この恋が叶うまで(脚本)
〇大きな木のある校舎
魔法――
それは誰もが生まれつき持つ
ごく一般的な能力──
主人公「――7時52分 よしっ、今日も時間通りだ!」
主人公(今日もいるかな・・・)
???「ウィズちゃん、おはようっ!」
ウィズ「あっ、シェフィちゃん! おはよう!」
主人公(――あっ、来たっ! シェフィちゃんだ!)
ウィズ「やっぱり良いよね~、シェフィちゃんの空を飛ぶ魔法! 私もその箒に乗せてよ~」
シェフィ「ふふっ、いいよ!」
主人公(やっぱりシェフィちゃんはかわいいなぁ~)
主人公(あの笑顔を見るだけで、今日もやる気が出てくるよ!)
主人公(よぉ~し、今日も一日頑張るぞ!)
ウィズ「・・・・・・」
〇教室
キーンコーンカーンコーン・・・
主人公「ふぅ~終わったぁ・・・ さて、あとは帰るだけ──」
ウィズ「――先輩!!」
主人公「うおっ!・・・ってウィズか どうしたんだ、わざわざこんなところまで来て」
ウィズ「ちょっと2人だけでお話があるので来てください!」
主人公「えっ!?あっ、ちょっ!」
〇教室
ウィズ「先輩、単刀直入に聞きますけど シェフィちゃんのこと好きですよね?」
主人公「なっ!?そっ、それは・・・」
ウィズ「――私、協力してあげてもいいですよ?」
主人公「え?」
ウィズ「だ・か・ら! 私が先輩の恋を実らせてあげるって言ってるんです!」
主人公「えぇっ!?い、いいのかっ!?」
ウィズ「はい!先輩のためですから! できた後輩でしょう?」
主人公「おっ、おぉおおっ! ありがとう、ウィズ!恩に着るよ!」
〇教室
ウィズ「――それじゃあ先輩 まずは告白のための準備をしましょう!」
主人公「何か策があるのか?」
ウィズ「はい、先輩 ――魔法を使うんです!」
主人公「魔法?」
ウィズ「例えば、氷魔法を使って周りに氷の結晶を生成したりとか。結構きれいなんですよ?」
ウィズ「――ほら!」
主人公「うわぁ・・・本当だ・・・ 光に反射してキラキラ輝いてる・・・」
ウィズ「これがあれば簡単にロマンチックな雰囲気が作れてシェフィちゃんもイチコロですよ!」
主人公「僕にもできるかな・・・」
ウィズ「大丈夫ですよ!人が生まれながらに持っている、世界に一つだけの魔法――「固有魔法」ならともかく」
ウィズ「これは誰でも使える一般的な魔法なんですから!」
主人公「そ、そっか! なら安心だな!」
主人公「・・・ところでウィズ、告白はいつすればいいんだ?」
ウィズ「明日です!」
主人公「――――へ?」
――こうして僕とウィズの告白大作戦が始まった──
〇学校の屋上
――そして翌日──
シェフィ「ごめんなさいっ! あなたとは付き合えません!」
主人公「――――えっ」
主人公「そ・・・そんな・・・」
〇教室
ウィズ「まぁまぁ先輩、そんなに落ち込まなくても・・・」
主人公「うぅ・・・終わった・・・ あんなに魔法の練習もしたのに・・・」
ウィズ「もう一度挑戦したらいいじゃないですか! ここで終わりってわけじゃないですよ!」
主人公「そうは言っても、一度振られた相手にもう一度告るなんて・・・ そんな勇気出てこないよ・・・」
ウィズ「大丈夫ですよ! 先輩には固有魔法の「タイムリープ」があるじゃないですか!」
主人公「いや、あれは・・・」
主人公「誰かのためだけに使うって決めているんだ。自分のためには使えないよ・・・」
ウィズ「全く・・・先輩は優しいですね」
ウィズ「いいですか先輩!それを使うことは"妹"さんのためにもなるんですよ!」
主人公「えっ?どういう意味だ・・・?」
僕には10年前に行方不明になった双子の妹がいる
ウィズ「もし先輩がシェフィちゃんと幸せになればどこかで見守ってくれている妹さんも、きっと安心します!」
主人公「う~ん・・・それはそうだけど・・・」
ウィズ「ほらほら、こういうのは思い切りが大事なんですから!」
主人公「うぅ・・・分かったよ・・・ 妹のためだからな」
ウィズ「はい!妹のためです!」
魔力を込めて、心の中で強く念じる
主人公(頼む、告白する一日前に ――戻ってくれ!!)
〇大きな木のある校舎
主人公(――7時52分 よしっ、ちゃんと戻れたみたいだ・・・)
主人公(――あっ、あそこにいるのは・・・!)
主人公「ウィズ!」
ウィズ「あっ、先輩」
主人公「話があるんだ ちょっと来てくれ!」
〇大きな木のある校舎
ウィズ「――なるほど それで先輩は告白を成功させるために過去に戻ってきた訳ですか」
主人公「うん、いきなりで申し訳ないけど 付き合ってくれるか・・・?」
ウィズ「もう、しょうがないですね・・・ また新しい作戦、考えてあげます!」
主人公「ありがとうウィズ! やっぱりウィズは頼りになるな!」
〇学校の屋上
――翌日──
シェフィ「ごめんなさいっ!」
ガーーーーン!!
〇教室
主人公「うぅ・・・ごめんウィズ 僕、またダメだったよ・・・」
ウィズ「先輩・・・」
ウィズ「――先輩、大丈夫です 私がついてますよ・・・」
主人公「ウィズ・・・」
ウィズ「もしまた先輩が傷ついたときは 私が癒してあげますから・・・ 何回でも私に会いに来てくださいね」
主人公「ありがとうウィズ・・・ 僕、もう少しだけ頑張ってみるよ」
――その後、何度も過去に戻りやり直しをしたがその度に告白は失敗に終わった──
〇大きな木のある校舎
ウィズ(――7時52分)
ウィズ(今日もまたいつものように先輩が声をかけてくる)
主人公「ウィズ、話があるんだ ちょっと来てくれないか」
ウィズ「はい、いいですよ先輩!」
ウィズ(嘘をついてごめんなさい、先輩。 いいえ──)
ウィズ(お・に・い・ちゃん♡)
〇明るいリビング
――10年前、私はあることに気付いてしまったの
「お兄ちゃんのことが好き」
でもお兄ちゃんは実の妹と結婚なんてしてくれないよね
だから私は、お兄ちゃんの前から姿を消すことにした──
〇大きな木のある校舎
それから10年、私の身体はお兄ちゃんが見ても誰なのか分からないぐらいまでに成長した
だから私はお兄ちゃんの前に姿を現すことにしたの
――後輩としてね
私の固有魔法は、"お兄ちゃんと一緒にタイムリープする"能力
双子ってすごいね!まさかこんな魔法が使えるなんて!
これを使って私はお兄ちゃんと同じ時間軸にタイムリープし、告白が失敗するように仕組んだの
ふふっ・・・お兄ちゃんは一体いつになったら、私に依存するようになるのかなぁ?
私、お兄ちゃんのメンタルがズタズタになるまでいくらでも付き合うよっ!
・・・だからまた、必ず私に会いに来てね
この恋が叶うまで──
ウイズちゃんが先輩にほどこしているのは『魔法』ではなく『魔』なんだと思います。人を好きになって独占力が増すと、こっちの要素に傾くような。先輩自身が事実に目覚めて、魔法なしで愛の告白に成功してほしいと願っています!
最後怖かったです!笑
なんとなく途中で、妹なのかな?とは思ってたんですが、ヤンデレだとは思ってませんでした!
こんな愛され方でも…いいのかなぁ?
楽しく読めました!
ウィズの、主人公の告白の手助けの裏にはこんな思惑があったとは、単純なタイムリープ青春物かと思いきや、オチの見事さに感服です。