〇美容院
理容師「いらっしゃい」
リリコ「こんにちは」
理容師「こちらの席へどうぞ」
理容師（なぜ常連のジジイしか来ないうちの店に こんな清楚な子が・・・？）
理容師「今日はどのような髪型に？」
リリコ「五分刈りで」
理容師「出家でもするの？」
リリコ「いえ。何となく」
理容師「やりすぎじゃない？」
リリコ「大丈夫です」
理容師「バリカンでいっちゃって良い？」
リリコ「はい」
リリコ「何か雑誌あります？」
理容師「週刊誌ならあるけど」
リリコ「じゃあそれで」
理容師「ごめん。髪切るんで 雑誌は後でいいかな？」
リリコ「分かりました！ 泣き寝入りします！」
理容師「そんなに!?」
理容師「もうその雑誌あげるよ」
リリコ「良いんですか!?」
理容師「うん」
リリコ「エビでタイ釣った！」
理容師「そんなに!?」
リリコ「後ろからガッツリ刈ってください」
理容師「エプロン掛けるね」
理容師「少しハサミでカットするね」
リリコ「はい」
リリコ「うちの父は車が好きで」
理容師「へえ。僕も車好きだよ」
リリコ「古いアメ車に乗ってたんです」
理容師「へえ。お父さんは何の仕事されてるの？」
リリコ「建築の仕事をしてました」
理容師「そうなんだ。大変そうだねえ」
リリコ「もう、この世にはいません」
理容師「なんか失礼しました」
リリコ「いいえ、とんでもないです」
理容師「そろそろバリカン入れちゃって良い？」
リリコ「はい、よろしくお願いします」
理容師「ん？」
リリコ「私、父の事を毎日忘れないように・・・」
理容師（何だこれ!?）
理容師（な、何か描かれてるぞ!?）
リリコ「父の顔を後頭部に彫ったんです」
理容師「はっ！こ、この顔は!?」
リリコ「理容師さん？ これってバリカンの振動ですか？」
リリコ「それとも・・」
リリコ「何か動揺してます？」
理容師「も、もしかして・・・」
理容師「あの時の娘さん!?」
リリコ「はい！その節は私達を助けて頂き ありがとうございました!!」
理容師「たまたま通りがかっただけだよ」
リリコ「家族の車が壁に激突して」
リリコ「父が意識を失っている時は もう絶望しかありませんでした」
理容師「辛かったね・・・」
リリコ「でも派手なスポーツカーが 颯爽と現れた時・・・」
リリコ「スーパーヒーローが助けに来てくれた！って」
理容師「そんなに!?」
リリコ「登場曲かかってたし」
理容師「爆音でヒップホップ掛けてただけだよ」
リリコ「車が光ってたし」
理容師「LEDだらけで走ってただけだよ」
リリコ「カーナンバーが確変だったし」
理容師「「777」ね。ゾロ目ナンバーに こだわってたから」
リリコ「天使の羽根生えてたし」
理容師「エアロパーツね」
リリコ「あの車から現れた理容師さんは 永遠のヒーローです!!」
理容師「ありがとう」
リリコ「ところで髪どうなってます？」
理容師「話の切り替え早いな」
理容師「後ろこんな感じだけど、どう？」
リリコ「完璧です！」
リリコ「理容師さん、スマホ持ってますか？」
理容師「持ってるけど？」
リリコ「後頭部をQRで読み取ってください」
理容師「え？これQRコードになってんの？」
リリコ「そうです！」
理容師「・・・本当かなあ？」
理容師「ん？何か浮き出て来た！」
理容師「俺が乗ってた車のホイールだ！」
リリコ「そうです！ あの魔法陣カスタムのホイールです！」
リリコ「命の恩人へのサプライズです!!」
理容師「あのー、凄く嬉しいんだけど・・・」
リリコ「ありがとうございます！」
理容師「アプローチが怖いよ」