お届け物です。(脚本)
〇コンビニ
烏丸柔「だいぶ夜も暑くなってきたなぁ・・・」
烏丸柔(あぁ、独り言が増えたなぁと思う)
俺は真夜中のコンビニに行って、大好きなクリームパスタを夜食として買うのが習慣になっている。
〇ゆるやかな坂道
深夜に食べる禁断のパスタの味を想像しながら、家に帰っていた。
烏丸柔「あれ、何だ」
烏丸柔(俺の家のアパートの前に段ボールが置かれているが、出る時、あんな大きい段ボールあったっけ?)
烏丸柔(なんだか、気持ち悪いなぁ)
そんなことを思いながら、段ボールにゆっくりと近づいていった・・・
〇二階建てアパート
烏丸柔「おい、マジか!?」
段ボールは完全に閉じられておらず、隙間があった。その隙間からみえたのは・・・
ゴンゾウ「・・・」
黒猫だった。
烏丸柔(なんてひどいことをする奴がいるんだ)
俺は、段ボールの前に屈んで、黒猫を見つめた──
ゴンゾウ「おい、そこの人間さん?僕のこと、わかる?」
烏丸柔「えぇぇぇぇっ!?」
烏丸柔(ね、猫が喋った!?)
ゴンゾウ「その感じだったら、わかるんだね。よかったよ。やっと、分かり合える人間さんに出会えた!!」
俺は理解できなかった。なぜ、猫が喋っているんだ!?そして、なぜだろうか。なんだか表情までも読み取れる気がしてきた──
ゴンゾウ「ごめんだけど、助けて欲しいんだ。ちょっとでいいんだよ。食べ物分けて欲しい」
烏丸柔「お、おい、待て待て。俺に喋ってるのか・・・」
ゴンゾウ「当たり前じゃないか。周りには君しかいないんだから」
烏丸柔(マジか。会話が成立している)
ゴンゾウ「ねぇ、聞いてる?」
烏丸柔「うーん、そうか・・・」
ゴンゾウ「ん?何が、えっ?」
俺は悪い夢を見ているのかもしれない。そうに違いない。一旦、猫を抱えてアパートに連れ帰った──
〇汚い一人部屋
ゴンゾウ「すごいねぇ、ものがたくさんだ!」
烏丸柔「単純に汚いだけだよ」
ゴンゾウ「ものがいっぱいあると、楽しいじゃないか。僕は好きだよ」
烏丸柔「はいはい。そうですか・・・」
俺は買ってきたクリームパスタをベッドの上に置いて、冷蔵庫のほうに向かった。
烏丸柔「こんなもんしかないが、食べるか?」
ゴンゾウ「おおぉぉぉぉぉ!食べる食べる!」
烏丸柔(マジで会話続いてんな。俺、疲れてんのか)
ゴンゾウ「ほんと、ありがとうな。助かったよ。お礼しなきゃだな」
烏丸柔「いや、お礼なんていらないよ。それに猫のお前に何ができんだよ」
ゴンゾウ「我輩を舐めてもらっては困る!黒猫は幸せを運んでくるんだぞ」
烏丸柔「そんなこと、聞いたことねぇよ。せいぜい、宅急便ぐらいだろ!?」
ゴンゾウ「お前、我輩の言葉がわかるのに、思慮深くないなぁ」
烏丸柔「お前こそ、猫のくせに色んな言葉、知ってるんだなぁ」
ゴンゾウ「まぁ、いい。助けてくれたのには違いない」
ゴンゾウ「お前、明日、大事な日なんだろ」
烏丸柔「えっ、なんでわかんだよ。そんなこと」
ゴンゾウ「明日の日付のところに、赤丸がついている。このご時世に、紙のカレンダーに印つけてるのも、珍しいなぁと思って見てたんだ」
烏丸柔「うるせぇ、アナログもいいんだよ」
ゴンゾウ「それには我輩も同意だ。そのアナログの精神、忘れんな。何でもかんでも技術の進歩がすごいとか思うなよ」
烏丸柔「急に何、言ってんだ?」
ゴンゾウ「いいから、明日、あのカレンダー持って、出かけて、会う人に、この紙のカレンダーの良さをぶちかましてくるんだな」
烏丸柔「何、言ってんだ、マジで──」
ゴンゾウ「お前の死んだような目。何も楽しいことないんなら、明日の1日ぐらい、めちゃくちゃにして見たらどうだ!?」
ゴンゾウ「コレが、我輩からの贈り物だ。ぜっっったい、やるんだぞ。どうせ、印つけてるくせに、どうせやる気ないんだろ?」
黒猫は器用に窓の隙間から飛び出ていった──
烏丸柔(うーん・・・)
〇オーディション会場(物無し)
烏丸柔(会う人っつたら、この人しかいねぇんだよなぁ)
面接官「それでは、あなたの強みとか、教えてもらっていいですか?」
烏丸柔(まぁ、どうにでもなれだ!!)
面接官「これは何ですか?」
烏丸柔「見ての通り、カレンダーです」
面接官「それは、わかっていますが・・・」
烏丸柔「私は、IT化の進んでいる時代にこそ、必要なのは素材を大事にしたものだと思うのです。紙に直接書く刺激が脳にも良いんです!!」
烏丸柔(俺は何を言っているのだろう・・・口から出まかせだ・・・)
こうして、俺の13社目の面接が終わったわけなのだが──
面接官「あなた、猫はお好きですか?」
烏丸柔「えっ、あ、はい。好きです」
面接官「そう、そうですよね。そのはずです」
面接官「黒猫も好きですか?」
烏丸柔「色は問いません」
面接官「私は、純粋な心を持った人、こうやればいいだろうというようは手段に逃げない人を採用したいと思っていたんです」
この後、あの黒猫が面接官のところまで行って、説得したことを後から知ることになる──
ゴンゾウ「うまくいった。あいつはこのチャンスを活かせるかにゃ〜・・・」
猫に説得されている面接官を想像すると、かなりかわいかったです。
恩を忘れない不思議な猫っていいですね。
うちにも来てくれないかと思いました。笑
不思議な猫の恩返し物語を楽しませてもらいました。こんな知能の高くて行動力もある猫でしたら、そのまま宿も提供したくなりますね。
黒猫と言ったら宅急便のイメージが強いですね。
あとは魔女が宅配するやつ…。
確かに最近アナログのカレンダーめくってないなぁ。
気づけば飾ってあるのは2020年でした!笑