読切(脚本)
〇学生の一人部屋
································。
明日は通っていた高校の卒業式。
入学してからの3年間、楽しい事や辛い事······言葉では言い表せない経験を沢山した。
··········本当に沢山··········。
〇教室
生徒A「おい、島崎!! 話聞いてんのか?」
生徒A「ぼーっと、突っ立んじゃねーよ!! ちゃんと話聞いとけよ、のろま!!」
〇学生の一人部屋
·········っ!!!
明日は······卒業式。
〇教室
生徒A「本当にお前ってのろいんだな。 行動遅いし、話聞かないし、おどおどしてるし···。よくそんなんで生きてられるよな」
生徒B「ほんとほんと。 話聞かないのろまな奴にはお仕置きしないとな!! 『しつけ』っていうやつ?」
生徒C「え~また『アレ』やるの? 先公に見つかったらヤバくない?」
生徒B「大丈夫だって!! バレないようにやれば問題なしっ!!」
生徒A「そうだな。 今まで先生にバレたことないし、『いつもの場所』でやれば誰にも見られないし······」
生徒A「···················」
生徒A「島崎。 ··········俺が言いたいこと、分かるよな?」
〇学生の一人部屋
························。
·······明日は卒業式。
僕にとって『一番大切な卒業式』。
〇廃ビルのフロア
生徒B「おいっ!! さっさと服脱げよ、遅ぇんだよのろま!!」
·····························。
生徒C「うわ~めっちゃ細い!! ってか、痩せすぎじゃない? まじキモい!!」
生徒A「ほら、四つん這いになって鳴けよ。 犬みたいに『ワンワン』ってさ。 のろいお前にはそれしか出来ないんだからさぁ!!」
························。
生徒C「待って待って!! スマホで動画撮ってるから面白いことしてよ」
·····························。
生徒B「うわ~·······お前マジでつまんねぇな。 のろまなくせにつまんねぇってマジ最悪!!」
生徒C「あんたのせいでつまんない動画になっちゃったじゃん!! ほんと生きる価値なし!!」
生徒A「はぁ···お前本当につまらない人間だわ 生きる価値なし」
〇学生の一人部屋
生きる価値なし·······かぁ。
確かにそうかもしれない。
あいつらの言う通り···僕はのろまだし、つまらないし、かっこよくない···。
これからの人生を生きても、僕は『のろまでつらない人間』であることは変わらない。
一生、僕は、僕のままなんだ。
だけど············。
〇明るいリビング
「続いてのニュースです。 今朝、○○県△△市にある市立□□高等学校にて当校に通う男子生徒が······」
〇学生の一人部屋
······················。
明日は僕にとって一番大切な卒業式。
今までの人生の中で『最良の日』になる。
〇壁
明日『僕』は終わる
『僕』が『僕』を終わらせる
のろまでつまらない『僕』を終わらせるんだ
·····························
·····························
明日は多分言えないから、今のうちに言っておこう。
『僕』という弱い人間を終わらせた明日の自分に······。
〇黒背景
” 卒 業 お め で と う ”
悲しい結末になってしまって、彼のつらさは推し量れないほどのものだったんだと思います。
個人的にはいじめは嫌いですが、事が起きてから「相談してくれれば…」みたいなことを言う大人も嫌いなんですよね。
心情が生々しく描かれており、その設定と展開に目が離せませんでした。”脱却”や”逃避”ではなく、”卒業”という表現が悲劇を想起させますね。
いじめ、いつの時代もなくならないですね、なんで強い人と弱い人が出来てしまうのでしょうか、誰もが傷つくことなく笑って過ごせるようになったらいいですよね。