狂おしいほど熱せられ

穂橋吾郎

第七話 愛は壊れて(脚本)

狂おしいほど熱せられ

穂橋吾郎

今すぐ読む

狂おしいほど熱せられ
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇豪華なリビングダイニング
西川 満「いやー、ホントに良かった!」
西川 満「ようやく分かってくれて嬉しいよ!」
坂本 敏明「いつも以上に体温が下がって、頭が冷静になったのかもしれません」
坂本 敏明「手術を受けるのが最善の選択だと思うようになりました」
西川 満「やっぱり、正しいことを言い続ければ理解してもらえるものなんだな」
西川 満「理沙ももちろん、早く手術したいもんな」
福地 理沙「うん、そうだね・・・」
坂本 敏明「なるべく早い方が良いとは思うのですが、諸々の準備もありますので」
坂本 敏明「手術は二週間後でもよろしいでしょうか?」
坂本 敏明「二週間後、ここで体温を戻してから病院に行くという形で」
西川 満「大丈夫、問題無い!」
西川 満「理沙もそれでいいよな」
福地 理沙「う、うん・・・」
西川 満「いやー、二週間後かー。待ち遠しいな」
福地 理沙「・・・ゴホッゴホッ」
西川 満「ん、理沙、大丈夫か?」
福地 理沙「ちょっと喉が痛くて・・・」
坂本 敏明「何か飲み物を持ってきましょうか」
坂本 敏明「手が離れないように気を付けて──」
西川 満「あー、いいよ、二人は座ってな。俺が持ってきてやるから」
坂本 敏明「すみません」
満の声「適当に選んで持っていくからなー」
福地 理沙「うん、お願い」
福地 理沙「・・・・・・」
坂本 敏明「・・・理沙さん、これを」
  坂本はキッチンにいる満の目を盗み、理沙に手紙を渡した。
坂本 敏明「満さんから自由になる方法が書いてあります」
福地 理沙「・・・はい。必ず、実行します」
西川 満「お待たせ、ほら理沙、好きなの選べ」
福地 理沙「うん、ありがとう」
  理沙は満にバレないよう、手紙をポケットにしまった。

〇中規模マンション

〇明るいリビング
西川 満「病気が治ったら、休みを取ってどこか旅行でも行きたいなー」
福地 理沙「ねぇ満、手術のことなんだけど」
西川 満「ん?」
福地 理沙「やっぱり、もう少しよく考えてからするべきなんじゃないかって──」
西川 満「はぁ!?」
福地 理沙「ひっ」
西川 満「いまさら何言ってんだよ! もうやるって決めただろ!」
福地 理沙「でも、もう少しあたしの意見も聞いて欲しくて」
西川 満「お前は何も考えず、俺に従っていればいいんだよ!」
西川 満「余計なこと言ってると、力づくで黙らせるぞ」
福地 理沙「・・・ごめんなさい」

〇オフィスのフロア
福地 理沙「ねぇ、由紀・・・」
江藤 由紀「・・・私に話しかけちゃいけないんじゃなかったの?」
福地 理沙「あの時はごめん、あたしどうかしてた・・・」
福地 理沙「怖くて、思考停止してた」
江藤 由紀「・・・どうしたの?」
福地 理沙「由紀にお願いがあるの」

〇休憩スペース
江藤 由紀「そっか・・・」
江藤 由紀「うん、分かった、協力するよ」
福地 理沙「ホントに!?」
江藤 由紀「当たり前でしょ、友達なんだから」
福地 理沙「由紀・・・ありがとう!」
江藤 由紀「り、理沙、スマホに滅茶苦茶メッセージ来てるよ」
福地 理沙「たぶん満から」
福地 理沙「彼が外回りの時は10分に一回連絡する約束になってるの」
  『定期連絡が無いぞ』
  『また浮気か』
  『帰ったら承知しないぞ』
江藤 由紀「・・・やっぱり、まともじゃない」
福地 理沙「分かってる」
福地 理沙「でもこれも、もう少しの辛抱だから」

〇明るいリビング
西川 満「理沙、なんで連絡しなかった!」
福地 理沙「いや、やめて、放して!」
福地 理沙「ううう・・・」
西川 満「ちゃんとしてくれよ、どうしてルールを守れないんだ」
福地 理沙「し、仕事中だったから・・・」
西川 満「俺より仕事が大事か!?」
西川 満「こんなにお前を愛している俺よりも!」
福地 理沙「うっ・・・!」
西川 満「こんなに愛しているのに!」
福地 理沙「ううう、うっ・・・!」

〇豪華なリビングダイニング
  二週間後
西川 満「よし、体温も戻したし、早速病院に行って、手術の準備をしよう!」
「・・・・・・」
西川 満「ん、どうした?」
坂本 敏明「病院には行きません。手術も受けません」
西川 満「は!? なに言ってんだ!」
西川 満「この間は手術を受けるって納得してただろ!」
坂本 敏明「脅されて仕方なく従っていただけです」
坂本 敏明「命の危険がある手術なんて、絶対に受けません」
西川 満「このやろう・・・」
西川 満「おい、理沙からも何か言ってやれ!」
福地 理沙「分かった、言うよ」
福地 理沙「満・・・」
福地 理沙「あたしと別れてください」
西川 満「・・・え?」
福地 理沙「これ以上、あなたの横暴には耐えられません」
福地 理沙「だから、あたしと別れてください」
西川 満「ふっ、ふざけるなぁぁ!!」
西川 満「そんなこと許すわけないだろ!」
坂本 敏明「許す許さないの話ではありません」
坂本 敏明「理沙さんはもう、あなたを愛していない」
坂本 敏明「ただそれだけです」
西川 満「嘘だ、嘘だ・・・」
西川 満「だって俺は、こんなに理沙を愛しているんだぞ」
西川 満「どうしてそれを分かってくれないんだ!」
坂本 敏明「あなたのそれは、愛ではありません」
坂本 敏明「ただのDVです」
坂本 敏明「この二週間、理沙さんには証拠を集めてもらっていました」
西川 満「しょ、証拠・・・?」
  お前は何も考えず、俺に従っていればいいんだよ!
  余計なこと言ってると、力づくで黙らせるぞ
西川 満「!」
福地 理沙「満とのやり取りを、ずっと録音してたの。他にもたくさんある」
福地 理沙「由紀にお願いして、満の暴力で負ったケガも写真に撮ってもらった」
西川 満「なんで、そんなことを・・・」
坂本 敏明「あなたが理沙さんを恫喝する音声、理沙さんが負わされたケガの写真」
坂本 敏明「これらを知り合いの弁護士に確認したところ」
坂本 敏明「十分DVの証拠として認められるとのことでした」

このエピソードを読むには
会員登録/ログインが必要です!
会員登録する(無料)

すでに登録済みの方はログイン

次のエピソード:第八話 ひと時の平熱を

コメント

  • いや〜、ここまで一気読みさせていただきました(チケット切れの為、ここまで……)。
    DV野郎の言動の事をよく調べられており……見ていてヒリヒリイライラさせられっぱなしでした。ひぃ……。

成分キーワード

ページTOPへ