読切(脚本)
〇血しぶき
好寿郎の趣味は「殺し」である、子供の頃から老若男女問わず何人も殺してきた、
証拠は一つも残さなかったが、好寿郎にそれ程の技量がある分けではなかった。
〇明るいリビング
好寿郎には不思議な力があった、それは、〝ありとあらゆる物を無くす力〟だ、
好寿郎はその力を使って指紋や落ちた髪の毛等の証拠を全て無くしてきた、
おかげで警察に捕まる事はなく、数十年も人を殺し続ける事ができた、
〇黒背景
だがこの趣味もとうとう終わりを向かえようとしていた。
〇学校の校舎
夕方、
〇学校の屋上
高校時代に通ってた学校の屋上に
好寿郎、
四道、
絆、
鬼灯の4人は集まっていた、
シートを広げて座り、絆の作って来た料理を食べながら思い出話にふけっていた
〇学校の屋上
四道「俺と絆は保育園からの付き合いで、その時から料理人になるって言ってたな、家も定食屋だったし」
四道が絆について語る
四道「遊びに行った時によく手料理を食べさせられたっけ、最初はまあ、不味くはない程度だったのに段々上達していって」
四道「小三くらいにはもうプロ並になってて給食よりも美味かったな!」
鬼灯「はえー」
好寿郎「でも料理は出来ても彼女は出来なかった」
絆「お前らもいねーじゃねーか、」
絆「でも高校の時に好きな人はいたんだが」
鬼灯「マジ?」
四道「初耳だぞ」
絆「言ってないからな、」
絆「隣の市の高校の生徒で、毎朝電車で見かけてんだ」
絆「でもいつの間にか見かけなくなってな」
好寿郎「・・・」
絆「殺されたらしい、当時噂になってた殺人犯とやらに」
好寿郎(・・・)
四道「あー覚えてるわ、当時ここら辺やその周辺の地域に殺人犯が出るって、」
四道「犯人もまだ捕まってないんだっけ?」
絆「らしいな、証拠や痕跡を一つも残さないそうだ」
四道「ありえねー」
鬼灯「オカルトの匂いがするぞい」
「うわ、オカルトマニアが反応しおった!」
鬼灯「犯人は幽霊じゃ!幽霊なら壁とかすり抜けるし、指紋とかも無いだろうし証拠も残さず殺せるんじゃー!!」
絆「また始まった、酔うと事あるごとにオカルトの話する癖」
四道「まあいいじゃん今日ぐらい好きに話させても、」
四道「明日になればもう話せないんだし」
「・・・」
四道の言葉で3人は沈黙した、
それから数秒後鬼灯が口を開く
鬼灯「・・・明日になったらわし等4人共幽霊じゃのう」
絆「俺らだけじゃない、この地球上にいる人達・・・いや、全ての生き物が幽霊になる、」
絆「〝アレ〟が落ちてきたら」
絆が遠くの空に目を向ける、他の3人も釣られて見る。
〇空
とてつもなく巨大な隕石がそこにあった、
隕石が明日地球に落ち、全ての生き物が死ぬ、その前日である今日を人々は家族や友人と共に家や思い入れのある場所で過ごしていた
〇学校の屋上
好寿郎達4人も初めて出会ったこの高校で過ごすと決めていた。
(4人の家族は、四道と鬼灯は家族と仲が悪く、絆の両親は亡くなっており、好寿郎は自分で殺している)。
〇学校の屋上
鬼灯「・・・輪廻転生」
絆「あん?」
四道「どうした鬼灯?」
好寿郎「・・・?」
鬼灯「輪廻転生じゃ、人は死んでも生まれ変わるんじゃ、生まれ変わってもまた」
鬼灯「お前らと友達になりたい!」
「・・・」
絆「・・・ふっ、全員死ぬんだから生まれ変わりなんて」
鬼灯「地球外生命体に生まれ変わるんじゃ!」
四道「地球外って宇宙人とかか?」
絆「いいなそれ、宇宙人になったら今度こそ彼女を作って俺の料理を食わしてやるんだ、」
絆「当然お前らにもな」
鬼灯「おお、そうじゃ!」
鬼灯「全員彼女作ってその娘らと一緒に絆の料理を食べながらワイワイするんじゃ!」
四道「おお、それは楽しそうだ・・・」
四道「・・・彼女できるかな」
絆「できるさ、」
絆「・・・多分な!」
四道「多分かよ!」
「ハハハハハハ」
好寿郎(・・・)
〇学校の屋上
夜、好寿郎は自身の能力について考えていた。
好寿郎の力は便利だが使用条件が2つあった、その内どちらかを満たせば能力は発動する。
1つめは〝無くす対象の物とほぼ同価値の物も無くさないといけない〟、
それは他人の物でもいいし同価値になるなら複数あっても構わない、
だがあの隕石を無くすには例え全人類の命を使っても無理であろう。
2つめは〝自分の命を無くす〟、
つまりは自分の命1つでどんなものも無くす事ができるという事である、あの隕石も、それどころかこの世界さえも。
好寿郎「・・・」
チラリと3人を見る、3人共酔いつぶれて寝ていた。
好寿郎(・・・生まれ変わりか、)
〇空
翌日、世界中の人々は驚いていた、
なぜなら隕石が跡形もなく消えていたからだ、
そしてもう一つ消えてる物があった、
〇学校の屋上
絆「好寿郎!おい!」
四道「な、なんで!」
鬼灯「どういう事じゃ・・・?」
好寿郎の命だ。
〇黒背景
好寿郎は彼らの事もいつか殺そうと思っていた、
だが彼らと共に過ごしてる内に殺す気は失せていった、
いつの間にか彼らの事が好きになっていた。
殺すのは好きだ、けれども、
四道とバカやるのも、
鬼灯のオカルト話を聞くのも、
絆の料理を食べるのも同じくらい好きだ、
だが隕石が落ち、人類が滅亡してしまえば
それらはできなくなる。
だから能力を使って・・・自分の命を無くして隕石を無くした、
自分を殺して彼らを助けた。
だが人は生まれ変わる、生まれ変わればまた殺すことができるかもしれないし、
彼らとまた出会うかもしれない。
好寿郎「けどまずは地獄に行かなくちゃね、」
好寿郎「今まで何人も殺してきたし、当然だ・・・」
好寿郎「生まれ変わるまでは地獄の亡者達を殺しまくるか!」
「・・・なんてね」
なんだか彼は人間味があるのか、ないのかどっちなんでしょうね。
でも、友人達との会話で殺す気がなくなった…ってのはわかるような気がします。
来世で出会えるといいですね。
例え極悪な犯罪者でも、大切なものを見つけてしまったら、自分の命を犠牲にしてでも、それらを守りたいと思う。そんな心情の変化がよく表現されていておもしろかったです。
最初はシリアルキラーの日常と思って読み進めたのですが、思わぬヒューマンストーリーに胸が打たれました。こんな仲間うらやましいです。