菖蒲刀

福山 詩(フクヤマ ウタ)

【六人目】己が刀で、己が首(脚本)

菖蒲刀

福山 詩(フクヤマ ウタ)

今すぐ読む

菖蒲刀
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇水中
宿屋の娘(菖蒲の過去が頭の中に入り込んでくる)
宿屋の娘(これは菖蒲がまだ人間だったころの記憶)

〇古民家の居間
草色の帯の男「腕の良い鍛冶屋は 刀の声が聞こえるようになるらしい」
草色の帯の男「俺も そうなれるよう 頑張るよ」
草色の帯の男「ちゃんと寝て食えって? ははは」
草色の帯の男「わかってるよ」
  ここからは 早かった

〇古民家の居間
草色の帯の男「ん もう朝か また徹夜しちまったなあ」
草色の帯の男「そうだな 少し 休むか」
  刀を作れ
草色の帯の男「!」
草色の帯の男「聞いたか今の 刀の声だ」
草色の帯の男「やっぱり もう少し作るよ」
草色の帯の男「ブツブツ ブツブツ」

〇黒
  いつからだろうか
草色の帯の男「ブツブツ ブツブツ」
  呼びかけても 呼びかけても
  上言を言いながら
  
  刀を作る事が多くなった
草色の帯の男「ブツブツ ブツブツ」
草色の帯の男「あ」
草色の帯の男「今いいところなんだ 後にしろ」
  あんなに優しかったあの人は
草色の帯の男「体を大事にしろ 刀に尽きっきりだあ お前まさか」
  死んでしまったのだと
草色の帯の男「この刀に嫉妬しているのか」
  そう思った
草色の帯の男「あ〜くそ お前のせいで集中力が切れただろ」
草色の帯の男「まだ 完成には何かが足りない」
草色の帯の男「何だ 何が足りないんだ」
  なぁ 何が足りないか
  教ぇてやろうか
草色の帯の男「! 教えてくれ」
  そう急くなよ
  
  こうしよう 取り引きだ
  お前のその体
  
  貸せ
草色の帯の男「分かった貸す だから教え」
  取り引き成立ダァ
草色の帯の男「あっ 裾に火が」
草色の帯の男「ぎゃあァ 熱い」
村正「やっと手に入れたぞ 人間の身体を 自由に動ける身体を」
村正「ははは どうしたァ 尻餅ついて鬼でも見たような顔してェ」
村正「この男の体を返せ だと?」
村正「良いなァ アンタ」
  そうして 私は
村正「そうだ その愚かな心 俺の作品に相応しい」
  殺された
  しかし
  肉体は朽ちても
  
  私の恨みは消えなかった
  ただ愛されたかった
  
  好いた男の 子が欲しかった
  なのに なのに
村正「よし 完成だ」
村正「お前は人に嫉妬することで 美しく光り 強くなる」
村正「人を殺めることで 完成する お前は今日から妖刀”菖蒲”」

〇原っぱ
村雨「えへっ エヘぇ」
菖蒲「どうした村雨 腹でも下したか」
村雨「いやいやいや 嬉しいねぇと思ってさぁ」
村雨「菖蒲とこうして一緒にまた会えたことがさ」
菖蒲「そうか 私は微塵も嬉しくはないが」
村雨「んなぁ 菖蒲」
村雨「村正に聞きたいことがあると言っていたな 何を考えているんだ」
菖蒲「・・・」
村雨「あいつを殺したいと思っているなら 辞めておけ」
菖蒲「・・・」
菖蒲「私は今まで何人も男を斬った」
菖蒲「そして気づいたんだ」
菖蒲「私が本当に斬りたいのは 村正だと」
村雨「今更かよ」
村雨「村正が憑依しているのは お前の旦那だぞ」
村雨「最愛の男を殺せるのか」
村雨「そもそも お前も村正も不死身なんだ 殺し合いなんて出来っこない」
菖蒲「不死身か」
菖蒲「村雨 一つ 試したいことがある」
菖蒲「久々に手合わせをしてくれないか」
村雨「え〜 断る」
菖蒲「お前が勝ったらなんでも言うことを聞いてやる」
村雨「んあ〜 ちょっと待て さっきも同じようなことを言って」
村雨「はぐらかしたよなあ」
菖蒲「なら この格好でならどうだ」
村雨「お前さあ 俺を馬鹿にしてるだろぉ」
菖蒲「なんだ やらないのか」
村雨「やるに決まってんだろ! 後悔すんなよ菖蒲!」
菖蒲(さて 確かに我々妖刀は 人の魂を乗っ取り 身体を手に入れる しかし)
菖蒲(私が憑依した人間の娘は 私の中でまだ生きている)
菖蒲(あるはずだ あの人から村正を引き剥がす方法が)
村雨「大体 男の体の俺と 女の体のお前とじゃ」
村雨「勝負にならんだろうにっ」
菖蒲「おや 本当にそうかね」
菖蒲(嗚呼 そんな事は当に分かっているさ)
菖蒲「これでも何百と男の首を斬ってきたんだ」
菖蒲「もっと本気で来ないと 拍子抜けだな」
村雨「・・・」
村雨「いひぃ」
菖蒲「ガッ」
村雨「お前に刀を使う必要もない こいつで充分だあ」
村雨「おお!? 感触♡感触♡」
菖蒲「ゴッ」
村雨「菖蒲ェ 俺さあ 俺」
村雨「女を殴る男はさいっってい だと思うんだわぁ」
村雨「そしたらさァ したらサァ」
村雨「俺 興奮してきちゃったあ♡」
菖蒲「ゲフ えほ」
菖蒲「ぺ 刀で戦わないか 腐れ外道」
村雨「今度はそういうことかぁ いいねぇ菖蒲ェ♡」
菖蒲(ここだ)
村雨「うわあ」
村雨(懐に入られ)
村雨「いって!?」
村雨(刀を叩き落とされた)
菖蒲「この刀 頭が軽くて扱いやすいな 正に村雨 お前そのものだ」
菖蒲「お前の命 もう私の手の中だよ」
村雨「減らねぇ口だな 菖蒲 可哀想になってきたあ」
村雨「いっっっっ☆*✗△◇え〜〜〜〜!?」
菖蒲「ハァハァ」
菖蒲「礼を言うよ 村雨」
「ゔぁあ*❏●✕※ああぁaあ嗚呼ーーーーーーーーーーーーーー」
菖蒲「殴られていない 斬られてもいない」
「ぎゃ✕※△●✕※✡ーーーーー!!!」
菖蒲「どうして刃を叩かれると激痛が走るのか 不思議に思っているんだろう」
「ぁあ・・・ああ・・・」
菖蒲「どんな物でも 折れやすい部分というのは必ずある」
菖蒲「刀の中心 つまり”ムネ”を狙ったわけだ」
村雨「アヒぃ ひぃひう」
村雨「胸ェ♡」
「あ呼あ゛ぁ亜あ*✗△●✕※✡ーーーーーーーーーーーーーーー!??!?」
菖蒲(さて あとは)
「あ呼あ゛ぁ亜あ*✗△●✕※✡ーーーーーーーーーーーーーーー!??!?」
菖蒲(村正の元へ 故郷へ帰るのみ)
「あ呼あ゛ぁ亜あ*✗△●✕※✡ーーーーーーーーーーーーーーー!??!?」
菖蒲「そして あの人の元へ帰るのみ」
「あ呼あ゛ぁ亜あ*✗△●✕※✡ーーーーーーーーーーーーーーー!??!?そこ棟じゃねえだろおおーーーー!!」

〇山中の川
村雨「ん〜」
村雨「菖蒲ェ♡ えへっ♡ えへっへへぇ♡ 昨日はえへっ♡ゥえへへ~♡」
村雨「あれ 菖蒲」
村雨「・・・」
村雨「あれえ?」

〇原っぱ

〇森の中

〇村に続くトンネル

〇寂れた村
菖蒲(また 刀を作っている)

〇古民家の居間
  暗いよ 苦しいよ
  
  誰かタスケテ
菖蒲「ここ数十年で」
菖蒲「兄弟が増えたようだな」
村正「菖蒲」
村正「戻ってきたのか」
菖蒲「婚姻の武具として お前に作られたその日から」
菖蒲「人間の男に愛されたい」
菖蒲「ただ そう願っていた」
菖蒲「しかし 大事なことを忘れていたよ」
村正「菖蒲 俺を殺すつもりか」
菖蒲「私が 誰を 一番愛していたのか」
村正「お前が人間の男に愛される日は 来ないよ」

このエピソードを読むには
会員登録/ログインが必要です!
会員登録する(無料)

すでに登録済みの方はログイン

次のエピソード:【死に損ない】六日の菖蒲、十日の菊

コメント

  • 取り憑いたものが無くなると灰になるのですね。
    もう目標も無くなった彼女はどうやって救われるのか。それとも全てを諦めるのか、気になりますね。

  • 殺めるから菖蒲。
    悲しい過去と壮絶なストーリーがついに終焉を迎えますね。
    村雨と菖蒲の破滅的なイチャラブも好き♥
    村正との見事な駆け引きからの、身を削りながら相手を仕留める大胆さと、灰になった村正への想いが溢れる場面に感動しました。
    村娘は菖蒲を救うことが出来るのか?

  • 凄絶な過去回送からの、決着…手に汗握りました。
    そして人間、菖蒲の決意に胸が熱くなりました。

    刀に取り憑いた彼女の魂がどう救われるのか…とても気になります

ページTOPへ