第5話『いつもと違う道』(脚本)
〇おしゃれな食堂
三好優弥「さーて、部活に行く前に 腹ごしらえでもさっさとするか」
宇喜多羽彩「・・・・・・」
三好優弥「今日は何にするかな 王道の5000キロカロリー揚げ物盛り合わせにするか」
宇喜多羽彩「・・・・・・」
三好優弥「20合蕎麦でもいいな」
宇喜多羽彩「・・・・・・無視」
三好優弥「眠そうだったし」
宇喜多羽彩「・・・・・・」
三好優弥「唐揚げ食う?」
宇喜多羽彩「・・・・・・・・・食べる」
三好優弥「じゃあ、今日は軽めにしておくか 唐揚げとかしわ天の盛り合わせ!」
三好水葉「承りました!」
宇喜多羽彩「・・・・・・」
三好優弥「・・・・・・」
「・・・・・・」
宇喜多羽彩「・・・・・・何か話して」
三好優弥「俺の目の前にいる部員の様子がおかしい」
宇喜多羽彩「・・・・・・気づいてんじゃん」
三好水葉「唐揚げとかしわ天の盛り合わせ お待たせしました!」
三好優弥「ありがと」
三好水葉「ついに遭遇してしまったか ダウン羽彩先輩に」
三好双葉「今日、なっちゃったか」
三好水葉「ああなると、一日中テンションが ダウン状態だからね」
三好水葉「私たち後輩に対しても 最低限の愛想しかできないし」
三好双葉「普段の先輩からだと想像もつかないよね」
三好双葉「この日だけは みんな羽彩先輩には挨拶ぐらいしか 近づかないぐらいだからね」
三好水葉「それにしても普通の男子だったら」
三好水葉「羽彩先輩のことを心配して 『どうしたの?』『悩みなら聞くよ』とか」
三好水葉「コンカフェ嬢に絡む 下心丸出しの常連みたいになるはずなのに」
三好水葉「さすがお兄ちゃん まったくもって興味ない」
三好双葉「絶対優弥さん 唐揚げのことしか頭にないよ」
三好水葉「傍から見ると 倦怠期のカップルみたいな雰囲気が出てる」
三好水葉「ただ凄いのは 絡んでくる男子に対して 素っ気ないはずなのに」
三好水葉「今回は羽彩先輩自ら絡んでる」
三好双葉「いつもだったら、端っこに座って テーブルにうなだれてるのに」
三好水葉「その羽彩先輩を心配して声をかけては 無視されて撃沈していく男性陣を見てきた」
三好双葉「だから、あんな様子、初めて見た」
三好水葉「お兄ちゃん、どう対処するんだろ」
三好優弥「ここの唐揚げマジで美味い」
三好優弥「かしわ天には天つゆがよく合う」
宇喜多羽彩「・・・・・・」
三好優弥「よし、食ったことだし 俺は行くかな」
三好優弥「ごちそうさま」
宇喜多羽彩「・・・・・・」
〇グラウンドの水飲み場
三好優弥「空から春雨サラダでも降ってこないかな」
宇喜多羽彩「・・・・・・」
〇中庭
三好優弥「さっさと部活に行かないと そむらがまたキレるな」
宇喜多羽彩「・・・・・・」
〇養護施設の庭
三好優弥「・・・・・・・」
三好優弥「いでよ」
三好優弥「ねこ」
ねこ「わん!」
宇喜多羽彩「・・・・・・」
三好優弥「ほら、ちゅーるだぞ」
三好優弥「今月のお友達料だ」
ねこ「わおーん」
三好優弥「ほら羽彩 ちゅーる」
宇喜多羽彩「・・・・・・えっ?」
宇喜多羽彩「私、猫あまり触ったことない」
ねこ「わおーん!」
宇喜多羽彩「・・・・・・かわいい」
三好優弥「ねこが逃げずに ちゃんと餌を食べてる」
三好優弥「羽彩気に入られたな」
ねこ「じゃあにゃー」
宇喜多羽彩「今、じゃあにゃーって」
三好優弥「変な鳴き方するねこだからな」
宇喜多羽彩「人間に友達いないから 動物にお友達料払ってるんだ」
三好優弥「失礼な 俺にだって友達ぐらいいるわ」
三好優弥「上杉、京極、竜崎っていう友達がな」
宇喜多羽彩「少な」
三好優弥「あとねこ」
三好優弥「餌をあげたら満足 貰ったら満足なたんぱくな関係だけどな」
宇喜多羽彩「・・・・・・ごめんね」
三好優弥「何がだ」
宇喜多羽彩「態度悪くて」
三好優弥「そうか?」
宇喜多羽彩「たまにね」
宇喜多羽彩「気分がすごく落ち込むの」
宇喜多羽彩「全部のやる気がなくなって どうでもよくなっちゃうの」
宇喜多羽彩「学校来ない方がいいって思うでしょ?」
宇喜多羽彩「でも、一人だと もっと嫌なことを考えちゃうの」
三好優弥「ふーん」
宇喜多羽彩「興味なさそう」
三好優弥「めんどいからな」
宇喜多羽彩「でも、ありがとね」
宇喜多羽彩「気遣いでここに連れてきてくれたんでしょ」
三好優弥「なんで、そう思うんだ」
宇喜多羽彩「だって、ここ 部室とは逆方向だからね」
三好優弥「ねこに餌をあげに来ただけだ」
宇喜多羽彩「そういうことにしておいてあげる」
三好優弥「今日はミス研に来るか?」
宇喜多羽彩「今日は帰ろうかな」
三好優弥「そうか」
〇合宿所の稽古場
三好優弥「じゃあ、今日は学園祭の出し物を決めるか」
蒼村優「今日は時間通り来てくれた」
三好優弥「当たり前だろ」
蒼村優「一昨日のことすっかり忘れてるな サイコパス」
三好優弥「そむらは何かやりたいことはあるか?」
蒼村優「メイドカフェやりたいです!」
三好優弥「『メイドカフェ』と」
ホワイトボードに
『メイドカフェ』と書き込まれた
蒼村優「うわぁ、普通に受け入れられて 逆に心配になってきた」
蒼村優「この部活に毒されすぎてる」
三好水葉「幽霊部員だらけのお化け屋敷」
蒼村優「脅かし役誰も来なそう」
蒼村優「そういえば今日羽彩先輩は どうしたんですか?」
三好優弥「体調悪いから帰ったぞ」
蒼村優「え、大丈夫なんですか!?」
三好水葉「明日になればきっと大丈夫だよ」
蒼村優「それなら良かった!」
宇喜多羽彩「呼んだ?」
三好水葉「羽彩先輩!」
蒼村優「大丈夫なんですか!?」
宇喜多羽彩「ちょっとだけ体調良くなったから」
宇喜多羽彩「少しだけ顔を出しに来た」
三好水葉「先輩は何か出し物したいですか?」
宇喜多羽彩「えっと、料理部と合同で 心霊スポット探索動画上映カフェとか?」
宇喜多羽彩「それでみんなでコスプレすれば いいんじゃないかな」
三好水葉「いいですね! ユーチューバーコラボカフェっぽい」
蒼村優「それなら、怖い思いしなくて 済みそうなのでいいですね」
三好優弥「いいな、それ 去年よりレベル上がったな」
上杉遼羽「お、やってるな!」
三好優弥「お、副部長 久しぶりに顔を見せたな」
三好優弥「ということは、例の件がまとまったんだな」
上杉遼羽「ああ!許可下りたぜ」
蒼村優「聞きたくない」
蒼村優「嫌な予感しかしない」
上杉遼羽「隣の県の廃屋で 探索、撮影、放映許可をもらったぜ」
蒼村優「最近、顔を見せないと思ったら 裏でそんなことをしていたんですね」
三好優弥「うちの副部長のコミュ力とサポート力は 俺の100倍だからな」
蒼村優「0を100倍にしても0ですよ」
三好優弥「今年の夏は遠征合宿で決まりだな」
〇学校脇の道
宇喜多羽彩「・・・・・・」
三好優弥「何してんだ?」
宇喜多羽彩「一緒に帰らない?」
三好優弥「まあ、いいけど」
三好優弥「羽彩 いつも誰かと帰ってるじゃん」
宇喜多羽彩「今日の私には誰も近づきたがらない」
宇喜多羽彩「だから、先に帰ったふりして隠れてた」
三好優弥「そうなんか ねこ近づいてきたじゃん」
宇喜多羽彩「優弥とねこは別」
三好優弥「俺はねこと一緒かよ」
宇喜多羽彩「だって、変人だから」
三好優弥「テンション低くても しっかりと口悪いな」
宇喜多羽彩「優弥が悪い」
三好優弥「ていうか、羽彩は家近いのか?」
宇喜多羽彩「歩いていける距離」
三好優弥「あれ? うちも歩いていける距離だけど もしかして中学は同じだったか?」
宇喜多羽彩「高校に入るのと一緒に 近くに引っ越してきた」
三好優弥「そうなんか だったら今度から遊べるな」
宇喜多羽彩「そうだね」
三好優弥「なあ、うちで飯でも食ってくか?」
宇喜多羽彩「え?」
三好優弥「嫌ならいいけど 双葉と水葉は喜ぶと思うけど」
宇喜多羽彩「嫌じゃない?」
三好優弥「なんで?」
宇喜多羽彩「じゃあ、いく」
〇商店街
三好優弥「何か食べたいもんある?」
宇喜多羽彩「何でもいい」
三好優弥「じゃあ、ハンバーグ用の肉を買っていくか」
三好優弥「4人なら4キロぐらい」
宇喜多羽彩「多くない?」
三好優弥「そうか?」
三好優弥「あとはサラダ用の野菜も買うか」
宇喜多羽彩「優弥も料理するの?」
三好優弥「レパートリーは少ないけど たまに二人を手伝うぞ」
宇喜多羽彩「そういうのいいね」
〇シンプルな玄関
三好優弥「遠慮せず入ってくれ」
宇喜多羽彩「お邪魔します」
三好水葉「おかえりー」
三好水葉「・・・・・・・・・」
三好水葉「なんで、羽彩先輩が!?」
三好優弥「帰り道で会ったから飯に誘った」
三好水葉「お兄ちゃん、連絡してよ!」
三好優弥「一応、メッセージ送っといたぞ」
三好水葉「そっか じゃあ、ご飯多めに炊くね」
宇喜多羽彩「よろしくね」
〇明るいリビング
三好双葉「なんで、羽彩先輩がいるの!?」
宇喜多羽彩「双葉、おじゃまします」
三好優弥「ただいま」
三好双葉「ああああああああああああああ」
三好優弥「消えた」
宇喜多羽彩「双葉のあんなに慌てるの初めて見た」
三好双葉「ようこそ、羽彩先輩」
三好優弥「いつも中学の時のジャージなのに 今日はどうした」
三好双葉「優弥さん 次余計なこと言ったら分かるよね?」
三好優弥「りょ」
宇喜多羽彩「賑やかね」
三好双葉「羽彩先輩がうちに来るなんて 本当に嬉しいです!」
三好双葉「ゆっくりしていってくださいね」
三好双葉「今からご飯を作ります!」
宇喜多羽彩「ありがとね」
三好双葉「ごはんのときと、食べた後で たくさんお話しましょうね!」
宇喜多羽彩「たくさん話そうね」
宇喜多羽彩「毎日楽しそう」
三好優弥「まあな」
三好優弥「羽彩の家はどうなんだ」
宇喜多羽彩「・・・・・・・・・普通かな」
三好優弥「そうか」
宇喜多羽彩「優弥って家だと何してるの?」
三好優弥「ホラー映画見たり、ゲームやったり ネットで動画見たり、こっくりさんやったりかな」
宇喜多羽彩「想像通りだね」
三好優弥「そういえば、さっきより 口数増えたな」
宇喜多羽彩「お陰でちょっと気分が良くなった」
宇喜多羽彩「ミス研のお陰かな」
三好優弥「特に何もしてないのに」
宇喜多羽彩「そうでもないよ」
宇喜多羽彩「気分良くなってきたら 料理したくなってきちゃった」
宇喜多羽彩「二人を手伝ってくるね」
〇おしゃれなキッチン
三好水葉「まさか、お兄ちゃんが 羽彩先輩を連れてくるとは思わなかったよ」
三好双葉「恥ずかしいところ見られちゃった」
三好水葉「何も気にしてないよ」
宇喜多羽彩「二人で何話してるの?」
三好双葉「羽彩先輩」
宇喜多羽彩「手伝わせて」
三好水葉「やったああ 今日はいつもより料理が楽しくなりそう!」
三好双葉「料理教えてください」
宇喜多羽彩「いいよ!」
宇喜多羽彩「だけど、本当にお肉4キロ使うの?」
「はい!」
〇通学路
宇喜多羽彩「送ってくれてありがとね」
宇喜多羽彩「意外と気遣いできるんだ」
三好優弥「最低限のマナーぐらいは わきまえてるつもりだけど」
三好優弥「女の独り歩きは危ないからな 水葉と二葉が遅い時だって 迎えに行くぞ」
宇喜多羽彩「良いお兄ちゃんだ」
三好優弥「だろ?」
宇喜多羽彩「久しぶりに楽しい夕食だった」
宇喜多羽彩「あんなに賑やかなんだね おかずの取り合いには笑ったし」
宇喜多羽彩「おかずの量とご飯の量が 相撲部屋レベルなのも笑えた」
三好優弥「楽しんでもらえたらよかった」
宇喜多羽彩「お陰でいつもの羽彩さんに戻ったよ!」
三好優弥「明日からは大丈夫そうだな」
宇喜多羽彩「うん」
宇喜多羽彩「そういえば、ガーデンでさ」
三好優弥「ねこのときか」
宇喜多羽彩「そうそう」
宇喜多羽彩「そのとき、友達に 私は入ってなかったけど」
三好優弥「そうだっけ」
宇喜多羽彩「そうだよ」
宇喜多羽彩「優弥の家にも遊びに行ったし 私も友達だよね」
三好優弥「ああ、そうだな」
宇喜多羽彩「やったぁ」
宇喜多羽彩「私ね、男の人の下心っていうか そういうのが分かっちゃうんだよね」
宇喜多羽彩「大抵の男子は私と仲良くなって それ以上の関係になりたい」
宇喜多羽彩「そんな空気が分かっちゃうの」
宇喜多羽彩「料理部にいる男子にも そういう人たちがいるの」
宇喜多羽彩「それがあって、負の気持ちが溜まって 気分が悪くなるの」
宇喜多羽彩「自意識過剰だと思う?」
三好優弥「全然」
三好優弥「まあ、気持ちいいもんではないからな」
宇喜多羽彩「でもね、優弥はそんな感じがしない あと、上杉君も」
宇喜多羽彩「普通に接してくれるのが 本当に嬉しかったんだよね」
宇喜多羽彩「君たちからは 本当に無邪気にただ楽しんでる気持ちが すごい伝わってきた」
三好優弥「そうだったんか 俺も上杉もオカルトが好きで 部活を作ったからな」
宇喜多羽彩「だから、ミス研大好き」
〇一軒家
宇喜多羽彩「家に着いちゃった」
三好優弥「近所だったんだな」
宇喜多羽彩「そうだね これで遅くまで遊べるよ」
三好優弥「夜遊びはダメだぞ 不良になるぞ」
宇喜多羽彩「元ヤンに言われたくない」
宇喜多羽彩「いつもと違う道もいいもんだね!」
宇喜多羽彩「じゃあ、ありがとね!」
三好優弥「ああ、また明日な」
三好優弥「・・・・・・・・・・・・」
三好優弥「・・・・・・前にもこんなことなかったか?」