ペンギン男と天使女

天草吾郎

読切(脚本)

ペンギン男と天使女

天草吾郎

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〇雲の上
「誰かが思った」
「どうして空はこんなにも遠いのだろうか どうして海はこんなにも広いのだろうか」
「──なのにどうして僕の世界はこんなにも狭いのだろうか・・・」

〇密林の中
天使「どうして私は空を飛べないのかしら こんなにも立派な羽があるのに」
猫「こんにちわ」
天使「...私は1人で空を飛べるようになりたいの」
猫「それなら貴方には立派な羽があるじゃない」
天使「この羽では空を飛べないの」
猫「それなら一緒にくる?」
天使「大丈夫よ」
猫「...頑張ってね」
天使「私は一人で歩いていく」
  周りを見渡すと豚や鶏、様々な動物がいる
  周りの動物たちは楽しそうに話している
  ──その言葉は翼のある君には必要のない
  そんな声が聞こえた気がして私は走り出した
  後ろを振り向くことは怖かった
  だから天使は一生懸命走った

〇ピラミッド
  周りを見渡すとそこは砂漠だった
天使「やっぱり帰ろうかしら」
  後ろを向く
  ──
天使「大丈夫よ」
  そう自分に言い聞かせる

〇ピラミッド
天使「のどが渇いたわ」
  天使は長い時間をすでに歩いてきていた
  後ろを振り向くことなどももうしない
天使「雨が降りそうだわ」
  空はどんどんと暗くなってくる
  天使はとてものどが渇いていた
天使「急がないと」

〇ピラミッド
天使「雨が降ってきたわ」
天使「はやく泉を見つけないと」
  天使は走った
  はぁはぁ
  はぁ
  泉につくとそこには男が座っていた
ペンギン「やぁ」
  今にも消えてしまいそうな声だった
天使「...」
  天使は離れた位置に座る
ペンギン「...」
天使「あなたは空を飛べるの?」
ペンギン「...僕のは見かけだけさ」
ペンギン「君は飛べるのかい?」
天使「...飛べないわ」
ペンギン「そっか」
ペンギン「ぼくはペンギンなんだ 生まれた時から羽はあるのに空を飛んだことがないんだ」
ペンギン「それでも僕には羽がある」
ペンギン「だからここまで来れたんだ」
天使「...私もよ」
天使「それでも私は飛べると思ってる」
ペンギン「そっか」
ペンギン「君も一人かい?」
  天使はゆっくりと目を瞑った
  雨雲はより一層強さを増していく
天使「私は...」
天使「ひとりぼっちじゃないわ」
天使「私は...今はひとりぼっちなだけ」
ペンギン「そっか」
天使「私はね、一度空を飛んだことがあるの」
  少し嘘をつく
天使「その景色は私だけのものではなかったの」
天使「それをあなたにも見せてあげる」
天使「手を握って」

〇ピラミッド

〇ピラミッド
  手を繋ぐ
  その手は震えている
  羽根に力をいれる
  初めて人のために空を飛ぼうと思った
  それでもやはり空は飛べない
  救えない
  
  
  そう思った
天使「っッ!!」
  少しずつ目線が上がっていく

〇雲の上
  気がつくとそこはもう空であった
  ペンギンは驚いたように笑う
ペンギン「雲の上には、空には僕たちだけじゃない きっと、みんなの夢があるんだ そう思う」
  天使は微笑む
ペンギン「いつか一人でここに来たいな」
  天使は初めての景色を、そしてペンギンの笑顔を見れたことを誇りに思った

〇ピラミッド
ペンギン「行こうか」
  二人は横に並び砂漠のその先の夢へ歩き出す
  迷いはもうなかった

コメント

  • 詩的な作品で素敵ですね。
    砂漠や空など 指摘があるように深い意味が込められていると思います!
    大変 感銘を受けました🤔

  • 読み終わった後、『人』という感じが頭に浮かびました。そばにいる誰かに手を差し伸べることは、自分の心を強く豊かにするのだと、再認識させてもらいました。

  • 「自分は飛べない」という自身の思い込みに縛られて飛べなかった天使が、ペンギン男との出会いで「誰かのために飛びたい」と強く思うことで飛べるようになったんですね。「殺伐とした心=砂漠」から「誇らしい心=天空」という場面転換も素敵でした。

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