思考、同じ行動パターンの人間との言い争い、絶対に決着が付きそうもないですよね。肉体に訴えても、同一能力なら決着が付きそうもないですし……
どうしても続編を期待してしまいます
私ももう一人の自分が現れたら勝てる気しないです。同じ思考と反応の永遠のループですもんね。一番怖いのは周囲の人から自分が本物だと分かってもらう方法がないこと!こんな恐ろしい状況をよく考えついたもんだと感心しちゃいました。